第3章 第3話 王都ローエンベルク
ローエンディア王国の首都、王都ローエンベルクは農業区や迷宮区を持つ外縁部を巨大な城壁が囲い、その奥に市街区、商業区、貴族区、王城区がそれぞれ城壁で区切られている。地属性魔法での建築を専門にする建築系魔術士達が、何世代にも渡って築き上げられてきた古い都だった。
最初の外縁部の城壁を通った後、広大な農業区を遠目に見ながら進んでいく。最初に潜った城壁が見えなくなる程進んでから、ようやく市街区の城壁に到着した。門衛の簡単なチェックを受けながら、探索者ギルドの位地を訊いてみると、市街区の南側にあるらしい。北門から入っているので、商業区の城壁を囲むようにある環状通りで南へと回り込んでいく。
南側へ着く前に陽も落ちてしまい、市街区の西側にあったそこそこの宿屋に一泊する事になった。
「この王都大きすぎない?」
思わず愚痴るが、仲間達は皆同意とばかりに首を縦に振っていた。
翌朝、宿で食事を済ませるとすぐに出発した。市街区の南側を目指す。環状通りを南側に抜け、南北に通る大通り沿いに着くと、更に南側の市街区南門の広場まで移動する。最初の門衛に訊いた通り、広場の区画の角に探索者ギルドが見付かった。
探索者ギルドの正面に馬車を裏側に通す道が無かったため、通りがかりの探索者に声を掛けて訊いてみると、建物の横から裏手に入れる門があるとの事で、横道に入り回り込んでみる。一つの区画を丸々使うような広大な敷地で、裏手側には訓練場と解体場、倉庫施設、厩舎などが見付かった。
「街もすごいけど、これギルドも相当大きいね……」
マツリが呆れた声を出す。「市街区の南門を出た先に、迷宮区がある」とは聞いていたが、迷宮区からの搬入量がそれだけ多いのだろう。
厩舎にストレイガル達を預けて箱馬車を回収し、表側へと回る。
大きな正面扉は開放されていて、中の喧騒が聞こえてくる。中々に賑やかな場所のようだった。エントランスに入ると食堂のコーナーがごった返していて、酒を飲んで陽気に笑う声も聞こえてくる。朝からこの様子だと、夜間は酷いことになっていそうだ。
「迷宮都市群のギルドみたいだ……」
迷宮都市群のホームと似た気配に、エイルの頬が自然と緩む。
総合カウンターを見付けて並ぶ。今回も一番短い列に並んだのだが、どの列も同程度に人が多く、カウンター内は全員が容姿の良い女性だった。
「こんにちは。この街に着いたばかりなのですが、ギルド付近のお勧めの宿など教えて貰えますか?」
エイルが耳長族の受付嬢に黄金級プレートを提示して認証を光らせてみせる。受付嬢は少しだけ驚いた表情をみせたが、すぐに平静を装うと職務を優先する。
「ローエンベルクの探索者ギルド南本部へようこそ」
南本部らしい。ということは、他の方角にも支店レベルのギルドがあるのだろうか。首都の大きさからするとありそうな話だった。
受付嬢から近場でお勧めとされる宿を教えてもらうと、次はダンジョンの話などを訊く。
この街の迷宮区から入れるダンジョンは二つもあるらしい。迷宮区画の西側と東側にそれぞれ入口があり、独立した構造物なのだという。
傾向としては、西側は弱めだが数が多く、東側は数が少なめだが一体ごとが強力との事。
人数の多いパーティやクランは西を攻め、少数精鋭のパーティは東を好むのだという。
次に、武具屋や装飾品等魔道具の店など、ギルドのお勧めになるような店舗の大体の位置と名前を聞いてメモをとる。
「詳しい情報ありがとうございました。暫くこの街にお世話になりそうなので、またよろしくお願いしますね」
エイルは柔らかく笑顔で礼を言い、ギルドを後にした。
「さて、まずは宿から押さえよう」
探索者ギルドからみて裏手の方に回って入った一本奥の通りにお勧めの宿屋があった。南門には近いのに大通りからは外れているため、同じような距離の宿屋に比べて割安で良い部屋に泊まれるらしい。今回は四人部屋は埋まっていてツインを二つ借りる事になった。ひとまず一週間分を前払いして部屋を押さえると、一階で昼食を摂ってから部屋に向かった。
部屋は、シャワーとトイレが付いている綺麗な部屋だった。
「清潔そうな良い部屋だね。そこそこのお値段したけど、ここなら十分納得できる」
エイルは室内の構造を見て回るとそう言った。マツリの方も満足できる部屋らしく、ベッドにダイブしてその柔らかさを堪能している。
「部屋を押さえて昼飯も済んだ。午後からは何しようかね?
エイルがマツリに訊いてみると、マツリはカナリエ達と買い物に行くそうだ。
「了解、迷惑かけるなよ?俺はギルドに行って情報収集でもするかな」
◆◆◆◆
宿がギルドの裏手の方にあるため、ギルドの表口より裏口の方が近かった。裏口から入るとすぐのところは訓練場になっていて、その奥に解体所や倉庫が並んでいる。厩舎は訓練所の横だった。
訓練場は走り込みが出来る程の広さがあり、稽古用の木剣を使って新人教育のような物も行われている。
裏口からギルドの本館に入れないかとウロウロしていると、開きっぱなしになっている裏口のドアから建物の中に入れた。廊下を真っ直ぐ行くと通路には事務所や更衣室、資材室など従業員用の設備が並んでおり、廊下を抜けるとエントランスのロビーに合流した。
「(なるほど、買取とかで解体場を使わせてもらう時は、此処から裏に抜ければ良いのか)」
エントランスに着くと依頼ボードのある一画に進んでいく。人目に付きやすいところに常設依頼があり、討伐依頼などが奥に貼られているのはどこも似たようなものだった。
依頼ボードのから少し離れた壁際にもボードが設置してあて、メンバー募集用の掲示が貼られている。
「(アットホームなパーティです とかヤバい気しかしないんだが)」
カナリエとレーヴィアは元々メンバー探しに此処まで来たのだ。本人達がどうするかは任せるしかないが、よさげな募集は無いものかと見て回る。
「(お、前衛と魔術師募集があるな。前任が結婚してパーティを抜けたための募集……納得できる理由だしこれは良いかもな)」
ちらほらと女性専用クランなどの掲示も見掛け、この街なら良い出会いも期待できるのでは?と感じた。
討伐依頼の方に戻ると、王都から割と遠そうな依頼もあった。近場の街ではギルドを持たず、王都のギルドが頼みの綱なのかもしれない。腕に自身のある若者など、皆王都に出てしまいそうだし。周囲の街に移り住んだセカンドキャリアの探索者が手に負えない案件を持ってきている構造かもしれないなと思う。
ざっと依頼ボードを眺め終わると、次は資料庫を探す。これはギルドの二階に見付かった。資料庫にある書物は持ち出し禁止だが、探索者たちからの情報で編集されてきた迷宮情報は有用だ。ここの二つの迷宮に本格的に潜ろうと思うと、罠対策に秀でたメンバーが重要になりそうだった。エイルも多少は罠対策が出来るが、本職には及ばないのだ。そのおかげで死に掛けたのだし、この街でそういった人材が仲間になれば良いなと思う。
ざっくり迷宮の傾向を掴んだら、一階に戻ってメンバー募集のボードを眺める。やはり斥候や工作兵の職を求める募集が(ヒーラーを求める募集の次くらいに)多かった。
これは迷宮活動に着手する前に、斥候・工兵科の人材探しが先かもしれないと思うのだった。
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