第2章 第14話 鉱山迷宮の攻略戦(4) 金属質な巨像の倒し方
迷宮三十三層。
通路の幅がこれまでより広くなっていた。天井も若干高い気がする。敵の気配を探って行くと、巨大な蠍が徘徊していた。
「蠍か。尻尾の毒が怖いから、尻尾を切り落とすまではカナリエは後ろで待機してて」
そう指示を出すと、マツリと一緒に飛び出していく。此方に気付いた蠍が多脚を動かして向きを合わせてくる。蠍の間合いに入ると、尻尾の毒針が飛び出してくるが、マツリが身を捻って毒針を躱し、擦れ違い様に打刀の抜き打ちで切り落としてみせた。エイルは逆サイドの大鋏の関節部位を打刀の抜き打ちで斬り飛ばした。
尻尾が落とされた事でカナリエが長槍を構えて突撃し、頭部を貫通させて素早く下がった。「蟲は頭を潰しても暫く動く」という教訓をカマキリ戦で覚えたようで、良い引き際だった。
この蠍も頭部に致命傷を受けながら暫く暴れたが、徐々にその動きが鈍り、完全に止まってから漸く異空間収納に収められるようになった。
その後、蠍を十頭ほど倒したところで、漸く下り階段が見付かった。
迷宮三十四層。
このフロアの敵はミノタウロスだったが、三十一階層で戦った個体に比べて一回り小さく、迫力も足りなかった。
やはり三十一階層で戦ったミノタウロスはネームドだったのでは?と感じる。
敵の気配を辿って倒しながら移動していると、割と早い段階で下り階段が見付かった。
階段前の部屋で昼食休憩をとる。【ボックス・トイレ】を設置してから薄い生地でたっぷりの野菜と肉が撒かれた屋台料理を手渡していく。肉に辛めのソースが合い、中々美味かった。
食後の休憩を三十分程取ると、下り階段を降りて行った。
迷宮三十五層。
だだっ広いワンルームな階層だった。奥の方に、体高十メルありそうな巨大なゴーレムが佇んでいる。
「」
予想外の光景に絶句し、思わず階段を登りなおした。
「金属製の硬そうなゴーレムの倒し方募集」
エイルが死んだ目でアイデアを募る。
「核はどうせ胸ですよね。胸元を攻撃できる高さになるまで足元を崩して埋め立てするとか」
レーヴィアがアイデアを出す。
「これが迷宮じゃなかったら採用したい。あいつデカすぎる。迷宮の床だと多分頑張っても膝位までしか沈まないんじゃないかな……。」
エイルは迷宮では取れない作戦であることを残念に思う。
「足場を作って登って、直接胸に攻撃を当てる?」
マツリが意見をを出す。
「足場を崩されなければ行けそうかな?何かもう一工夫欲しいかも。他には?」
エイルは検討の余地ありと判断する。
「感知範囲外で足場を作っておいて、そこにおびき寄せて攻撃する?」
カナリエがマツリのアイデアにちょい足しする。
「あー、なるほど。フロアに入っただけでは動いて来なかったし、感知範囲外で足場を先に作っておびき寄せは出来るかも」
しばらく考えてみるが、それ以外だと「混合錬気して本気で殴る」くらいしか出て来なかったので、大人しくカナリエ案で行く事になった。
迷宮三十五層(再)。
階段から出ると、端の方に【岩壁】魔法をベースに城壁のような物を作りはじめた。壁の高さは目測でゴーレムの頭くらいの高さにしてある。壁の上は動き回れるだけの広さを持たせ、ゴーレムを誘い出した人が壁の裏に避難できるように、人間サイズの門も開けてある。その門を通れば裏に階段があって、壁の上に合流出来るような構造である。形が出来上がると、更に硬く、頑丈に、強度を上げていく。
レーヴィア、マツリ、エイルと三人掛かりで設備を作り上げると、壁の上で暫く休憩にした。
「さて、誰が囮になる?」
エイルが皆に訊いてみるが、女子三人は示し合わせたかのようにエイルを指さした。
「ですよねー畜生」
エイルは下に降りると、城壁の前に立つ。覚悟を決めると、ゴーレムに向かって歩き出した。広場の中程に近付いたところで、ゴーレムがエイルに反応して動き始めた。
エイルはゴーレムを見ながら城壁に向かって小走りに移動していく。あのガタイで猛ダッシュされたら嫌だな、と思っていたが、幸いなことに歩くような動作で迫って来る。歩幅が広いので見た目より速度が早かったが、エイルは壁の裏へ回り込み、城壁の上に合流した。
ゴーレムは壁の前まで順調に追って来る。壁の奥側で壁に最接近するのを待つ。密着するくらい近付いてくれたらと思っていたが、若干離れた位地から壁の上を目指して攻撃が始まった。これ以上壁に近付かせることは難しそうなため、壁上からの攻撃を開始する。
見た目で分かってはいたが、レーヴィアの槍は刺さらず弾かれてしまう。関節部分に僅かな隙間が見えたので、マツリとエイルはそこを首元の隙間を狙って槍を刺し込んでみるが、ダメージになっていない。レーヴィアは【炎放射】で首の隙間を狙ってみるが、核まで届いているのか分からない。対して、ゴーレムからの攻撃は確実に壁にダメージが入っている。足場が酷く揺れる。
「ちょっとー?混合錬気じゃないと無理じゃないこれ?」
マツリが冷や汗を滲ませて言う。
「確かにキツイ!ちょっと行ってくるわ」
そう言い残して、エイルが城壁からゴーレムの肩に飛び移った。首元まで這い寄ると、首元の隙間に重大剣を出して刺し込み、一気に魔力を込める。
ミシッと軋む音が鳴り、徐々に重大剣が埋まっていく。魔力を込め続けながら刃を前後に捩じり、隙間を広げていく。
「隙間が広がってきたッ!」
エイルが叫ぶ。するとマツリも首元目指して飛び移ってきて、広げた隙間に大身槍の長槍を差し込み、繰り返し内部を刺しまくる。
「槍の長さ的には届きそうなんだけど!」
ゴーレムは首元に張り付いた人間には構わず、城壁上を狙って腕を振り回し続けている。
「ちょ、っとぉ!城壁組も結構ヤバいんですけどー!早くして—!」
カナリエが悲鳴を上げる。レーヴィアはギリギリまで後ろに下がり、城壁の維持に集中していた。
エイルが重大剣を前後に揺らして何とか隙間を広げようと奮闘する。ガリッと音がなり、更に刃が食い込む。
「とぉぉまぁぁぁれぇぇぇ!」
マツリが叫び、大身槍を隙間に突き込んで捩じり込む。
ピシッ
何かに罅が入ったような音を耳が拾う。
マツリは槍から手を放して大鎚を取り出す。
「これでッ!」
大鎚で大身槍の石突を殴り、奥へと打ち込む。
ミシッ
「どうだッ!」
大鎚で大身槍を更に打ち込む。
ズンッ
ゴーレムが前のめりに城壁に突っ込み、足場が大きく揺れ、
動きが止まった。
「お?」
「止まった?」
「しゅ、収納ぅぅ」首筋から振り落とされそうになっていたマツリが、異空間収納を試すと、体高十メルの金属の巨人の姿が消え去った。
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