第2章 第26話 リエルダ出奔
オークション翌朝。目を覚ましたエイルは朝のルーティーンを熟すと、一階に降りて食事をとる。同室のマツリはベッドに居なかったので、おそらくカナリエ達の部屋で寝落ちしたのだろう。
食事が終わると探索者ギルドに向かう。昨夜のオークションについて聞いておこうと思う。ギルドに着くとサブマスを探すが、珍しく見当たらなかった。見覚えのある女性職員に声を掛けて聞いてみると、今日は午後からの出勤予定らしい。昨夜のオークション疲れなのだろうか。
サブマスが居ないなら出直そうと思い、厩舎に向かう。ストレイガル達に肉を食わせて撫でまくり堪能すると、次は屋台飯を買い込んで回る。毎度大量購入していくので、顔を覚えられた感じがする。たまにサービスしてくれるし。
中央広場まで行って朝市を見て回ると、折り返して西門方面に戻る。宿で昼食を取ってから頃合いを計り、探索者ギルドに顔を出す。サブマスの姿が見えたので挨拶にいく。
「サブマス、おはようございます」
「ラムザさん、おはようございます。応接に行きましょう」
顔を出した理由を察していて話が早い。通された応接室に入ると、女性職員がお茶を出してくれた。礼を言い、ありがたく飲ませてもらう。
「それで、昨日のオークションの件はどうでしたか?」
エイルから切り出すと、サブマスは明細書を出してくれた。
「……まじ?」
「まじです」
書かれている数字が、思っていた金額よりも桁が多い。四人で豊かな老後を送れる数字に不思議に思って訊いてみると、どうもザハト帝国の歴史と過去の大事業、その成果物が国宝になっている事など、色々と事情が重なり想像もしてなかった高額で競り落とされたらしい。
特にゴーレム系などの展示物に出来そうな物の人気が高く、放っておくと腐乱してしまいそうな地竜やネームドミノタウロスについては、剥製にしたい人と武装の素材にしたい人で競り合いが起こっていたらしい。
「サブマス、正直に答えて欲しい。帝都に寄ったらトラブるとおもう?」
「はははっ。帝都に寄らずに出国をお勧めしますが?」
エイルは明細を持って天井を仰ぐ。
「すぐに仲間を連れてきますので、応接押さえておいて下さい」
◆◆◆◆
宿に戻り、一階の食堂を見渡すと、目的の三人組を発見した。
「皆おはよう。飯食ったらギルドに行くよ」
「ラムザさんおはようございます」
カナリエ達が挨拶を返してくれる。
「わかった」
深くは訊かず、とりあえず従ってくれるらしい。
「詳しくはギルドで話すよ」
彼女達の食事が終わると、一緒にギルドの応接室に直行する。中で待っていたギルマスに挨拶し、皆をとりあえずソファに座らせる。
「昨夜のオークションの結果が上振れの意味で非常にマズい」
そう三人に言うと、テーブルに明細書を置いた。
「……」
国か大商会じゃないと見ないような数字が書かれていて、思わず真顔になる。
「出品者を探して調査の手が広がり始めているくさい。面倒事に巻き込まれる前に出国しよう」
装備の更新とかを楽しみにしていたのは知っているが、大事になりすぎている。
「装備買い替えるのとか楽しみにしてたのは分かってるんだけど、ごめん。出発しよう?」
三人はその意見に頷いてくれた。
「サブマス、収益は四等分でギルドの口座にお願い」
四人分のギルドプレートを提示すると、振込処理にギルマスが退室した。
「なんでこんな事になったん?」
マツリが不思議がる。
「なんかね、あのダンジョンの五十階層を前にクリアしたのって、帝国の国家事業で二百年前なんだってさ。城の宝物庫に飾ってあるような物がごろごろ出品されたってことで、大事になったらしい」
三人ともなんとも言えない顔をする。
「ま、仕方ないですね。命を狙われるのも、権力者の囲い込みに遭うのも嫌ですし」
レーヴィアが肩を落としてそういうと、カナリエも同意する。
「国家事業でやっとクリアするようなところを、四人で回らされたんですね。鬼畜か」
暫くするとサブマスが帰ってきて、プレートを受け取る。振込証明書をそれぞれに配られると、サブマスに握手を求めた。
「リエルダにいる間はとてもお世話になりました。オークションがこんな事になるとか思ってもみませんでしたけど」
ギルマスは握手を返してくれる。
「私はそうなると思ってましたけどね。はははっ」
「畜生!ハメやがったな!」
ギルマスの手を振り払って悪態をついて応接室を後にする。出口で一度振り返り、
「運が良ければ、またいつかどこかで」
と言い残し、宿へと戻って行った。宿で荷物をまとめると、ギルドの厩舎にいってアクスとランスを受け取り、厩舎スタッフ達にチップを渡す。
「長い事お世話になりました」
厩舎前でストレイガル達を箱馬車につなぐと、エイルが御者台に座って出発する。
帝国の西部のリエルダから帝都を避けてローエンディアを目指すとなると、一旦北か南に大周りして東を目指すことになる。気分で南側経由を選び、馬車を進める。西門から出て南門からの街道に合流し、南方に向かう。東部に伸びる道を見付けたら東部に向かおうとだけ考えての、行き当たりばったりな、慌ただしい出発に溜息が出る。
「さてさて。ローエンディアはどんな国かな」
評価、ブックマーク登録、いいね などの応援をお願いします。
モチベーションや継続力に直結しますので、何卒よろしくお願いいたします。




