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【完結】方舟の子 ~神代の遺産は今世を謳歌する~  作者: 篠見 雨
第2章 ザハト帝国と鉱山迷宮
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第2章 第10話 鉱山迷宮の攻略準備

リエルダ滞在 四日目。

 マツリはカナリエ達と出掛けて行った。探索者ギルドに行くのは昼過ぎのため、午前中が丸々空いている。今後の予定として見込んでいる、迷宮連泊のための食料や消耗品などを調達をすることにした。


 まずは大通りに面した屋台を周り、出来合いの食料を購入していく。西門周辺から南門周辺までは確認済みのため、今日は北門方面から東門方面を散策してみる。

 食品屋台の確認をしつつ、細かな雑貨まで見て回る。紙や布切れなども意外と用途が多いので、割安だと感じた物は次々と買い込んでいく。北門周辺まで足を伸ばすと工房区画が近いようで、若い職人達が習作で作ったような品を販売していた。ここいらはエイルの求める消耗品の類は少ないようなので、途中で引き返して東門方面へと向かう。


 東門方面に歩いて行くと、野菜や食肉などの食材を売る店が増えてきた。食肉は割と在庫があるので、生食できそうな新鮮な野菜と果物を購入して回る。

 東門広場まで行き当たると丁度良い頃合いだったため、西門方面に折り返していく。目的地は探索者ギルドで、一階で食事をとってみる事にした。

 昼時のサービスメニューから、挽肉の肉団子たっぷりのトマトスープを注文した。ギルドの食事にしては十分美味しいと思える味だったので自然と機嫌も良くなっていく。人間、美味しい物を食べていれば平和になれるのだ。よって世界はもっと美食を追及すべきである。


 昼食が済んだ時点で仲間達はまだギルドに来ていなかったため、ギルド裏の厩舎に行って預けっぱなしになっているストレイガル達と触れ合う。さすがに暇過ぎるのか、二頭ともぐったりと横たわったままだった。二頭から構ってくれオーラを感じるが、鉱山迷宮にまで連れて行って潜っている間は放し飼い、というのも流石にどうなのかと考える。そういえば宿は四泊五日で借りているから、鉱山都市に連泊で行くなら延長を掛けておかないといけない事を思い出す。

「ごめんなー?もう数日は我慢しておくれ……」


 恨めしそうな目で見てくるストレイガル達を残してギルド館内に戻ると、女子三人組が到着していた。

「おつかれー」

 マツリ達と合流すると、カウンターの方を覘く。サブマスターはすぐに見付かったので、その列に並んだ。列の短いところから探すのがコツである。


「サブマスター、昨日の見積の確認に来ました」

 エイルがサブマスターに声を掛けると、サブマスターはカウンターの手元に出していた書類を手渡してきた。

「お待ちしておりました。まずはお見積りの件です」

 四人で頭を寄せ合い数字をチェックする。

「おぉ?意外と良い収入になりましたね?」

 頑張った三人に三等分した金額は、それぞれが半年は暮らせそうな金額が書かれていた。

「鉱山迷宮の魔物素材は職人達に需要が高いのですが、供給が少ないのです。硬い魔物ばかりで武器も傷みやすいとなれば、倦厭されますよね」

 理由を訊くと納得であった。

「この金額で了承します。三等分した額を、こちらの三人に振り込んで下さい」

 エイルは三人に振り返ると、プレート出させる。

「えぇ?てっきり私とレーヴィアが二人で一人分かと……。良いんですか?」

 思っていた配分と違ったことにカナリエが挙動不審になるが、装備を揃えるには必要な収入だろうと押し切る。

「それじゃ、いただきます……」

 と、二人は黒鉄ブラック製プレートを出した。マツリも特に不満はないようで、黄金ゴールド製プレートを提示する。

「畏まりました。少々お待ちください」

 サブマスターは顔以外の物腰が完璧である。カウンターの奥で振込手続きが行われ、プレートが返却された。

「続いてラムザ様とマツリ様に昨夜のオークションの配当をお渡しします。五対五の割合でよろしかったですね?」

 そういって金額の書かれた紙を渡してくる。金額をチラリと確認する。帝都で屋敷が買えそうな額が記載されていた。

「……その分配でお願いします」

 と答え、黄金ゴールド級プレートをマツリと一緒に渡す。


 換金が済んだところでカウンターから離れ、カナリエとレーヴィアにこれからの希望を訊く。

「武装の更新、できそう?もう少し稼ぎたいなら鉱山迷宮に連泊で行ってみる?」

 カナリエは少し考えてから答える。

「とりあえず鈍器と長剣の更新は出来そうです。防具の更新には足りないので、もう一回お願いしたいです」

 レーヴィアの方はカナリエ次第というスタンスだった。

「分かった。宿屋の延長は無しで、明日の早朝に貸し馬車で出発しよう。食料はこっちで買い込んでおいたから大丈夫。武器の更新、行ってらっしゃい」

 カナリエとレーヴィアが礼を言い、買い物に向かって行った。


 それを見送ると、サブマスターのカウンターに戻る。

「サブマスター、鉱山迷宮の情報をあるだけ仕入れたい。詳しい資料でもないかな?」


◆◆◆◆


 資料庫で閲覧させてもらった情報によると、記録の上では到達階層は五十層まで確認されているらしい。マップについては見付からなかった。

 五十階層までの各階層の敵について情報を読んでみたが、初見殺しのような悪辣な敵は居なさそうだった。全体的に「硬くて倒すのが大変」というコンセプトに終始している。

 罠の類についても、転移トラップの様な厄介な物は例がないらしい。


 そして、五十階層のボス部屋を突破したところに、ダンジョンの入口まで戻る転移陣があるという。これらの集めた情報から考えて、明日からの攻略は五十階層の転移陣までを目標にし、余裕があれば五十階層をベースキャンプにして、更に下に挑む事にした。


◆◆◆◆


 夜、宿に戻るとカナリエ達と一緒に夕食をとる。三種類の肉のカットステーキは美味であった。

「おかげ様で、戦鎚ウォーハンマー一つと長槍一つの新規導入、長剣の買い替えができました。ありがとうございます」

 カナリエが嬉しそうに話してくれた。レーヴィアの方も、天銀ミスリル繊維入りの頑丈なローブに買い替えが出来たらしい。

 満足そうにしている二人をみていると、エイルとマツリも自然と頬が緩んでいた。

 その後、ギルドの資料庫で見てきた鉱山迷宮の情報について共有し、明日からの攻略にはエイルも戦闘に参加することを伝えた。

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