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【完結】方舟の子 ~神代の遺産は今世を謳歌する~  作者: 篠見 雨
第2章 ザハト帝国と鉱山迷宮
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第2章 第23話 暇潰しに盗賊潰し(2)

「ここがアジトだ。掘ってみたらハズレだった穴で、とっくに廃棄されている」

 良い隠れ家を見付けたものである。もしかしたら、元抗夫が居るのかもしれない。

入口にアクスとランスを待たせ、中へと入っていく。坑道は狭く、長物は使い難い。槍をしまって脇差を抜く。奥から幾人もの下品な笑い声が響いてくる。

 スキンヘッドを先行させ、案内させる。最初に着いたのはボロボロにされた女たちが転がる部屋だった。心身ともに破壊されたのか、呼吸はしているが身動きがない。

 「ここは後回しだ」

 エイルがスキンヘッドに移動を促す。次に着いたのが、宴会中の大部屋だった。景気良く酒を飲んでゲラゲラと笑い合っている。ザっとみて、確かに十人程いる。

 カナリエにスキンヘッドの縄を任せると、エイルが単身で広場に入り、すべて斬り殺す。そう広い場所でもなかったため、エイルが坑道内を回って見付けた者を片っ端から殺し尽くして戻って来た。

 「他に何かあるか?別の拠点とか別行動している仲間とかいないか?」

 スキンヘッドに訊くと、「もういねぇ」と短く答える。

「そうか。死ね」

 エイルはスキンヘッドの心臓を貫いて殺すと、坑道中の死体と溜め込まれた戦利品を回収する。最初の女たちが放置された部屋に戻ると、やはり酷い有様だった。やりきれない思いで、

「マツリ、すまん。頼む」と言い残して坑道を出て行く。


 マツリとレーヴィア、カナリエは転がされた女たちに念入りに【清浄】を掛けて周り、縛られた縄を外して【治癒】魔法を掛けていく。

 マツリが出した毛布をカナリエが女性達に掛けて回る。意識の戻った若い女が、呟く。

「……たすかったの?」

 カナリエは、「えぇ、助けに来たわ」と答えた。



 エイルは坑道の外にでると、荷車を回収する。帰りはさっきの女性達を馬車に乗せて帰ろうと思う。身体の傷は治せるが、魂魄の傷はそうもいかない。空を見上げ、憂鬱な気持ちを溜息と一緒に大きく吐き出した。



 暫く外で待つと、マツリとカナリエがそれぞれ女性を背負って戻って来た。

「マツリ、箱馬車出してくれ。中で休ませたい」

 箱馬車の扉を開けて、リビング空間に女性たちを連れて行く。

マツリとカナリエが坑道内に戻り往復する間、アクスとランスを箱馬車につないで出られる準備をする。

合計六名の女性達を箱馬車に乗せ、マツリとレーヴィア、カナリエが一緒に乗り込む。

さすがに九名はリビングのソファに収まりきらずに窮屈な思いをさせるが、街まで耐えてもらうしかない。エイルが御者を引き受けて、廃坑跡地を後にした。


 夕刻時に街に着き、西門から入市して探索者ギルドに顔を出す。サブマスターを見付けるとそこに相談に行った。


「サブマス、盗賊団を壊滅させて、捕まっていた女性達を保護してきた。女性達の届け先は衛兵詰め所かな?」

 サブマスターが驚いた顔をした後、衛兵詰め所で正しい事を教えてくれた。

「重ね重ねすまん、衛兵詰め所に誰か案内を付けてくれるか?」

 するとサブマス自身が同行を申出てくれた。サブマスを御者台に招いて衛兵詰め所に向かう。

街の中央広場の近く、大通りには面していないという場所に衛兵の詰め所があった。


 そこに着くと、サブマスが事情説明に詰め所に同行してくれた。

先ずは六人の女性達の保護をお願いして、医務室のようなところへ女性達を連れて行く。その後、盗賊団との接触から壊滅までの流れを説明して、詰め所の裏手の指定された一角に七十名ほどの死体を並べていった。今回は顔が出来るだけ綺麗に残るように殺したので、賞金首の確認はし易いだろうと思う。

 死体の着衣、武器、防具などは衛兵に処分を任せた。現金や金目の物は麻袋に纏められ、手渡された。そして賞金首が三名いたらしく、それなりの額が支払われたので、現金と合わせて後で山分けにしようと思う。


 詰め所を後にすると、探索者ギルドに戻っていく。

「見積は出来てますか?」

 エイルの確認に、サブマスが首肯する。探索者ギルドに着くと厩舎に向かってストレイガル二頭を再び預け、箱馬車はマツリが収納した。その後にギルド内の受付に行ってカウンター越しにサブマスから見積書を受け取った。階層ボスとネームド個体以外の全部を吐き出しておいたので、かなりの高額が記されていた。

 妥当なのかは分からないが、このサブマスは不正をせずちゃんと仕事をする人だと思うので、見積金額に了承して署名する。

「今回は四分割でお願いしますね」

 サブマスからプレートと口座の紐付けを確認してもらい、四人には同額を振り込まれた(端数だけはエイルが貰った)


「ボスとネームドっぽい奴、いつ渡せば良い?」

 サブマスに訊くと帝都にも声をかけて、来月のオークションに大体的に出品したいと相談された。一ヵ月近い時間が空くと言われると思わず面倒になる。

 帝都に移動してからリエルダに戻って来るとなると、数日しか帝都に滞在できない事になる。仕方ないので一ヵ月後のオークションの時に物を渡す約束をし、先に見ておきたいというので解体所で十体のボスとその取り巻き、ネームドだと感じたミノタウロスなどを並べてみせた。

 サブマスはそれらを鋭い目で眺め、メモ書きに記入をしていく。敵の種類や点数などを詳細に残しているようだ。

「ありがとうございます、これは来月のオークションが楽しみになりましたね」

 サブマスが嬉しそうにそう笑った。確認が終わった死骸は全て回収し、オークションの当日に搬入先に卸す事で合意した。その方が素材の鮮度が保てるし、ギルドの倉庫にも優しい。


 四人は宿屋に戻って食事をとると一旦マツリとエイルの部屋に集まって、そこで盗賊退治の報酬を等分して分け合った。それが終わると二人は部屋に引き上げて行く。今日は精神的に疲れたので、さっさと寝てしまうのだった。

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