第2章 第5話 リエルダの探索者ギルドへ
四人は宿の一階の食堂に集合していた。朝食はパンと目玉焼き、大振りのウインナーソーセージ二本、マッシュポテトに、新鮮な野菜のサラダが付いた立派なメニューが出てきた。
「他人が用意してくれた飯は美味い。別料金だったけど大分満足」
移動中は食事係をやってくれているマツリだが、他人任せで済む食事はそれだけで高評価を付けたがる。昨夜の夕食に続いて今朝の味も満足できる物だったため、リエルダ滞在中の食事の多くはこの宿の一階で済ませる事になりそうだと感じた。
「さて、本日はどうしますかね。カナリエ嬢とレーヴィア嬢は装備品を見に行きたいんだっけ?」
エイルが今日の予定を確認に、カナリエは首肯する。
「そうですね。取り敢えず、装備品の品質とお値段の現地調査をしたいと思っています」
「なら、最初に四人で探索者ギルドに顔を出そう。そこでギルド職員からお勧めの店なんかを紹介してもらえば、装備品を見に行く先も目途が立ちやすいだろう?」
土地勘がなく工房も多い街のため、その提案に納得して四人は午前中から探索者ギルドに向かうことが決まった。
リエルダの探索者ギルドは、領都バーグラムのギルドよりも規模が大きく、混雑していた。
一階には定番の飲食スペースもあったが、酒は出さない旨の張り紙がチラホラと目に付く。四人は総合カウンターの人の少ない列に並ぶ。どこのギルドでもそうだが、やはり男性職員の列だけ短い。
「おはようございます。本日のご用件はいかがなさいましたか?」
厳つい男性職員が丁寧に対応を始めてくれた。
「おはようございます。黒鉄プレートなんですが、昨日この街に到着したばかりで。ギルドからお勧めの工房や商店など紹介をして貰いたいと思いまして」
代表してエイルが黒鉄プレートを提示し、魔力を流して本人確認をしてみせた。
「なるほど、承知致しました。ギルドと提携のある優良店のご紹介で宜しいでしょうか?」
男性職員からの確認に首肯すると、カウンターから冊子を取り出して開いて見せてくれた。冊子には、店の名前と簡易な地図、店の特徴についての説明書きなどが簡単に記載されている。
「こちら、配布用のご案内書です。制作コストの都合で一部につき小銀貨五枚となりますが、いかがでしょうか?」
有料ではあったが、信頼できる情報料と思えば悪い話ではなかった。エイルはカナリエに振り返り、目線でどうするか訊ねる。カナリエは頷いてみせ、「一部下さい」と男性職員に小銀貨五枚を支払って冊子を入手した。
「最近問題になっている事とか困っている様な討伐案件、何かないですか?盗賊団から大物モンスターまで何でもいいのですが」
マツリが金策になりそうな話を聞いてみる。
「そうですね……。北門から続く街道の山間部で、盗賊被害が増えているそうです。賞金首がいるのではないか、という噂があります。南部の鉱山に棲みついた魔物の駆除などは、既に依頼票が出ていますので、そちらを参照して頂ければ早いかと存じます」
マツリは頷いて礼をする。
「情報ありがとうございます。依頼票はボードの方で確認してみますね」
「という訳で、良さげなお店の情報は得られたけど。ここから別行動かな?」
エイルがカナリエに確認する。カナリエ達には金策も必要だが、先に店を回ってみたいと思っていたので、ここで別行動となった。
「それでは、また夜に」
カナリエとレーヴィアと分かれ、エイルとマツリはギルド内に残った。
「さて、私たちはどうする?とりあえず依頼ボード確認?」
「そうだな。この街の依頼の傾向とかも確認しておきたいし、そうしようか」
二人は掲示板コーナーに進み、端から掲示された依頼を眺めていく。
「工房からの依頼は、やっぱりというか、鉱物資源の納品依頼が多いね」
マツリが依頼票を眺めながらぼやく。
「探し物も悪くはないけど……。やっぱ討伐依頼が良いかな。分かりやすいし(脳筋感)」
「だよねー(脳筋感)」
気付くと儲かりそうな依頼より面白そうな依頼を求めて探し始めていた。
「……ん?あれ、これ……」
依頼ボードの上の方に貼られていた、高難易度表示の依頼をエイルが指さす。
「ん?グレイ・ゴアベルグの狩猟?灰色の体毛に熊のような骨格、狼のような耳と尻尾……ってこれ……」
二人は顔を見合わせると、「「あれか~」」と苦笑する。
「内容的には、素材目当ての死体の納品依頼だね。丁度良いかも」
「そうだな。アレを引き渡してみて、オッケーなら依頼達成だ」
他の依頼票も眺めていると、「鉱山迷宮」という場所指定が目に付いた。
「あれ……。もしかして近くにダンジョンがあるっぽい?」
「ダンジョン!行ってみたい!」
マツリが勢いよく喰いついた。
依頼報告のカウンターに並び、(推定)グレイ・ゴアベルグの納品依頼について相談する。
「すみません、依頼ボードの一番上に貼られていたグレイ・ゴアベルグとかいう魔物の納品に関して相談したいのですが……」
エイルは黒鉄製プレートを取り出し、女性職員に本人認証をしてみせる。
「はい、いかがなさいました?」
「多分これかな?っていう死体もってるので、解体所で確認して貰いたいのですが」
「解体所で確認ですね。承知致しました。すぐにご案内致します」
女性職員はカウンターの奥に引っ込み、先程の男性職員を連れてきた。
「先程はどうも。あちらの奥に裏手に出る通路がありますので、そちらから裏に回って下さい」
と、奥まった通路の方を指さしながら解体所の場所を説明した。
「分かりました、行ってみます」
エイルがその指示に頷き、移動する。指示通りに進むと、奥まった通路の先に、屋外からの明かりが見えて来た。屋外に出ると訓練所が広がっており、その先に解体所が見えてきた。
解体所に向かって歩いていると、後ろから先程の男性職員がやってきた。
「すみません、お待たせしました。解体所に付き添います」
厳つい顔に似合わず物腰が丁寧で、先程の対応を含めて好印象だった。
「対応ありがとうございます。グレイ・ゴアベルグという魔物が手持ちの物なのかハッキリせず、こちらこそすみません。初めてみた魔物だったので、特徴からそうではないかな~と思うのですが……」
解体所まで付くと、取り出すための空きスペースの指示を貰い、マツリが魔法の鞄(のフリをした普通の鞄)から例の巨躯を取り出した。鞄から出すフリをしたのは、高性能な異空間収納持ちである事を少しでも誤魔化すための浅知恵である。
「これは……。失礼、鑑定させて頂きます」
男性職員は骨格や造形から取り出された魔物がグレイ・ゴアベルグだと判断したが、知っている個体に比べて、あまりに大き過ぎた。死体の状態を確認していると、その瞳の色が紅い事に気付いた。通常のグレイ・ゴアベルグは瞳の色が黄色いのだが、この個体は両目が紅い。もしやと思い顎下と右肩を確認していくと、毛並みの奥に予想通りの古傷が見付かった。
「お待たせしました。間違いなくグレイ・ゴアベルグです。なのですが……」
男性職員は困り顔をみせる。
「もしかして、カナデ・カナン王国の東部の森で狩った物だったりしますか?」
マツリとエイルは同時に首肯する。
「良く分かりますね。その通りです」
男性職員は顔を両手で抑えて天を仰ぎ、深く息を吐いた。
「……。探索者ギルドで手配指定されているネームドの個体、【緋眼の轟雷】です」
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