表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】方舟の子 ~神代の遺産は今世を謳歌する~  作者: 篠見 雨
第3章 ローエンディア王国と士官学校
52/270

第3章 第5話 東迷宮の威力偵察(2)

 南門広場から迷宮区に行き、東迷宮の方へと続く道をいく。

「それで、カナリエ達はどうするか、そろそろ決めた?」

 エイルがざっくばらんに訊いてみる。

「パーティどうするかって話ですよね。まだ色々考えてるところなので、今は迷宮に集中します」

 カナリエがそう答え、リーヴィアがそれに頷いてみせた。


 東迷宮に着くとダンジョンの入口前に探索者ギルドの出張所のような小屋があり、そこで迷宮に入る者を管理している。氏名、性別、階級、入った時間と出た時間の記録が行われる。

入った冒険者がいつまでも帰らない時は、遭難や死亡などの判断材料になる。


 入口で必要事項に記入して四人で迷宮に踏み込んだ。

 迷宮に入る時の恒例である空気感の変化を感じ、緩んでいた気持ちが引き締まる。グランフェニアの街を思わせる、質実剛健な雰囲気のダンジョンだった。そう思わせるのは石壁の石一つ一つが大きく重厚感を感じさせるからだろうか。


「今回は先頭は俺がやるよ。この中では一番罠に慣れているだろうし」

 そう言ってエイルは大身槍の短槍を持ち、歩き出す。罠が怪しそうな所は槍の石突で突つき、罠が発動しないかを確認しながら歩いていく。


「おー、本物の探索者っぽい」

 カナリエが感心した声を挙げた。

「ちょっと?はじめから本物の探索者だけど?」

 エイルがカナリエに苦情の声をあげる。

「御者さんじゃなかったんだ」

「ひどい」


 分岐点で曲がりながら暫く進む。分岐の度に床を確認し、人が通っていそうな方に曲がるやり方だった。この迷宮に慣れた人達が何度も歩いたであろう経路は、それだけ痕跡が残りやすくなる。逆に人が避けた道なら、埃が積もりがちだったりする。


 それらの説明をしながら、実際に床を見比べさせたりしてみるが、なんとなく判る場合よりも違いが判らない事の方が多かった。

「斥候を専門でやる人だと、俺でも判らない痕跡見付けてたりする。やっぱり専門技能なんだよね」

 カナリエとレーヴィアから、久しぶりに先輩に向ける視線が貰えた。地味に嬉しい。

 そうこうしている内に、徘徊していた豚鬼オークが一匹見えてきた。

「戦闘どうする?カナリエとレーヴィアやる?」

「手応えなさそうな階層は別に良いです」

 レーヴィアがどうでも良さそうに答えたので、エイルの方でサクッとやって回収する。

「それじゃ、しばらくはサクサク進めていくからね」

 エイルが出会い頭に屠りマツリが回収するローテーションで、進行が早まっていく。

途中道を選び直したりもしたが、だいたい素直に進んで下り階段の部屋に着く。


二階層目は一階層目のオークより一回り大きい豚鬼オークが相手だった。

三階層目で食人鬼オーガが出て来る。

四階層目で矢が飛んでくる罠を回避し、三階層目より大きい食人鬼オーガを倒す。

五階層目で黒い大型の狼が現れ、ボス部屋前に辿り着いた。


「んー……中は大きいのが一体かな」

 エイルが気配の数を伝える。

「ボスだからレーヴィア達がメインでやってみ」

 エイルが出番を譲ると、カナリエとレーヴィアの顔付きが引き締まった。

「犬っぽい敵ですかね」

 レーヴィアが呟き、

犬鬼コボルトだったら笑うんですけど」

 とカナリエが茶々を入れる。


 ボス部屋の両開きの扉を押し開けると、中には大きな人型が一体いた。

 四層の食人鬼オーガより更に大きく、薄汚れた緑色の体毛に覆われている。三メル半ぐらいの大きな人影がこちらに振り向き、「aaaaaaa」と涎を垂らしながら呻く。


大食鬼トロールだぞ。自己再生能力があるから、引っ掻き傷だとすぐ治っちまう。しっかり致命傷与えろよ」


「「了解!」」

 二人は気合の入った返事をすると、すぐに戦闘態勢に入った。カナリエが先行して長槍を構え、突っ込む。それを大食鬼トロールの知性を感じさせない目がぼんやりと追い、近付いてきた獲物カナリエに手を伸ばす。


 振り回された手を低姿勢で回避し、足元に潜り込んだカナリエの長槍が大食鬼トロールの下顎を突き上げる。


 十分な致命傷に見えるが、この程度では大食鬼トロールは止まらない。長槍を手放したカナリエを大食鬼トロールが追い、手を振り回す。

 レーヴィアがトロールの足元前方に【岩壁】を隆起させて進行を阻む。狙ったのか、【岩壁】が顎下に刺さっていた長槍の石突部分を徒上げる形となり、更に深く刺さった。


 カナリエは戦鎚ウォーハンマーを抜いて石突を更に徒上げようとするが、狙い過ぎて空振りし、危うく掴まれ掛かっていた。レーヴィアが【火弾】を顔に放って牽制してカナリエをフォローする。

 カナリエは戦鎚ウォーハンマーを腰に戻すと直剣を抜き、レーヴィアが作った岩壁を蹴って首筋に迫る。直剣を首筋に深く刺し込むが、それでも致命傷にならず、刺した剣を軸にして大食鬼トロールの首の後ろに張り付き、その首を掻き切ろうと粘る。背後に周ったカナリエを掴まえようと大食鬼トロールが両手を振り回すが、カナリエが器用に回避し続ける。

 首筋に深く刺さった長剣を捩じり突き込み、左右に動かし、傷口を広げて行く。動脈が斬れ出血が止まらなくなり、刃が気道を塞いだのか呼吸に乱れが出始めた。しばらく暴れたものの、最後は前のめりに倒れ、大食鬼トロールは動かなくなった。

 マツリが大食鬼トロールを異空間収納に格納し、彼女らの初討伐が成功したことを知らせた。


「おめでとう、二人だけで大食鬼トロール殺しを達成したな」


 トロールは怪力のうえ頑丈でなかなか死なないため、食人鬼オーガなどより難易度が一段階上の敵で、これを退治できればシルバー級の実力証明にもなる。


 カナリエとレーヴィアが抱き合い、涙目で健闘を讃え合っていた。エイルは思い至っていないが、マツリは彼女達が霊気運用が巧く行かず、自信が行方不明になっていた事を知っている。だからこそ、彼女達が自身の力で一つの壁を乗り越えた事の価値を理解し、心の底から祝うのだった。

「おめでとう、二人とも!今夜は肉を奢らせてもらおう!」

 そう叫ぶと、二人を纏めて抱き締めた。


「とりあえず、下り階段の部屋に移動しようか」

 エイルに場所の移動を指示され動く。下り階段の部屋に隣接した転移陣の部屋があった。

「あ、ここのダンジョンは五階層ごとに入口に帰れる転移陣があるらしい」

 ザハト帝国の鉱山迷宮とは大違いの利便性に、あの時の苦労は何だったのかと遠い目になる女子三人だった。

評価、ブックマーク登録、いいね などの応援をお願いします。

モチベーションや継続力に直結しますので、何卒よろしくお願いいたします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ