第2章 第12話 鉱山迷宮の攻略戦(2) 二日目
迷宮滞在二日目。
朝食を済ませると、二十一階層から攻略を再開する。この階層は二十階層のボスだった鉱物質のゴーレムの、少し小さい版がメインだった。
ボス戦で心臓の位置に殻がある事は把握したので、それをどう壊すかがポイントになった。
マツリとエイルは長槍で胸部装甲ごとコアを貫き、カナリエは戦鎚で胸部を強打して装甲上から核を圧し潰すか装甲を削り落として出てきた核を叩く。
レーヴィアは【岩弾】でカナリエと同じように挑んでみるも、ダメージの通りが悪く途中から支援に回っていた。
「ここの”硬い敵”ってコンセプト、魔術師に恨みがあるのかってくらい相性悪いです……」
思わず愚痴ってしまうレーヴィアだった。
「自分が倒すだけが立ち回りじゃないよ。仲間の支援や相手への妨害と牽制とか、やれる事はあるさ」
エイルはレーヴィアにそうアドバイスをするのだが、それでもフラストレーションが溜まってしまうのはある意味仕方がなかった。
二十二階層から二十五階層までは、鉱物質な蟲系が多かった。大型犬のサイズの甲虫が群れで現れたり、全高が二メル半もあるカマキリともやり合った。
虫はあまり痛みを感じないのか、結構深いダメージを与えても平気で向かってくる。カマキリなど、首を刎ねて油断したカナリエが鎌腕で掴まえられ持ち上げられていた(持ち上げて捕食しようとしたが頭がなかった。みたいな様子だった)
甲虫の群れは、レーヴィアが【水流】で押し返した後の【氷結】で広範囲の拘束に成功し、落ち着いて一匹ずつ潰して回れた。満足のいく支援に成功し、嬉しそうな笑顔をみせてくれた。
二十五階層のフロアボスは、体高三メル全長十五メル程もある、四つ足の地竜種だった。翼がない竜の一種で、地属性の魔法をナチュラルボーンで操る魔物だ。「二十五階層のボス戦以降、魔法を使う敵が増えてくる」と資料に記載があったのを思い出す。
ボスの地竜は背中側の外殻が全体的に鉱物質だったので、比較的マシな腹側の部分を槍で突いたり【氷槍】を生やして腹を抉ったりして消耗させる。地竜は肉弾戦を主体に攻めてきたが、攻撃が当たらないのがストレスになったのか、【岩弾】や【岩槍】を併用して仕留めようとしてくる。
しかしナチュラルボーンの強者故か、その狙いが分かり易い。肉弾攻撃を仕掛けている相手に魔法で手数を増やすような戦い方をするため、自分が狙われていない時は他メンバーが攻勢に出易かった。
やがて、ブレス狙いなのか頭をぐっと持ち上げて大口を開いたところに、カナリエが口内に槍を突き込み、それがトドメとなって倒し切れた。
エイルはゴリ押しで押し切る場面と、丁寧な立ち回りをして経験を積ませる場面とをしっかり別けて考えている。それはマツリにも理解出来ていたため、ボス戦や珍しい敵が相手の時はカナリエとレーヴィアへの配慮を優先していた。
この方針が功を奏し、カナリエとレーヴィアはそれぞれに手応えを感じて良い顔をするようになってきた。カナリエは敵と武器の相性を判断して効果的な戦い方をするようになってきたし、レーヴィアも地味ながら顔面付近への牽制攻撃や妨害が巧くなってきている。
適度に休憩を入れつつ、二人の話を訊いてアドバイスをする。良かったところは褒めて、失敗したところは課題として指摘して次回につなげるようなフォローをしていく。
二十六階層から三十階層にかけて、ブレスや魔法を併用してくる敵が増えてきた。魔物の厄介なところは、ナチュラルボーンで無詠唱の使い手なところだ。魔物単体との戦闘では然程気にならないのだが、群れて現れた時が厄介だった。カナリエとレーヴィアも何度か不意打ちのように飛んできた魔法に被弾していて、やり難さを感じているのが判る。怪我そのものはマツリの治癒魔法で回復出来るので問題にはなっていないが、またフラストレーションが溜まりつつある様子が見て取れた。
三十階層のボス部屋では、腕が四本ある体高二メル半程の人型のリビングメイル(ゴーレム?)が現れた。直剣と楯を構え、短槍を二本持っている。
近付けば二本の槍に晒され、それを掻い潜っても胸部の核は大楯で守りを固めてあって、直剣で迎撃もされる。
混合錬気を遣わずに前衛三名の状態で様子見をするが、中々に攻めにくい相手だった。混合錬気でゴリ押しすれば簡単に勝てるが、それだと後進の成長につながらない。
「レーヴィア、敵の足元を乱してくれ!穴でも隆起でも構わない!」
エイルがレーヴィアに支援を頼む。
「はい!」
レーヴィアはボスの片足を掬い上げるように、足元から【地柱】を立てる。狙い通りにボスは体勢を崩すが、敢えて飛ぶように横に転がり、すぐに姿勢を整えてしまう。レーヴィアはそれを確認すると、次はボスの立つ床を【軟化】させると、膝あたりまで沈み込んだ。
マツリがそこに【樹縛】の魔法で上半身の自由を奪い、エイルが更に重ねるように、【軟化】と【振動】を併せた魔法を重ねると、更に沈み込み、腰まで埋まっていった。ボスは四本の腕を駆使して何とか拘束から抜け出そうとするが、それを黙って見ている道理はない。
「カナリエ!」
カナリエがボスの斜め背後から、脇の下の鎖編みの部位に長槍を全力で突き立て、体内の核のあるだろう場所にねじ込む。ボスはビクンと一度痙攣すると、脱力して動かなくなった。マツリがボスを異空間収納すると死骸(?)が収納されて消えたため、勝利を確認できた。
「おつかれ!今日はここまでにしとこうか」
エイルが宣言してボス部屋の奥の部屋に移動していく。下り階段前の部屋はそれなりの広さもあり、休息に丁度いい。
部屋の端にサッと【ボックス・トイレ】を設置してから、逆サイドの方にローテーブルと皿を出す。肉系の串焼きを各種と、パンとサラダ、果実水というメニューだった。食事の用意が進む間に、マツリが皆に【洗浄】を掛けて回る。
「今日は十階層しか進めなかったね」
マツリが残念そうに言う。
「マップもないし手探りだからね。魔物の配置はある程度気配で分かるけど、正しいルートは分からいし」
エイルがそんな事もあるといった顔で肩を竦める。
「マツリ、ご飯後で良いから霊力操作のトレーニングつけて」
カナリエがマツリに頼み込む。マツリはもぐもぐと咀嚼しながら首肯した。
「それなら今日は俺が先に寝るから、後で起こしてくれ。交代する」
エイルがマツリにそう言うと、毛布に包まって先に瞑想睡眠を取り始めた。
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