第3章 第11話 東迷宮の合同遠征(1)
フェリオール辺境伯家に出入りするようになり、三ヵ月が過ぎた。士官学校入学まで後三ヵ月で、アーシェスは先月十五歳になって成人したらしい。何もプレゼントを用意していなかったので慌てて買いに行った。顔馴染みの侍女からの漏洩である。
何時もの魔道具屋に行けば大抵どうにかなる。今回も毒耐性と運気向上が付与されたネックレスを見付け、これだと思い購入した。
素材に天銀合金が使われていたらしく、予定よりずっと高い買い物になってしまったが、選び直すのも癪なのでそのまま購入した。
アーシェスは基礎トレーニングの重要性を十分に理解し、基礎固めを怠らない。毎回打ち込み稽古の時間を取って発散させているのも良いのかもしれない。
マツリが訓練後のアーシェスの身体を揉み解しながら霊素を操り刺激していると、三ヵ月目にして『魔力とは違った何か』を感じ取れるようになってきたという。そろそろ霊力と混合錬気について教える時期だろうか。
探索者ギルドの方は例の士官学校の男子生徒に何か処分が下ったのか、ギルドに姿を見せなくなったとユーフェミアから聞いた。懸念事項が一つ減ったようで助かる。
カナリエとレーヴィアは、エイルとマツリがフェリオール辺境伯家に行っている間に女性だけのクラン【緋の戦乙女】と交友が進んだらしい。一緒にダンジョンに行こうと誘われたが、二人だけだと気が引けてしまうので一緒に行ってみないかと誘われた。先方にも許可は取ってあるらしい。重ねてちゃんと男だと伝えたのかと聞いたが、大丈夫だと言うので信じることにして、同行を承諾した。
遠征当日。≪緋の戦乙女≫の参加者は十二名、外部協力者としてこちらが四名、荷物持ち四名の合計二十名体制だった。
「≪緋の戦乙女≫のリーダー、オフィーリアです。≪黒絹≫のお二人のお噂は良く聞きますので、楽しみでした。よろしくお願いします」
「よろしくお願いしますね」
長身で仲間達から頼られていそうな、しっかり者のお姉さんキャラがオフィーリアさんらしい。
神鉄鋼みたいな深みのある青髪で、バットイヤーな獣耳が頭の上についている。ふさふさの尻尾が揺ら揺らしていて、思わず無意識にそれを目で追ってしまう。
オフィーリアさん他、それぞれが自己紹介してくれたのだが、正直覚えきれない。皆ネームプレートでも付けてくれれば良いのにとおもう。
今回、≪黒絹≫の取り分はゼロで協力している。その代わり、≪緋の戦乙女≫で使っているマップを写させてもらう、という契約だった。
行先は東迷宮だという。
「先行は≪緋の戦乙女≫からカイエに頼む。≪黒絹≫のお二人のポジションはどうしますか?」
「ポジションですか。前衛というかそんな感じが多いとおもいます。できれば前に居させてもらえると動きやすくて助かります。あ、ちょっと急ぎで進ませてもらってもいいですか?」
「では、それで。その後ろからは何時もの布陣でいくよ」
◆◆◆◆
斥候職が罠を解除しながら進んでいくのを真後ろで眺めながらその見事さに感心していると、カイエに「気になる?」と訊かれてしまった。素直に頷いておく。
出会った敵は全て首を刎ね飛ばしてきた。
五層目ボス戦。大食鬼単体。
マツリが左から、エイルが右から、それぞれが一太刀で膝から両断する。切断した部位を即座に異空間収納に膝下を収容することで、大食鬼の再生力がを防いだ。膝下の異常に「aaaaa?」と鈍く呻き、両手を地に着いて。倒れるのを防ごうとする。足を両断できて腕を両断できない通りはなく、両腕も切断・収納されてバランスを崩し下がって来た首を、エイルが重大剣で首を刎ねた。
六層目から十層目、出会った敵の首を刎ね飛ばしてきた。
十層目ボス戦。下級悪魔族が単体。
何時ぞやに苦戦させられた悪魔族と違い、ぬるい雑魚だった。
左右から挟むように横薙ぎを入れ、残った背骨周辺の肉と骨が圧壊して沈んだ。
十層目から十五層目、出会った敵の首を刎ね飛ばしてきた。
十五層目ボス戦。両手斧を携えた黒毛のミノタウロス。
左右から挟みこむ形で脇から心臓目掛けて大身槍を突き込むと心臓が破壊され、その場に崩れ落ちた。
十五層目から二十層目、出会った敵の首を刎ね飛ばしてきた。
二十層目ボス戦。いつぞやの四つ腕のゴーレムのような生物。
長槍の大身槍で四つ腕の間合いの外から肩周辺を刺し貫き捩じり込む。
刺した長槍はをそのまま手を放して錘のように使い、距離を詰めて脇下から両肩へ大身槍の短槍を突き込んで捩じり込むと手放す。これで四本の腕がだらりと垂れさがり、力が入らなくなっている様子を見ると、ノーガードになった首筋に左右から遠心力を乗せた大戦斧を叩き込み、首を刎ねた。
二十階層目のボス部屋奥、下り階段の部屋で食事休憩中。マツリが部屋の端に【ボックス・トイレ】を設置して皆に説明をしている。
「どの辺まで巻きで進めます?午後もこの調子でいけば良いですか?」
屋台料理の薄皮で肉と野菜をたっぷり巻いた物を食べながら、オフィーリアに訊ねる。
「逆にどこまで二人で攻略しちゃうのか、違う目線で楽しんでるんですけど」
若干ジトられた気がするが、二人で何もかもをやっている訳ではない。
「カイエさんが罠とか全部対処してくれるし道案内も完璧だから、戦闘に集中できるんです。得難い人材ですね。羨ましいです」
離れたところで休んでいるカイエを見ていると、視線に気付かれて手を振られた。思わず手を振り返しておく。
「それに、ここの迷宮の敵は倒しやすくて良いですね。刺して良し、斬って良しで気楽です」
戻って来たマツリが鉱山迷宮での苦労を語って聞かせ、笑い話にしている。
「折角なので、行けるところまで行ってみたいですけど、≪緋の戦乙女≫の皆さんが暇していないか気にします」
申し訳なさそうにそういうエイルに、オフィーリアが顔を綻ばせる。
「うちは五十五階層までは踏破しているので、そこまでは巻きでガンガン進めちゃって構わないですよ。見ていて飽きませんから」
オフィーリアの言葉に、≪緋の戦乙女≫ の面々が首肯する。
「余りにも簡単に倒しちゃうから、見惚れます」
確かリネットという名前の半耳長族の少女がそう答えて、楽しんでいるから問題ないと言ってくれる。別の獣人の子も首肯しつつ言う。
「そうそう、むしろこれが本物の支配者ポジションか!って感じで良い物を見せて貰っています。好きに暴れてください」
そこまで言ってもらえるならと、皆のご厚意に甘えさせてもらう。
「分かりました、ありがとうございます。最近罠対策に気を張る事が多かったので、ストレス解消にもうしばらくやらせて貰いますね」
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