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【完結】方舟の子 ~神代の遺産は今世を謳歌する~  作者: 篠見 雨
第2章 ザハト帝国と鉱山迷宮
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第2章 第2話 箱馬車生活

箱馬車生活一日目。

 ストレイガルの走破力は実に見事だった。速度とスタミナが大きく向上したことで、馬での進行と比べて倍程も進みが早かった。走行中に魔物に襲われる事もなく、野盗にも絡まれずに快適な初日となった。

 夕刻を過ぎた辺りで街道から少し外れた場所に馬車を止め、認識阻害の結界の中で野営の準備を始めた。


「ラムザ、寝るところどうする?」

 マツリが御者台に顔を出して確認する。暗に「【コンテナ・ハウス】使うか?」という意味であった。

「車内のソファで女子三人寝れるよね?今夜はこのままで。アクスとランスは離しておくから、周辺の警戒は任せてみよう。念のため、俺が外で寝る」

 マツリはエイルの言葉に甘える事にして、夕食の用意の方を引き受けた。


 エイルはアクスとランスの馬具を外して水桶を用意し、二頭の首筋を撫でてやる。

「夜の見張りは任せるぞ。何かあったら起こしてくれ」

 二頭はエイルに頭を擦りつけると、水を飲んで周辺の警戒に出て行った。


「(頭が良いとは聞いていたけど。ちゃんと通じてそうだし、想像以上だな……)」


 女子組が夕食の準備をしている間に、エイルは瞑想睡眠で仮眠をとっていた。夕食は野菜と肉がたっぷりのシチューで、ありがたく頂戴した。


 食後、エイルは箱馬車の天井に陣取って周辺の様子を確認していた。

 遠くから獣の鳴き声が聞こえることもあったが、近付いてくる前にアクスとランスが狩ってしまい食料と化す。二頭は馬車から離れすぎる事もなく、指示通り馬車の周辺を警戒している様子をみせていた。周辺に気配がない時には一頭が横になって寝ていたりと、ストレイガル同士で分担が出来ている様子が伺える。

 深夜に探知結界内に魔物の反応が現れたが、寝ていた一頭も起き出し、二頭で狩りに行って仕留めていた。エイルの中のストレイガルの評価が爆上がりしていく初日であった。


箱馬車生活二日目。

 起き出したマツリと交代してエイルが仮眠をとる。その間に朝食の準備が行われ、食事に呼ばれると起き出してトマトベースのスープとパンをご馳走になった。旅の最中に新鮮な野菜や柔らかいパンの食事が摂れるのは、時間経過のない異空間収納様様である。

 食後の片付けが始まったところでアクスとランスを呼ぶと、仕留めた鹿を引き摺りながら戻ってきた。異空間収納に仕舞ってやり、二頭を労う。

「夜の見張りありがとう。獲ってきた鹿は後でオヤツに出してやるからな」

 アクスとランスが嬉しそうに鼻を鳴らした。やはり賢い。

「ラムザ、私が御者台に乗るよ。中で仮眠とって」

 マツリが交代を申出てきたため、ありがたく任せる事にして車内に移る。空いているソファーに腰を掛けると、レーヴィアが話掛けてきた。

「ラムザさん、夜の番ありがとうございました」

「気にしないで。俺はストレイガルの様子見がしたかっただけだし。ソファの寝心地はどうだった?」

エイルはソファーに横になりつつ、毛布を被って寝る体勢になっていた。

「テントと寝袋の生活に戻るのが憂鬱に感じる程快適でした」

 カナリエとレーヴィアの様子を見るに、十分快適に寝れたのだろう。

「それじゃ、今晩も俺が外番に出るから、女子組は車内で寝て良いからね」

「「え?」」

「ん?」

 何か引っ掛かる事を言っただろうか。エイルは首を捻りつつも欠伸を噛み殺せず、目を閉じて瞑想睡眠に入っていった。


「マツリさん」

 車内からレーヴィアに小声で呼ばれ、マツリが振り向いた。

「んー?」

「ラムザさんってもしかして男性ですか?」

「そうだよ?」

「一人称が俺の女子かと思ってました……」

「わかる」


 昼時の休憩で路肩に停車すると、エイルを起こした。エイルは眠そうにしながらもストレイガルに水桶を与えつつ、馬具を外して離してやる。

 給水に満足したアクスとランスは、森の方を見やって耳をピクピクさせていた。

「気になる獲物でもいるのか?遊びに行っていいぞ」

 と許可を出すと、ちらりとエイルを振り返り頭を一擦りさせてから、軽い足取りで出かけて行った。


「(うちの子達、頭良すぎない?それともこれがストレイガルの標準なの?)」

 エイルは二頭が走っていくのを頬を緩めて見送った。

昼食はパンに切れ目を入れて肉と野菜を挟んだ物を用意した。

「昨日から気になってたんですけど……。温かい食べ物とか柔らかいパンとか、普通の魔法の鞄じゃないですよね?」

 カナリエが手に持ったパンを見ながら、マツリに聞いてみた。

「そうだよ。だから秘密にしてね」

 マツリが悪い顔でカナリエに口止めをする。

「はい、口外しません!」

 カナリエが口元を引き攣らせながら全力で頷いていた。


 昼食後、アクスとランスが戻って来るのを待っていると、森から二頭が駆け出てきた。二頭は後ろを振り返りつつ、馬車に向かって来ている。

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