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ヒーローは絶対に泣かない17

ここ数日は影光と会う時間がなかった。


「玲奈どうしたの?顔死んでるよ」


クラスで一番話す友達が心配してくれる。


髪を2つに大きなリボンのついた髪ゴムで止めている。名前は……………りぼんちゃんとでも呼んであげればいいかな。


「なんで家庭科部は昼休みの活動が多いの!」


「その代わり放課後の活動は少ないんだからいいじゃない」


「よくない!このままじゃ影光成分がたらなくなる……」


「相変わらず伏見くんのこと好きすぎじゃない?そんなに会いたいならまだ昼休みあるんだし会ってくればいいじゃん」


「さっき教室行ったけどいなかったの」


最近の影光はすぐどこかに行くんだから。


「私は玲奈にはもっといい人いると思うけどなー」


「いいひとって……。別に影光を彼氏にしたいとかそんなんじゃないし」


「そんなに好き好きオーラ出してて付き合いたいわけじゃないって、逆に驚きなんだけど……。だいたい玲奈は伏見くん以外が見えてなさすぎだよ。私の名前もまだ覚えられてないし〜」


リボンちゃんは(泣)の顔文字のような顔をする。


「じゃーさ、玲奈は伏見くんに彼女ができても平気なの?」


「あったりまえでしょ。それで影光が幸せならいいよー」


「面白い話をしているな」


突然、私とリボンちゃんの間にスタイルのいい、黒髪長髪の生徒が現れた。髪を黄色のリボンで編んである。


「せ、せ、せ、生徒会長!!!!


リボンちゃんが今日一番の大声で叫ぶ。色は違うけど同じくリボンつけてるから仲間とでも思ったかな。


「で、あなた誰?」


「な、何言ってるの玲奈。この人は生徒会長の北見陽海先輩だよ」


生徒会長……?たしかにこんな人だった気がする。それにしてもこのキリッとしたつり上がった目、どこかで見た気がする。


「てっきり、君は影光くんのこと好きだと思っていたのだけど、思い過ごしだったようだ」


なんで私が影光のことを好きだって思ったんだろう。そもそもこの人影光のこと知っているのか。


「私たちどこか出会いましたっけ?」


「会ってはない。だが、君が熱心に選択教室のドアにひっついて、盗み聞きしてるところは見たかな」


私が月里?とかいう人に怒った日のことだ。


リボンちゃんも「あんた何してたの?」と言われてしまう。


そういえば月里とかいう人も目がツリ目だった気がする。


「誤解があるようなので言っときますけど、私はこの世界で一番、影光のことを好きですよ。愛してるとも言っていい」


「でも、付き合いたいわけじゃないのであろう」


会長さんは挑発混じりに発言する。


「できることなら付き合いたいです。でも、それを選ぶのは影光だから。影光が選んだ人なら全力で応援します。私は少しだけ影光の近くにいさせてくれればいい」


「ふーん、それが影光くんに対する気持ちだと」


「そうよ、好きな人の幸せを願うのが本物の愛でしょ」


「そうかな?愛とは無関心以外のすべての感情だよ。嫉妬したり、相手を独占したり、もしかしたら好きが故に憎むことであろう。そういった感情を一人の人に抱けたらそれが本物ではないか」


なにそれ?意味わかんない。


「そんなややこしいものでも、自分勝手なものじゃないよ」


「相手だけが幸せになればいいなんて、歯ざわりのいいものではないよ。見返りを求めない愛情なんてないんだよ」


そんなことない。少なくとも影光は、そうだ。いつも人のことばかり考えて、得にもならないことばかりして


「あの〜『本物の愛とか』そんなこそばゆい話、教室の真ん中でやめませんか」


リボンちゃんはそう言いながら顔を真っ赤にしている。


教室を見渡すと、随分と観客が増えていたみたいだ。


「愛が何だとか」「もしかして痴情のもつれ」「会長と美園さんが一人の男を取り合って」「美園さんも可愛いけど、会長が相手じゃね」


ヒソヒソと静かに騒ぎだすクラスにいやいや呆れ、ついため息をついてしまう。


「悪目立ちしてしまったかな?そろそろ午後の授業が始まる。私は失礼するよ」


そう言って、会長は凛々しく教室をあとにする。


皆の視線が会長に釘付けだ。


あのカリスマ性はさすが生徒会長だと思う。


ふとリボンちゃんを見ると、今だに顔を両手で隠して、頬を赤く染めている。


「なんであなたが恥ずかしがるのよ。恥ずかしいこと言ってたのは私と会長でしょ」


「あの場にいたら、私も仲間だよ。高校生にもなって愛だの恋だの言う頭お花畑美少女女子高校生って言われちゃう」


自分自身のことを美少女というのは、随分と肝が太い人だと思った。


「今、失礼なこと考えたでしょ」


「何も」


「どうせ私は自分のこと美少女とか言っちゃう、頭おかしいやつですよ」


わかってんじゃん。内心ではそう思ったがあえて言わないでおいた。


「あっ、先生きちゃったね」


教室の前の扉から国語の先生が入ってくる。


「5時間目って国語かー。授業眠くなるやつだー」


「まー、課題とかしっかりできてれば授業は寝てていいんじゃない?」


「え?課題とかあったっけ?」


「今日提出のプリントあるよ」


「まじ?あのプリント今日提出なの?」


リボンちゃんはひえーと言いながら自分の席に戻っていった。


さて、課題を完璧に終わらせた私は、寝るとしよう。昨日も影光とのデートプランを妄想……考えていたら寝るの遅くなっちゃったし。睡眠不足は美容の大敵だからね。


それにしても会長はずいぶんと変な人だったな。教室の真中で愛だとか幸せだとか恥ずかしいことを(人のことは言えないかもしれないけど)。


愛は無関心以外のすべての感情だっけ?


意味わかんない。


私が愛情に言葉をつけるなら、もっと明るくて甘くて綺麗で、それはそれは丁寧に削られた宝石のように輝いているはずだもの。


だから私は正しいはず、好きな人のためには可愛くなれるし、努力ができるし、何より幸せになってほしいって思うのは当たり前のことでしょ。


私の影光への想いは、ずっとずっと変わらない。


子供のときからずっと……。


国語の教師の朗読が、心地よい眠気を誘い。


同時に昔の記憶が呼び起こされる。


そう、私と影光の出会った頃に……。

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