第2章 第11話 鉱山迷宮攻略戦(1) 初日
リエルダ滞在 五日目。
朝食後に四人は宿を引き払い、南門へと向かった。
南門前の広場で貸し馬車屋を雇い、鉱山迷宮に送ってもらう。道中に異常はなく、午前中の内に現地に着いた。前回来た時にダンジョンの入口までのルートは大体覚えたので、ガイドなしで先を急いだ。
ダンジョンの入口を前に、気合を入れ直す。
「隊列はマツリが斥候兼ルート係で先頭。次が俺で、レーヴィアを挟んで最後尾はカナリエに任せる。後ろからの不意打ちを受けないよう、後方への警戒が重要だよ。ボス部屋とか後方を気にしなくて良い時は、レーヴィアより前に出て守ってあげてね」
フォーメーションを指示し、皆が頷いたのを確認すると、マツリに合図を送って攻略を開始した。
迷宮一階層目。
陸亀は頭を甲羅に引っ込める前に打刀で首を刎ねていく。
トカゲは噛み付きに来たところを横に回り込みつつ、擦れ違い様に首を刎ねていく。
迷宮二階層目。
蝸牛は火魔法で炙って倒していく。
蜂は大身槍で刺し殺す。数がいて近付かれたら、打刀で両断していく。
迷宮三階層目。
ヤドカリは下から突き上げる系の魔法で刺し殺していく。
迷宮四階層目。
ダンゴムシも下から突き上げる系の魔法で刺し殺していく。
迷宮五階層目。
リビングメイルは戦鎚で胸部に強打を決めて核を破壊していく。
迷宮五階層目のボス戦。
大物のリビングメイルはエイルが引きつけ、左右の取り巻きをカナリエとマツリに分担してもらう。レーヴィアには適宜支援を頼んだ。
マツリとカナリエが取り巻きを二体ずつ倒した頃、ボスは胸部をベッコリと陥没させて倒れていた。
「前回踏破済みのフロアは巻きで進めたぞ」
エイルが振り返りながらそう言うと、「……あ、うん」という感じの、ジト目反応が返って来た。
「ここから先は未経験エリアだけど。五十階層までこの調子で行こうか」
六階層目以降、マツリが右手に大身槍の長槍、左手に脇差を装備して魔力と霊力の混合錬気を使い始めた。身体強化だけでなく、手にした武器に錬気を纏わせる訓練を兼ねている。これを使いだすと、敵の強靭な外殻も容易く貫通し、両断してしまう。「硬い敵」というコンセプトが息をしなくなっていた。
エイルも混合錬気を熾すが、マツリ程の強度に届かない。朝のルーティーンで分かってはいたが、やはり霊力に魔力を溶かし込む合成率が足りていない。
代わりに、武器に混合錬気を纏わせる訓練をしてみるのだが、なかなか安定しない。ひたすら実践あるのみだった。
そんな錬気の特訓中のエイルでも、カナリエやレーヴィアからすれば十分に埒外に見えている。
二人で殆どの敵を一掃できてしまうが、それをやるとカナリエとレーヴィアの訓練にならない。どのフロアでも二人に任せる時間は作って経験を積ませていた。
十階層を越えたあたりから、カナリエが自分に何が足りないのかを真剣に悩み、マツリに相談をし始めた。
丁度良いので昼休憩にし、魔力による身体強化と霊力による身体強化の違い、その両方を溶け合わせる混合錬気という技術について、説明する。
カナリエはエイルがそうだったように霊力については知識がなく、初めて聞く概念に戸惑っていた。霊力操作は体験してみないと取っ掛かりが難しい。
マツリは少し考えた後、カナリエの両手を握って霊力操作を行う。掌から魔力ではない別の力が通り、反対の掌から抜けていく感覚を体験させることに成功した。
その後、カナリエの頼みでカナリエの武器での戦闘をみせてやる。使い手の違いで同じ武器が硬い外殻を貫通させるのを見せられると、これが技術の違いなのだと思い知った。同時に、カナリエ自身が一段階上に至れる可能性を見付けた事で、モチベーションが上がっていった。
カナリエはマツリに霊力操作の教えを請うが、訊いて直ぐ出来るような技術ではないため、マツリからは訓練方法を教えてやるくらいしか出来なかった。
初日は二十階層のボス(鉱物質のゴーレムだった)を倒して進んだ部屋で休息を取ることになった。エイルとマツリが交互に瞑想睡眠を取る。カナリエとレーヴィアにはしっかり寝てもらう。二人は自分達も見張りのローテーションに入ると主張したが、瞑想睡眠について説明することでようやく納得してもらえた。
マツリが見張りをしていた深夜、二十一階層から探索者チームが上ってきた。警戒はしていたが、特に不審な動きはせず去って行った。
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