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【完結】方舟の子 ~神代の遺産は今世を謳歌する~  作者: 篠見 雨
第2章 ザハト帝国と鉱山迷宮
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第2章 第18話 鉱山迷宮の攻略戦(8) 雑魚戦は癒し枠

迷宮四十五階層、下り階段の部屋。


「困ったね?」

「ほんとにね?」


下り階段の部屋に着いたら、下り階段の他にがあった。


五十階層に地上に戻れる転送陣があるというのは資料にあったが、四十五階層の転送陣については書かれていなかった。


「乗って出口に飛んだら良いけど。訳わからないとこに飛ばされたらどうすんの?っていうね」

 この転送陣の行先が分からない。乗るべきか反るべきか。

「乗りたい、一刻も早く地上に戻りたい、っていう欲求はあるけど……。リスク取るのは嫌かな」

 カナリエは希望に縋るより堅実に生きるタイプのようだ。

「そうですね……。転移トラップだった場合のリスクは怖いです」

 レーヴィアも反対に一票だった。


「それじゃ、この転送陣は無視して降りて行きますか。これ、絶対ギルドの資料に追記しなきゃ駄目なやつだよね」

 エイルが愚痴りながらも【ボックス・トイレ】も設置して食事休憩にする。もはや時間感覚がない。昼夜逆転していないだろうか?毎度の事ながら、今回もマツリとエイルは交代で寝る。睡眠は精神的な疲労にも良く効くのだ。必要な時に休めるのも才能。その点、瞑想睡眠は自力で深い眠りにつけるのだから、本当に優秀な技術である。



迷宮四十六階層。

 森だった。

 迷宮内には、こういった屋外にしか見えないような不思議なエリアがたまにある。

気配探知を行うと、点々と魔物の気配が見付かるが、鹿などの普通の獣も見かける。まさにザ・原生林。という感じの、鬱蒼とした森だ。


 内反りした大型のナイフを鉈のように使って枝葉を斬り払い進んでいく。


「下り階段、どういう風にあると思います?」

 レーヴィアが訊いてくる。

「何もない所にポツンとあるような気はしないよね」

 マツリがなんとなくで答える

「そうだな。確かにそういう観点で考えてみるのも良いのかも」

 エイルがその意を汲んで、周囲を見渡して一番頑丈で背丈の高そうな樹に登り始めた。樹の頂上付近からは樹魔法で足場を増築し、更に上へと身体を持ち上げて行く。周囲より高い所から周りを見渡してみると、蔦まみれだが遺跡のような塔っぽい構造物が目に入った。

「あれかな?」

 エイルは地上に戻ると、今見掛けた構造物について話をして向かってみる事になった。途中で襲い掛かって来た狼型の魔物は須らく返り討ちにし、塔のような構造物に辿り着いた。構造物の周りをぐるりと見て回り入口があり、その中に下り階段が見付かった。

「在ったね。レーヴィアお手柄だ」

 レーヴィアに笑いかけ、控えめなハイタッチを交わす。



迷宮四十七階層~迷宮四十九階層。

 四十七階層は広大な草原、四十八階層は丘陵地帯、四十九階層は荒野と、ダンジョンのバラエティ豊かな自然(?)が広がっていた。どのフロアも、樹魔法で作った高所から見渡して構造物を探すことで、普段の迷路型の階層よりも簡単に踏破が進んだ。

 なお、魔物はそれぞれのフロアに似合った動物型で属性魔法も併用してきたのだが、この階層までやって来れたエイル達にとっては、癒しの討伐タイムにしかならなかった。



迷宮四十九階層、下り階段の部屋。

 ここで再び【ボックス・トイレ】を設置して食事休憩をとる。次はいよいよ、ギルドの記録上での最深度到達フロアである。あくまで記録上である。絶対もっと深い階層まで攻略したパーティがある筈だ。知らないけど絶対そう。食事と仮眠も取って、万全な態勢で五十階層へと挑む。



迷宮五十階層。

 下り階段を降りると、そこは城塞都市の遺跡かな?という廃墟だった。


 崩れた城壁に崩れた家屋、一見無事そうな家屋でも中は荒れ果てていたりする。高めの建物に登って景色を眺めると、街の中央の城が最も目立っている。城周辺には大きな館など、貴族街のような構造が見える。それ以上の手掛かりは見当たらなかったので、仲間の所へ戻る。


「構造物だらけでどこが下り階段の隠し場所か判らん。城が怪しそうには見えるんだが」

 エイルが肩を竦めつつ、そう報告した。

「それなら城に行ってみよう」

 マツリの軽い言葉に、他に特に考えもないので皆で移動を始めた。


 気配感知にはちょこちょこと引っ掛かる物があるのだが、こちらに寄って来る訳でもないので放置する。推定貴族街を区切る壁に辿り着くと、樹形成の魔法で足場を造り、乗り越える。

 推定貴族街の区画に潜り込むと、廃墟屋敷の門を守るように立つ人影を見付けた。


「何かいるな」

 人影は門前から全く動かない。近付かなければ襲われることもなさそうなのでスルーして城に向かっていく。城の周囲には大堀があり濁った水で満たされている。大堀沿いに移動していくと、やがて城の正門に向かう石橋がみつかった。

「堀の水は避けたいし、正面から行くしかないかね」

 水没エリアでの苦戦(?)が頭にあるため、こういうところで水に入りたくない。素直に正門に続く橋を渡っていく。やはりというか、城門を守る人影が二体見えてきた。


「アンデッド?」

 遠目にみると斧槍を持った兵に見えるが、顔付きは髑髏であった。

「骨の色が鉱物質にも見えます。ゴーレムかもしれません」

 レーヴィアがそう言い足すが、どちらの場合でも核を潰す事に変わりはない。

 エイルは左手に戦棍メイス、右手に戦鎚ウォーハンマーを持ち首を鳴らす。マツリは両手持ちの大戦鎚グレートハンマーを肩に担ぎ、カナリエも戦鎚ウォーハンマーに持ち替えて構える。


「それじゃ、乗り込みますかぁ!」

 エイルとマツリが先行して走り出す。橋の中央を越えたあたりから門番が斧槍ハルバードを構えて動き出す。エイルは突き出される斧槍ハルバードを下から戦棍メイスで弾いてかち上げる。斧槍ハルバードと一緒に両手が上に持ち上がって胸元への障害が無くなったところに、戦鎚ウォーハンマーの一撃を叩き込んだ。重たい金属同士がぶつかり合う音を残して、門番が崩れ落ちる。

 マツリの方は斧槍ハルバードを身を捩じって躱し、障害となる腕ごと大戦鎚グレートハンマーで殴り飛ばした。門番の胴鎧が大きく陥没しており、こちらも動かなくなっていた。

 異空間収納に収めると、後方の二人を手招きで呼ぶ。

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