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【完結】方舟の子 ~神代の遺産は今世を謳歌する~  作者: 篠見 雨
第2章 ザハト帝国と鉱山迷宮
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第2章 第15話 鉱山迷宮の攻略戦(5) 動きたくないでござる

迷宮35階層、下り階段の部屋。


「動きたくないでござる」

「同意」

「暫く休みたいですね」

「同意」


 部屋の隅に【ボックス・トイレ】を設置して、離れたところに横たわる。昼休憩からあまり立っていないというのに、巨大な金属ゴーレムとの戦闘の疲れが、全てのやる気を奪い去ってしまう。


「この休憩は必要経費ということで……」

「異議なし」


 マツリが毛布に包まって先に瞑想睡眠に入った。二時間後に起きたマツリと交代でエイルが毛布に包まって瞑想睡眠に入る。カナリエとレーヴィアはマツリが寝た頃からずっと寝ている。

瞑想睡眠があるから出来る二交代制だった。

 エイルが寝入ってから二時間後、自然と目が覚めて周りを確認する。マツリは起きているが、カナリエとレーヴィアはまだ寝ていた。


「マツリおはよう。寝てる間、何かあった?特になし?」

「特になし。まぁ分かるよ?あの金属ゴーレムみたら普通諦めるよね?」


 事前に確認した資料からは、あのヤバさは伝わらなかった。だから来たとも言えるが。

 現在位置が三十五階。帰りの転移陣があるのは五十階。あと十五階である。つまり地上に戻る方が階数が多いのだ。遠いのだ。ならば進むしかあるまい。

 だが十五階層分となると二日くらい掛かりそう。地獄か。


「夕飯食べてから進む?食べずに進んで、次の休憩のお楽しみに取っておく?」

「後が良いかな~。昼食べてからあんまり動いてないし」

「了解」


 マツリがカナリエとレーヴィアを起こそ、むくりと起き上がるのを眺める。

「トイレ休憩要る?」

 寝起きのカナリエとレーヴィアは首を横に振る。

「さっき行ったので良いです」

 問題なさそうなので、【ボックス・トイレ】や毛布を片付けていく。


「それでは攻略に戻りますか」

萎える心に鞭を打ち、下り階段を降りていった。


迷宮三十六階層。


 階段を降りると、割と近い場所に魔物の気配を感知した。気配のある方へ向かって歩いて行く。T字路に突き当り左に曲がって行くと、白い塊が見えてきた。


「白い塊……いや、毛玉?」

 近付いていくと、大きな毛玉がもぞもぞと動き、こちらに振り向いた。

「……兎?」

 兎にみえる。兎にみえるのだが、後ろ足で立ち上がったその姿はマッスルだった。毛皮なのに腹筋までくっきり割れて、胸板も厚く盛り上がっている。


「え、かわいくない」

 マツリの目が死んだ。


 エイルは大身槍を下段に構えつつ、歩く速度で間合いを詰めていく。魔物だって伊達にマッスルな訳ではない。きっと強烈な攻撃手段を持っている。慎重に間合いを詰めていく。

 すると、マッスル兎はこちらに背を向けた。


「?」


 その行動の意味が分からず、間合いを維持して観察する。

 マッスル兎は徐に両前足を横に広げると、肩越しにこちらに視線を送り、背筋を盛り上げ始めた。メキメキと音が鳴りそうなくらい背筋が盛り上がっていく。


「え、きも」

 レーヴィアが生理的に無理そうな声を出す。


 一頻り背筋を自慢して気が済んだのか、マッスル兎は迷宮の奥へと去って行った。


「……」


 兎の後は追わず逆方面に行ってみると、あっさり下り階段が見つかった。



迷宮三十七階層。


 階段を降りるとすぐにT字路が見えた。魔物の気配を探ってみるが、感知できる範囲には居なさそうだった。前の層と比較すると、道幅が狭く感じる。T字路にぶつかると左に曲がっていく。


「?」


 何か違和感が感じられたのだが、その違和感の正体が分からない。何かしらの結界でも越えたのか?

 違和感の正体が分からないまま、進んでいく。正面を見て歩いていると、別れ道もない通路の行先に壁が見えていた。どうやら丸まった一本道を進んでいるらしい。


「?」


 また違和感を感じ、足を止める。


「何か変じゃない?何が変なのか良くわからないんだけど」

 エイルが訊いてみるが、

「ゆったり曲がった一本道だな~とは思いますが」

 レーヴィアも同じ事には気付いていたが、違和感と言われると良くわからない。


「……」

 エイルはジッと足元を見ながら考える。


「……ッ!」

 そして、違和感の正体に気が付いた。


「この通路、になっている。そしてだ。つまり」


……ゴゴゴゴゴゴ


足元から振動を感じ、背後から重たい音が迫って来る。


「トラップだ!走るぞ!」


 死ぬほど走った。

 レーヴィアが途中でバテたので、エイルが小脇に抱えて兎に角走った。

 背後にチラチラと大玉が見え始めた時には、今日イチ焦った。


 通路の先に玉が通れないサイズの道があったので、そこに駆け込むと下り階段前の部屋だった。助かった。脇腹痛い。心臓破れそう。酸素欲しい。


 皆で床に倒れ込み、何も考えられずひたすら呼吸を整えるのだった。


 呼吸は落ち着いてきたがレーヴィアの膝が笑っていて、次も走らされたら終わるなと思った。

 休憩しよう、そうしよう。ついでに夕食も食べよう。

 肉が良いな。串焼き出そう。ふかし芋にバターが乗ったのも食べよう。

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