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【完結】方舟の子 ~神代の遺産は今世を謳歌する~  作者: 篠見 雨
第2章 ザハト帝国と鉱山迷宮
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第2章 第25話 オークション

 一ヵ月が経ち、オークションの当日になった。開催は夜間、場所は中央広場に近い衛兵詰め所の訓練場に会場を設営しているらしい。夕方には現地入りする指示をサブマスから出されている。

 なんでも出品予定の目録を帝都に送りつけた結果、帝都からの来客が予想より多くなり、普段のオークションで使う施設では収まらなくなった事で、急遽会場が変えられたらしい。宿泊施設の確保など、ギルドは来賓の対応に大忙しの日々が続いている。


 サブマスにオークションを見ていくかと訊かれたが、今回も興味がない旨を伝え、売上は後日確認にしてある。下手に現場に居るとつまらない絡まれ方をされ、面倒事に発展するのが嫌だった。


 折角偽名で探索者ギルドをやり直しているというのに、これ以上階級が上ると本名を名乗るのと大差がなくなってしまう。そのため、出品者の情報は明かさないようにと、何度もギルマスとサブマスに念押しをしている。


 午前と午後はカナリエ達の訓練に付き合い、頃合いを見計らって劇場に向かった。

 カナリエ達はかなり真面目に頑張っているのだが、霊素運用は魔力の強弱のように本人の資質に大きく因るのかもしれない。そうだとしたら、頑張っているのに芽吹かず終わってしまう可能性もあり、期待させた半面、申し訳ないという気持ちでいっぱいになる。


 オークション会場に入ると、サブマスがやってきて商品の卸し場所の指定を受ける。大きな荷車が大量に置いてある。これらは会場への搬入に使うそうだ。例の巨大金属ゴーレム用など、何台の荷車が連結されているのか良くわからない事になっていた。頑張って頑丈に付与してあると自慢されたが、使う予定がないので何も響かなかった。購入者が持って帰るのには使うのかもしれない。


 出品予定の品を全て納めると、出品証明書に署名してもらい後をサブマスに頼んで宿へと帰っていた。


◆◆◆◆


 一ヵ月前、帝都の有力な工房や商人ギルドを通じ、リエルダで行われるオークションの”お祭り”が発表された。その目録はこうだ。


【目録】

 鉱山迷宮五階層ボス; リビングメイル(鋼)×一、リビングメイル(鉄)×四

 鉱山迷宮十階層ボス; リビングメイル(黒鉄)×一、リビングメイル(鋼)×四

 鉱山迷宮十五階層ボス; 大ガーゴイル(鋼合金)×一

 鉱山迷宮二十階層ボス; 大ゴーレム(鋼合金)×一

 鉱山迷宮二五階層ボス; 地竜(複合甲殻)×一

 鉱山迷宮三十階層ボス; 四腕ゴーレム(天銀合金)×一

 鉱山迷宮三五階層ボス; 特大型ゴーレム(天銀合金)×一

 鉱山迷宮四十階層ボス; 特大鰐(複合甲殻)×一

 鉱山迷宮四五階層ボス; 中級悪魔族(デーモン)(魔装殻)×一

 鉱山迷宮五十階層ボス; 髑髏型ゴーレム(神鉄鋼合金)×一、甲冑ゴーレム(天銀合金)×四

 鉱山迷宮三十一階層ネームド:ミノタウロス【武威の大黒角】×一


 職人は勿論、資産家の道楽にも求められる品々だった。


 リエルダの鉱山迷宮は帝国内ではお宝の産地として有名だが、同時に敬遠される迷宮だった。何しろ敵が単純に硬くて強い。おまけに戦利品となるそれらが重い。「角だけ高価」であれば角を持って帰れば良い。しかしこの迷宮では全体的に金属質な甲殻や骨格が数々居るため、「どれだけ持って帰れるか」という悩ましい問題も抱えている。自慢の武装を傷めて重く少ない成果物を持って帰る、では割に合わないのだ。


 約二百年前、帝国がその威信を掛けて組織した大規模な攻略隊が、多大な犠牲を払って五十階層までを制覇した。その際の貴重な素材の数々は、今も帝城の宝物庫に飾られているという。帝国の国宝がオークションの目録に出ているとなれば、普段オークションに足を運ばない者達ですら一目見てみたいとリエルダにこぞってやってきた。

 それが野外特設会場にならざるを得なかった理由である。お忍びで皇族が来ていると囁かれるが、それはきっと本当なのだろう。オークションの開催まで秒読みとなり、司会を任された心臓の強い受付嬢が出番の時を待っている。会場は異様な熱気に包まれていた。


◆◆◆◆


 一方、オークション会場がどうなっているのか理解していない出品者は、仲間の特訓に引っ張りだされていた。今日から霊気単体の訓練から混合錬気に焦点が変えられている。

 エイル自身も混合錬気は練習中のため付き合うのは問題ないのだが、「感覚を掴むため」とか言って背中に張り付いてくる奴らがいる。マツリがそうやって体感させる事で実際効果が出ていたのだから、否とはいえない。ガリガリと削られる理性が虫の息だった。オークションに見物に行けばよかったのだろうか。それはそれで絶対面倒な事になった筈だと自分に言い聞かせ、悶々としながら黙々と混合錬気を練り続けた。

 風呂から戻って来たマツリと交代し、エイルは自室に逃げ帰る。


 後輩たちの育成について頭を悩ませているエイルは、オークション会場の事については何一つ考えていなかった。

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