第4章 第18話 ヴァルナガルナの迷宮通い(7)
迷宮六十二階層。
平原と山の自然豊かなフロアを抜けると、再び迷路状のフロアだった。正規ルート上を進んでいくと武装した大食鬼の集団が通路を埋め尽くす様に詰まっていた。
エイルが龍閃を抜刀して駆けていく。
一刀振らば首が落ち、二刀振らば脚が落ちて首が飛ぶ。大食鬼が着込んだ甲冑など意味が無いと言わんばかりに、首が、胴が、腕が、脚が刎ね飛ばされていく。疲労感や魔力不足を感じると紅雀と青墨鴉に切り替え、敵を裂き、貫いて行く。十分に回復が済むと再び龍閃を振って次々と屠っていく。
大食鬼はタダさえ分厚い脂肪と筋肉に覆われ致命傷を与えにくく、そのくせ強烈な自己治癒能力を持っている倒し辛い敵だ。その上甲冑まで着込んでいる大食鬼を、雑魚狩りでもするかのように屠っていく。
エイルが積み上げていく屍山血河を女子三人が回収しながら付いていき、気が付いた時には下り階段部屋へと辿り着いていた。
迷宮六十三層。
【ボックス・トイレ】でトイレ休憩を済ませると、六十三層に降りていく。六十三層は磯浜が広がっていた。岩場で出来た足場は歩くのにも気を遣う。そこに、海中から魚人が次々に海から現れ、岩場での戦闘が始まってしまう。龍閃で魚人を斬ってみるが、お気に召さないような反応しか返ってこない。仕方なしにエイルは紅雀と青墨鴉を抜いて延々と魚人を斬り捨てていく。
エイルから遠回りして背後の女子三人に近付こうとする者もいたが、それはそれで女子達に殲滅されていく。
「足場ってさー。切り立った岩場と魚人の死骸の山、どっちがマシだと思う?」
マツリが二人に振り返りながら訊いてみる。
「魚人はヌルってして滑りそうなので、岩場の方がマシな気がします」
アーシェが真剣に回答をしてくれた。マツリもそれなら死骸は回収しておくかと、エイルの周囲を優先して魚人の死骸を回収していく。
何匹の魚人を斬ったか分からないが、襲撃が疎らになってきたところで一段と巨大な、鮫型の魚人が現れた。
エイルは笑顔を浮かべ、改めて龍閃を抜刀する。龍閃からアイツを斬らせろという欲求をぶつけられ、気が昂っていく。
エイルは足場が比較的マシな場所に移動すると、鮫型がやって来るのを待つ。鮫型は如何にも獰猛な大口を開けつつ、エイル目指して大股で歩いてきた。意外と陸上での動きは苦手なのかもしれない。鮫型が間合いに入ると袈裟斬りにその頭を狙うが、その牙でがっちりと咥え込んできた。断ち斬った牙はすぐに抜け落ち、その代わりの新しい牙が奥から押し出されるように生えて来る。木行の雷を龍閃に流し込むと鮫型は龍閃を吐き出して数歩下がった。すかさず後方から【火葬】の援護が入り、相生を起こして鮫型へのダメージを加える。エイルは火葬がかき消える前にと鮫型に飛び掛かり、喉元へ龍閃の月白の刃を突き込み、傷口に相性する土行の気を込めて【岩槍】を放ち、内部からの破壊を試みる。魚人生来の水属性を体内から【岩槍】で相剋していくと、脳を破壊したのか鮫型が崩れ落ちた。寄って来たマツリが、さっと異空間収納に収めてしまう。
「魚人の波はとりあえず収まったみたいだけど。マップだと下り階段はどこなのさ?」
マツリがエイルに下り階段の在り処を訊ねる。
エイルは龍閃を異空間収納に収めてマップを取り出し確認をすると、百メル程沖合にある鳥居の先の島にある事になっている。
「えー……泳ぐの?」
嫌そうにマツリが言うのでエイルは肩を竦めつつ、もしかしたらと心当たりを返す。
「見た目通り海の性質を持っているなら、引き潮になれば道がつながるかもね?」
エイルは東方諸島群にそういう神社があった事を思い出してい言う。
「あー、そういうの?とりあえず待ってみますか」
岩場から離れて平らな地面を見付けると、そこにテーブルと椅子を出して食事を取りながら待つ事にした。
岩場の方は先程までより水位が上っている。満ち潮があるなら引き潮も来るはずだ。エイル達はうとうととしつつ待っていると、水位が下がり始めて岩場から鳥居までの道が現れ始めた。
「起きろ、道が現れてきた」
エイルがマツリを起こすと、机と椅子を片付けて現れた道を目指す。鳥居を潜って島に辿り着くと、小屋のような建物の中に下り階段があった。
一行は下り階段があった事に安堵しつつ、下り階段を降りて行った。
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