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【完結】方舟の子 ~神代の遺産は今世を謳歌する~  作者: 篠見 雨
第4章 聖ペトログリフ王国とユーラビスタ帝国
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第4章 第16話 ヴァルナガルナの迷宮通い(6) 帰還

 女子三人の目が覚めると動き回る大鎧が居た。

「お、ラクスも起きたか。おはよう」

「……・。エイル先生ですか?おはようございます」

 既にマツリとアーシェスは起きていた。


「背中の武器が増えてますね?」

 ラクスがとりあえずの感想を述べる。

「あぁ、何か調伏した妖刀の類は従える事が出来るらしい」

妖鎧あやかしよろいとでも言うのかしら?それとも妖鎧ようがい?素直に魔鎧まがいでも良いと思うけど」

 マツリはエイルの様子を眺めている。

妖鎧あやかしよろいの方が語感が良いからそれにしよう。魔鎧には意思なんて無いしな」

 意思と訊いてマツリは眉間に皺を寄せて文句をいう。

「皆で倒したのになんでエイルにだけ懐いてるのそのクソ鎧。私の異空間収納を拒絶するとか生意気なんですけど」

 そう言われてもエイルにも良く分からない。

「妖刀もそうだけど、なんとなく意思が伝わって来るんだけどさ。紅雀べにすずめ青墨鴉あおずみがらすみたいに完全に調伏が完了したのか、あんまり自己主張が無いんだよね。この鎧」

 アーシェスがそれを訊いてエイルに問う。

龍閃りゅうぜん魂祓い(たまばらい)はじゃじゃ馬で調伏が大変とかいってましたね?」

魂祓い(たまばらい)はまだ試してないから良くわからんが、龍閃りゅうぜんは大物喰いしたがるね。強い敵を斬りたくてたまらない、みたいなのが伝わって来る」

「あぶないですね?」

 エイルがからりと笑う。

「確かにあぶない。調伏が終わっていないからか、魔力と体力を普段以上に吸い上げやがるみたいでさ。気付くと結構、魔力と体力の限界が近かったりして焦る。紅雀べにすずめ青墨鴉あおずみがらすがあってホントに良かったよ。無かったら龍閃りゅうぜんに喰い殺されてるかも」


「それで?その鎧自体の性能はどんな感じなの?調伏した武器が下僕になりますってだけじゃないんでしょ?」

 マツリが確認できた情報の共有を求める。

「【自動サイズ調整】と【血払い】と【洗浄】は確定。戦闘中に付けた傷が直ってるから、多分【自動修復】も付いてる。あとは要検証かな?」

 マツリが顎に手を当てつつ考える。

「そんなの殆どマザーの装備クラスじゃない……・」


 その他の負荷効果次第では、マザーの装備を越えるかもしれない。そんなものが地上で生まれたのか、それとも七千年前に地上に持ってこられたマザーの装備なのか。


「こんなのがマザー以外で見付かるなら、地上でもう少し武器や防具も見て回った方が良いかもしれないわね?真贋の見分けとか能力を見分けるとか出来ないけど。ホントなんで鑑定ないのよ……」

 マツリが地上製の装備も一考に値すると考えを改めはじめていた。


「とりあえず迷宮六十階層のボス戦いってみますか」

 エイルが休憩の片付けをしながらそう言った。



迷宮六十階層、ボス戦。

 

 ボス部屋に入ると、これまでより天井が高くなっていた。奥行きも横幅も大分広い。そして遮蔽物がない。待っていたボスは橙色の巨体を持つドラゴンだった。


 そのドラゴンは部屋の奥で横になって丸まった状態から鎌首をもたげ、エイルら一行を観察するように視ている。

 その目は深い知性の光を宿しており、ここまでの魔物とは一線を画す堂々とした佇まいだった。



「あのドラゴン、すごい理性的な瞳をしてますね」

 ラクスレーヴェがそう評した通り、他のメンバーも同意見だった。

「戦わず通してもらえないか訊いてみるか」

 エイルがそう言って一歩前に出る。


「橙色の美しい鱗を持つドラゴン殿よ!お初にお目にかかる!我々は貴方の後ろにある部屋に行きたい!どうか通してはもらえないだろうか!」


 完全に人間語である。竜語ドラゴン・ロアは喋れないので仕方がないのだが。先ずは大きな声で挨拶をしてみて、その反応の様子をみるつもりだった。

『人間と会話をするのは何時振りだろうか。小さき者達よ、何故我に声を掛けようと考えたのだ?』

 音ではない、念波で伝わって来る声だ。彼または彼女にはこちらの声が届いている。

「以前に人語を理解するドラゴンと会ったことがある!貴方の理性的な瞳はその竜の様だったからだ!」

 エイルがそう答えると、再び念波が響く。

『なるほど、人語を解する同胞か。古き者であろう。殺したのか?』

 竜がエイルを見つめながら訊く。

「いや、戦わなかった!人間側の事情を説明し、理解を示してくれたドラゴン殿が要望に答え、転居を決めてくれたからだ!」

 エイルがそのドラゴンとの間にあった事を話す。

『そうか。小さき者よ、ここを通りたいだけか?』

 エイルが首を傾げる。

「貴方と戦わずそこを通して貰えれば、それ以上は求めるつもりはない。何か可笑しいだろうか?」

『爪や牙、鱗などを寄越せと言うものかと思ったのだがな』

 ドラゴンはエイルを見つめ、その真意を測ろうとする。

「あいにく武装は足りていて、敢えて欲しがる程の理由がない」

 エイルはドラゴンの目を見ながらハッキリとそう答える。

 ドラゴンはその回答に真実を見出したのか、のそりと場所を移動する。

『小さき者よ、その言葉に嘘がないことを確認した。好きに通るが良い』

 ドラゴンは背後にあった扉が見える程に離れると、また横になった。


「(審理の魔眼かそれに類するものか?まぁ真実を話しているのだから問題はないが)」

 エイル達一向はドラゴンに例を良い、扉を潜って奥へと消えて行った。


◆◆◆◆


 エイルは下り階段の部屋に辿り着くと、深く息を吐いた。

「戦わず、ただ話をして通して貰えれば良いだけの部屋だったんだな」

 エイルの言葉を切欠にアーシェスやラクスレーヴェがようやく緩んだ。

「緊張しました」

「私もです……」

 対して、マツリはいつも通りな感じだ。

「エイルは顔広いんだねぇ」

 などと、変なところに感心している。


「転移陣の部屋は……こっちか」

 エイルは部屋を眺めて確認すると、転移陣の部屋に移動する。

「皆、探索階層記録ダンジョンログプレート用意して」

 エイルが異空間収納から探索階層記録ダンジョンログプレートを取り出した。

 マツリら三人も探索階層記録ダンジョンログプレートを取り出してみせる。

「よし、それじゃ腹も減ったしキリも良いし、ここで帰還しよう」


 エイルが転移陣に魔力を込めると、僅かな浮遊感と共にダンジョン入口の広場に転移が完了していた。

 四人は帰還時の手続きを帳簿に記入して宿に帰っていった。

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