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信じる

「ホワイト……何かあったか」

 全ての授業を終えて部屋に戻った私を見るなり、ブラックが尋ねてきた。一瞬、私が彼について色々な人に聞いて回ったのがバレたのかと思ったが、彼のことを好ましく思っていないあの生徒たちがそれを教えるなどというのも考えづらかった。それに何より、ブラックの表情は純粋に、私の顔色が優れないことへの心配を表していた。

「大丈夫だよ。ただちょっと疲れただけ」

「そうか、ならいいんだが……」

 それでもなお気がかりそうに私を見つめていたブラックは、「ああそうだ」と手を叩いた。

「疲れてるならマッサージしてやろうか。肩とか手とか」

「マッサージ……」

 それじゃあお願いしようかな、と言おうとしたとき、昼間聴いた話を思い出してしまった。

 好き同士になれば手を繋いだり……。

「やっ、いや、いいよ、大丈夫! ちょっとストレッチすれば問題ないから」

 顔が赤くなっていないか心配で、私は思い切り首を振りながら自分の机に向かった。

「そうか? 元気ならいいんだが」

「う、うん、心配してくれてありがとう」

 私は何をこんなに動転しているのだろう。自分で自分の制御ができない。対してブラックはいつものように落ち着いて、様子がおかしいであろう私にも、いつものように話しかけて気にかけてくれている。

 ……決まりだ。

 こんなに気遣って優しく接してくれるブラックのことを、他の誰も知らないのに違いない。噂というのは往々にして、ひとり歩きしていくものだ。きっと今日聴いた話の数々も、ブラックのことを快く思わない何者かが作った出鱈目に決まってる。

 私は、私の知っているブラックを信じよう。

「ブラック」

 振り返って、自分の椅子に座った彼に話しかける。ブラックは首を傾けてこちらを見た。

「マッサージ、また今度お願いするね」

 彼は笑った。きっと、私以外の殆ど誰も知らない顔だ。

「ああ、また今度、必ず」

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