表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】方舟の子 ~神代の遺産は今世を謳歌する~  作者: 篠見 雨
第6章 エル・ラギア連邦国とクラン【武器庫】
146/270

第6章 第19話 悪魔族と闘技場

迷宮百五十階層。

 とうとう最前線まで追い付いた。この階層を探索階層記録ダンジョンログプレートに記録出来れば今回の目的は完遂である。


 百五十階層は上級アーク悪魔族デーモンがゴロゴロ住んでいる。ここが魔界ですか?というくらいに沢山いる。上級アーク悪魔族デーモンがゴロゴロいるなんて普通で考えれば悪夢のエリアであるが、≪黒絹≫にとっては最早餌場である。妖刀・妖鎧の類を腹一杯食わせてやれる丁度良い狩場であった。

 調伏未完了の妖刀の類で戦い続ける。二体同時、三体同時の戦いを続けながら正規ルートを突き進む。ここまできてエイルが傍観者側になる必要はないし、青藍セイラン雷閃ライセンも蒼い狐火や雷撃を撃ち込みまくっている。


 そして正規ルートを抜けてボス部屋の両開きの大扉に辿り着いた。


「えーと、たしか此処の敵って?」

魔将ジェネラル級の悪魔族デーモンだったよね?」

 エイルの確認にヒイロが答える。トーコも頷いている。


「あれかー、トラウマ克服チャレンジ、がんばるか……」

 エイルが肩を落として憂鬱そうにする。

 【百竜百魔の岩戸】で老竜エルダー・ドラゴンとの死闘が終わった直後に乱入してきた魔将ジェネラル悪魔族(デーモン)はエイルにとってのトラウマであった。やっと終わった死闘に元気な魔将ジェネラル悪魔族(デーモン)の乱入で戦線が崩壊し、転移トラップを利用した囮作戦で部隊から引き剥がし、かつ未発見だった強制転移トラップによって起こる空間切断で倒した相手である。その際にエイル自身も死に掛け、到着先がマザーの船で無かったら確実に死んでいたという、とても因縁の深い相手だ。

「あの時とは状況が違うし。大丈夫、大丈夫」

 ヒイロが呑気とも言える調子で言う。

「あの頃より私もヒイロも強くなっているし、マツリとラクスとアーシェも居るのよ?」

 トーコがエイルの肩を揉みながら言う。これは肩に力が入っているぞって意味だ。エイルは深く深呼吸しながら全身を脱力させ、肩以外にも力んでいた筋肉を解していく。

「そうだな、継戦能力がなくなるまで消耗した後の奇襲じゃないんだ。状況が違うよな」

 エイルが深く頷き、集中力を高めていく。


「よし、それじゃ行きますか!」

 エイルが自分の両頬を叩いて気合を入れ、両開きの大扉を開いていく。


 ボス部屋の中は闘技場のような作りになっていた。観客席にはだれも姿はなく、ぽっかりと空いた入場口だけが見えている。エイル達が歩みを進めて闘技場の舞台に着くと、相手側の入場口から身の丈四メル程の魔将ジェネラル悪魔族(デーモン)が現れた。

 その手には人間が扱えば両手持ちであろう巨大さの剣が二本ある。左右の手にそれぞれ剣を持つ、二刀流であった。


 青黒い外殻に赤い鱗が混ざり、深紅の角が二本、斜め上へと突き上げるように生えていた。

以前に戦った魔将ジェネラル悪魔族(デーモン)とはまた見た目が違う気がするが、角の生え方以外の間違い探しが出来る程には覚えていなかった。


 魔将ジェネラル悪魔族(デーモン)が両手に持った巨剣を構え、殺気を込めた雄叫び(ウォー・クライ)を上げる。

 その戦意がビリビリとした空気の振動となって伝わってくる。


 目的は魔将ジェネラル悪魔族(デーモン)の撃破。決闘ではないのだ。場の演出に呑まれてはいけない。

 

 駆け寄って来る魔将ジェネラル悪魔族(デーモン)に対し、後衛への壁となるように前衛三名が前へと打って出る。トーコから土行と水行の混合魔法が放たれ、魔将ジェネラル悪魔族(デーモン)の足元が深い沼地へと変化し、その足をとる。本来相剋してしまう組み合わせをこうも上手く同居させられるのが、エイルをして大陸最強と目する妙技であった。


 一瞬で腰まで泥沼に取られ、魔将ジェネラル悪魔族(デーモン)の進撃が止まる。魔将ジェネラル悪魔族(デーモン)は泥沼の重たさに業を煮やし、木行の【樹成】で水行の魔力を吸い上げて水気を飛ばしつつ、木行の魔力が土行の粒化した魔力を相剋していく。その身体を【樹成】で持ち上げ立て直した魔将ジェネラル悪魔族(デーモン)の眼前に、エイル達が迫る。

 二刀流を左右に振り被り別々の標的を同時に刈り取ろうとする瞬間を狙い、アーシェスの【閃光】が魔将ジェネラル悪魔族(デーモン)の視界を一瞬焼いて奪う。

 その隙にマツリとヒイロが左右に散り、剣戟から間合いをとって大身槍を取り出し、それぞれに魔将ジェネラル悪魔族(デーモン)に突き込む。エイルは低く前転するように足元へ潜り込むと、両脚の付け根の腱を一瞬で左右に一発ずつ斬りつけた。下半身の踏ん張りが一瞬抜けて魔将ジェネラル悪魔族(デーモン)のバランスが崩れるが、その腱と大動脈を断った刀傷は一瞬で修復されてしまう。

 しかしその僅かな間は確かな隙となって、雷閃ライセンの木行の雷撃が魔将ジェネラル悪魔族(デーモン)を撃ち、青藍セイランの蒼い狐火が相生されて燃え盛る。

 ラクスレーヴェがその相生の流れを止める事開く砂礫嵐で魔将ジェネラル悪魔族(デーモン)の全身を打ち据え、火の魔力を吸い上げた相生が石礫嵐へと変化する。トーコがその流れを利用して【斬糸】に錬気を乗せて放ち相生することで魔将ジェネラル悪魔族(デーモン)の全身を拘束する。


 足元から背後に抜けていたエイルが振り向きざまに魔将ジェネラル悪魔族(デーモン)の脊椎目掛けて鬼首落おにくびおとしを叩き込み、横方向への重力を込められ重化した刃を喰い込ませたまま手放し、再生を阻害する。

 魔将ジェネラル悪魔族(デーモン)は全身を縛る【斬糸】を排除するべく、自分を中心にして【獄炎】で【斬糸】を焼き払うと、脊椎に喰い込んだ鬼首落おにくびおとしにより下半身の自由が利かなくなっていて、俯せに倒れた。


 エイルが新たに重大剣を取り出して背中に刃先を突き刺し、爆発的に重化させる。錬気で鋭さを増した重大剣が超重量と化して魔将ジェネラル悪魔族(デーモン)の背中から床へと貫き縫い止める。魔将ジェネラル悪魔族(デーモン)が青い吐血をしつつなお抗うが、床に俯せで縫い止められた状態ではまともな抵抗が出来ず、マツリとヒイロが大戦斧グレートアクスを頸部に繰り返し振り下ろして、その首を切断させた。マツリが死を確認するべく異空間収納を使い、魔将ジェネラル悪魔族(デーモン)の死骸が収納されて消えた。


「はぁ~、トラウマ突破か……」

  先程までバクバク言っていた心臓が漸く落ち着きを取り戻しはじめ、エイルがボソリと呟いた。

魔将ジェネラル悪魔族(デーモン)を完封って私たち凄くない?」

 ヒイロが横ピースをキメながらエイルを振り返り、エイルの緊張を更に弛緩させた。


「あの時は三パーティ合同で老竜エルダー・ドラゴンと戦った直後だったけど、今のパーティならこのパーティだけで老竜エルダー・ドラゴンを倒して更に連戦でも凌げそうじゃない?」

 ヒイロは心からそう思って言い重ねる。トーコもその言葉に頷いて返す。

「いけるだろうね。このパーティはあの頃の三パーティの総力より強い」

 そう言われればエイルも頷いて返す。個々人の戦力が段違いに上がっている。装備もあの頃よりずっと良いし、連携も上手くいっている。錬気を身に着けた結果、あの頃の老竜エルダー・ドラゴンさえ事もなく倒しきれると確信した。


「うし、それじゃ探索階層記録ダンジョンログプレート出して帰還するか。ドラゴンステーキ食べようぜ」


 エイルが景気付けにドラゴンステーキを提案すると、皆の頬が緩む。雷閃ライセン青藍セイランすらエイルを見上げて涎を垂らす。また食べて良いの?食べて良いの?という心の声が念話のように伝わってくるので、

「お前たちも一緒に食べよう?」

 と言ってやると、青藍セイランが嬉しそうに尻尾をガン振りしていた。雷閃ライセンも尻尾をピンと立てて小刻みに震わせ、興奮を隠せずにいる。


「食いしん坊どもめ、今日は贅沢しちゃおうぜ!」


 帰還後の食事に思いを馳せながら探索階層記録ダンジョンログプレートの用意を確認して帰還陣にて迷宮入り口に戻るのであった。

評価、ブックマーク登録、いいね などの応援をお願いします。

モチベーションや継続力に直結しますので、何卒よろしくお願いいたします。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ