第2章 第16話 鉱山迷宮の攻略戦(6) 想定外との戦い
迷宮三十八階層~四十階層。
また走れるくらいにまで回復したところで、漸く三十八階層に進んだ。魔物の気配が感知できたので、さっきとは違うと胸を撫で下ろす。
「普通の魔物だらけの階層って安心する」
「わかる」
重装甲の巨体に鼻先がランスのように尖った魔物が突進してくるが、それすらも今は癒しであった。
三十九階層、四十階層も魔物だらけの階層で癒された。この迷宮に飼いならされた気がする。
迷宮四十階層、ボス部屋。
水没していた。
水面下に巨大な影が泳いでいるのが分かる。ギョロっとした目が水面からこちらを覗いた気がする。
「えー……。絶対水中戦じゃん。どうすんのこれ」
これは考えていなかった。水中戦の装備など持っていない。
「この窮地を脱する天才求む」
エイルは三人に振り返る。三人は揃って首を横に振った。
「まじかー。水中戦できるアイデアないかー」
「おうちかえりたい」
「同意」
水際で座り込み、何かないかと考える。水没の横幅は通路の幅と同じ。二十五メルくらいだろうか。奥行きは倍の五十メルくらいはありそう。深さは分からない。水中を泳ぐ巨大生物は、全長十メルくらいだろうか。全体像が分からないので、ひょっとしたらもっとデカいのかも知れない。数は見えてる範囲では一頭は確実。もっと居るかは不明。
水棲生物に水中戦を仕掛けるのは却下。気付かれずに泳ぐのも無理。もうこっちを見てるし。
水中を泳ぐ影の鼻面に、蠍の大鋏を投げてみる。投げた物がドポンと水面を叩いた後、影が水中に潜り込んで行ったようにみえる。おそらく拾い食いだろう。
次は蠍の尻尾をもっと手前に投げてみる。しばらくすると、影が水面に戻って来た。蠍の尻尾を投げたあたりに居る。
どうせならもっと近くで観察してみたい。トカゲを一匹、丸ごと落としてみる。影がえらい勢いで寄って来た。
「えっ、あ、退避!退避!」
慌てて水面から離れると、トカゲを咥え込んだ影が水面を割って飛び出してきた。陸に。
水陸両用の捕食者、デカい鰐(?)だ。
「うっそ、陸に出て来るの?まじかー」
「ありがたいんですけど」
陸に上って来るならば陸でボコるべし。前衛三人で囲んでボコったら死んだ。
陸で相手するなら地竜と大体同じ。鰐の血が流れて水中に入り込んでいる。鮫だったらあっという間に集まってきそうなのだが、今のところ他の影はない。
気配を探ってみても、水中に気配は無かった。
「あれ、今ので終わり?まじか。橋作って渡ろうぜー」
水没エリアの端の壁から足場を生やしていく。歩幅程度の間隔で足場をどんどん作成して行く。隙間だらけの吊り橋っぽい足場でも十分渡れる。足場を作って渡る作業を無心で進めていると、やがて水没エリアを突破した。
それなりに頑丈に足場を出したから大丈夫だろうと思うが、全員が渡りきるのを見守る。無事に全員が渡りきったところで漸く安心できた。下り階段に移動し、下へと降る。
迷宮四十一階層~四五階層。
癒しの討伐エリア。何も考えず殴る。相手は死ぬ。
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