第2章 第20話 鉱山迷宮の攻略戦(10) 城落とし
エイルは左端の甲冑に駆け寄り、戦鎚と戦棍に混合錬気を込めて殴り掛かる。甲冑は左手に持った大楯を前に構えて打撃を受け流そうとする。戦棍の一撃が楯の左端側面を叩き、右側に開くようにずらす。甲冑が楯の位地を構え直そうとするが、戦鎚で左側面を再度叩き、引っ掛けて押し広げる。長剣を突き込んで来るが、その切先を戦棍で右側に弾く。楯も剣も右に流した事で、甲冑の側面を捉える事に成功し、戦鎚を開いた胸元に叩き込む。
重たい金属音が返って来て、甲冑は後ろに倒れ掛けるも、後方に大きく足を伸ばして転倒を防いでみせる。
「(一撃じゃ駄目か)」
一体目の甲冑が堪えたのを横目に確認し、振り抜いていた戦鎚の勢いを活かして回転、遠心力の乗った戦棍と戦鎚が再び甲冑を襲う。胸部に三発目の強打が入ると甲冑はその場に崩れ落ちた。一体目が倒れるとその裏に二体目が迫っていて、長剣を刺し込んでくる。両の武器を振り抜いた姿勢に被せられた二体目の刺突が、エイルの右肩に突き刺さる。
「ッ!」
二体目は楯を前に裏からの刺突を繰り返し、右腕が上げられないエイルを押し返す。刺突を回避し、戦棍で弾くが、防戦を迫られ続ける。否、防戦に回る事でナノ・ユニットによる傷口の修復を待ち、右肩がある程度動かせるようになると、反攻に出る。
下段からの振り上げを見せ技にして楯を下げさせ、出来た隙に戦鎚を首に回して引きつつ、足元を刈って引き倒す。倒れ込んだ甲冑の胸部に戦鎚と戦棍を叩き込んでいく。起き上がろうとする甲冑を蹴り倒し、更なる打撃を胸部へ加えると、二体目の動きも停止した。
動きの止まった二体を異空間収納に消してマツリの側を見ると、二体目との戦闘中だった。王は玉座から動いてはいないが、王錫を構え始めている。
マツリが甲冑を楯ごと粉砕するような一撃を振るい、勢いを殺し切れなかった甲冑が、王に向かって押し付けられた。
王は王錫を振るうと【障壁】を展開し、甲冑の直撃を防いでみせる。
「(魔法使いタイプ?)」
マツリが相手している甲冑の側背を突き、背中に勢いの乗った蹴りを見舞う。前のめりになった甲冑をマツリが大上段からの振り下ろしで地面に叩きつけると、最後の甲冑も動きを止めた。マツリが即座に回収を掛け、足場を確保する。
エイルとマツリは左右に展開し、王を挟み込んで様子を窺う。王は玉座に座ったまま、マツリの方に顔を向けている。
「(マツリの方が脅威と感じるか。正解だ!)」
王は甲冑達と違い魔法使いタイプに見える。先程の【障壁】も見事だった。とは言え、やれる事とやるべき事には、そう選択肢がない。
エイルは王に駆け寄り戦鎚を振りかぶると、【障壁】に阻まれる。逆サイドからのマツリの大鎚も【障壁】で止まっている。【障壁】は周辺を囲うように展開されている事が分かった。
「(物理で障壁を抜けないのなら、魔法はどうだ?)」
障壁に戦棍と戦鎚を交互に叩き付けながら、エイルは【氷弾】を飛ばす。すると【氷弾】は【障壁】で止まらず、その神鉄鋼の骨格に当たって砕けた。
「(魔法は通るが神鉄鋼は魔力耐性が高いッ)」
エイルはマツリに視線を送ると、マツリは頷いてみせ、【樹槍】をぶつける。
それを確認したエイルが【火槍】を飛ばす。
王が自分を中心に、氷と風の複合【氷嵐】を使う。エイルとマツリは嵐の暴風圏内に入り、混ざった氷片が肌を切り割いて、風に血煙が舞う。
マツリが姿勢を低くして大楯を取り出し陰に身を隠くしつつ、玉座の王に斜め下から突き立つように【岩槍】で穿ち、エイルも大楯で氷片の直撃を防ぎながら、突き立った【岩槍】を【硬化】で金属質に変える。
王は王錫をエイルに向け、【雷鎚】を打ち込む。咄嗟に王に向かって戦棍を投げると、【雷鎚】が戦棍に飛来して逸れていく。
マツリが【水閃】で王を穿ち、エイルが【樹縛】で縛り上げる。王錫を絡め取った【樹縛】を鬱陶しそうに見やり、力尽くで引き千切ろうとするが、マツリが【火葬】で【樹縛】ごと焼き尽くしに掛かる。
王が初めて身を捩り、炎から逃れようと玉座から立ち上がりかけるが、エイルの【岩杭】がそれを許さず、マツリの【赤錆】が【岩杭】を巨大な錆鉄と化して王の動きを抑えつける。
王は身動きの阻害に藻掻くが、エイルの【瀑布】の水圧が王を圧して逃さない。マツリの【樹葬】が王の身体を蝕み喰らう。胸元から樹が生え、その身体に根を張り、魔力を吸い上げていく。
王の身体がビクンと玉座の上で跳ね、動きが止まった。
エイルが王に異空間収納を仕掛けるが、収納出来なかった。
「(倒し切れていない!)」
エイルが【樹葬】ごと【火葬】に掛け、魔力を絞り尽くす。視界が揺らぎ、身体から力がぬけて倒れ込んだ。
パキンッ
燃え盛る【樹葬】の根が核へと届き、圧壊した音が鳴る。エイルはその勝利の音を聞きつつ、視界が暗転して意識が遠のいていくのを感じていた。
マツリが肩で息をしながら王に手を翳し、異空間収納を掛けると、ようやく王の身体が消え去った。マツリがその場に座り込んで、マナ・ポーションを呷る。
戦いが終わった事を見て取り、カナリエとレーヴィアが駆け付けてくる。
「ラムザさん!」
エイルの頭を支えて口にマナ・ポーションを含ませてみるが、意識がないため飲めているか分からない。
「だいじょうぶ、少し寝かせてあげて」
マツリが落ち着くように声を掛けると、移動を提案する。
「カナリエ、ラムザを背負ってあげて?せめて下り階段の部屋を見付けよう」
カナリエは頷き、ラムザを背負う。ラムザが使っていた二本の武器は、マツリが代わりに持って移動する。三人は玉座の間の左奥にある扉を目指して歩いて行った。
背負われたラムザをみつつ、レーヴィアがマツリに呟く。
「五行相生。鳥肌が立ちました」
マツリが困った顔でレーヴィアを見る。
「ギリギリだったけどね」
扉前でカナリエが止まって振り向くと、レーヴィアが扉を開いた。扉の先には見慣れた下り階段の部屋が広がっていた。
「ラムザが起きるまで休もう」
マツリが休養を宣言して毛布を敷くと、カナリエがそこにラムザを寝かせ、マツリがエイルの二本の武器を横に添えた。
【ボックス・トイレ】を隅に出しておき、三人で屋台料理を食べながらエイルが起きるのを待つのだった。
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