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ヒーローは絶対に泣かない12

「ぎゃ?逆ストーカー?」


新しくできた単語に高身長メガネは目を丸くしている。


「おい!捕まえたのか?」


呼ばれて振り返ると、白石とその彼女が俺たちと合流していた。


「お前がストーカーだったのか」


そう言い白石は高身長メガネを睨む。


白石、"逆"をつけ忘れているぞ。お前が作った単語なんだから本人がたくさん使わないと、いけないのではないか。


「だ、誰がストーカーだ!しょ、証拠はあるのか!」


だいたいそういうこと言うやつは犯人だと思う。


それに証拠かわからないが、怪しいとこはある。


「そのエナメルバッグ何が入っているんですか」


「な、なぜお前らに見せなければいけないんだ」


「あなた運動部じゃないですよね」


運動部でないのにエナメルバッグなんて大きなかばんを持っている人は珍しい。


「は?俺は運動部だし、今日だって」


「運動部帰りの人が、学ランをそんなにしっかり着てますかね。あと、先ほど生徒会の仕事をしてたと言ってませんでした」


高身長メガネは、グーの音もでない表情になる。


白石がここぞとばかりにエナメルバッグを奪おうとする。


「その中何が入ってるんだ」


高身長メガネは、焦っていたのだろう。後ろに逃げればいいものの。俺らを突破しようと、一番力の弱そうな付きさとめがけて走ってきた。


まったく、仕方がない。


「え?」


高身長メガネはひらがな一文字吐いてから、2文字目が出る間に背中からコンクリートへダイブした。


「不思議くん何あれ!!背負投げ!!すげー」


「影光くんにこんな特技があったのね」


月里と白石が驚いているが、なんてことはない。ただ中学のとき柔道部だっただけだ。


「遼、どうしたの?突然走り出して」


後ろから白石の彼女と思われる人がやってくる。


遼は白石のことか、一瞬下の名前を思い出せなかったぜ。


「何こいつ?」


白石の彼女が、高身長メガネを指差す。


投げられた拍子にカバンから中身が飛び出している。その中には写真とカメラがあった。


「なにこれ?私の写真」


白石の彼女がぼそっと呟く。


「舞桜言ってたじゃん。最近、ストーカーがいるって。その犯人見つけてもらうために友達に頼んでたんだよ」


そう言って、白石は俺の肩に腕を乗せる。


舞桜とは白石の彼女のことらしい。


俺らいつから友達になったのだろうか。友達ならそろそろ名前を覚えてほしい。


「観念しろよ。証拠もあることだしな。生徒会に持ってってもいいんだぜ」


「あっ、でも、この人も生徒会の人らしい」


ホントかどうかは知らないけどね。


「はっ?そんなわけねーじゃん」


違うんかーい。


「こいつ一年だろ。一年は生徒会役員にはなれない」


初めて知りました。


「で、どうしてこんなバカな真似したんだ」


白石が問い詰める。高身長メガネは視線をウロウロさせ、俺と目が合う。どんな表情をしていいのか分からず、とりあえず首を傾げた。


「なんかこいつすごい怯えてるね」


「俺の凄さにビビってんだよ。さっきも華麗に背負投してやったしな」


「えー、カッコいいー」


いつの間にか背負投を持っていかれた!別にいいけど……。というか、勘違いでなければ俺にビビってるんだよね?そんなに痛かったかな?


「最悪だ……なんでお前が白石の仲間なんだよ…」


お前って俺のこと?あれ?お知り合いでしたってけ?


「お前、伏見影光だろ。噂を聞いたぞ。彼女のためなら暴力だって振るう。デートのためにカツアゲをする。最低のやつだって」


何を逝っているんだこいつは?この彼女いない歴=年齢の俺に彼女だと?


「お前そんなことしてたの?」


白石が意外そうな目でこっちを見る。


「彼女なんていたことないわ」


なんてひどい噂だ。白石や月里が知らないところを見ると、そこまで広まってないようだ。何よりの救い。


「だいたい噂になるほど彼女いるように見えるかな」


「何言ってるんだよ。隣にいるだろ」


高身長メガネが月里を指さす。


「えっ?私?」


確かに最近、一緒にいることが多いけど、噂になるまでとは


「ねー、舞桜ちゃん。こんな怖い人に騙されちゃってるんでしょ。僕のところにおいで、ね」


高身長メガネはそういって、白石の彼女に手を伸ばす。


「はっ?きもい。二度と私に顔見せないで」


白石の彼女、バッサリ言うんだな。その言葉でエンジンが入った白石がとどめをさす。


「次に舞桜に変なことしたらゼッテー許さねーからな」


白石が指をパキパキ鳴らしながら言うと、高身長メガネは、ひーってダサい悲鳴をあげながら逃げ去ってしまった。


「いや〜ありがとな二人ともストーカー捕まえるの手伝ってくれて」


「いえいえ」


白石の礼にテキトウに返事をする。


「遼の友達ね。今まで見たことないけど」


白石の彼女が、疑り深い目で見る。


俺たちの何を疑うところがあるのでしょう。


束縛系の彼女なんですかね。


「最近、友達になったんだ。こっちが月里さんで、こっちが不思議くんだ」


おい、そろそろ殴るぞ。


「月里……、もしかして生徒会長の妹の北見月里?」


白石の彼女がそう言うと、隣の白石が「えー!!」と鼓膜が破けるほどの大声をあげる。


「月里さん、会長の妹だったの!!!感激!!そんな人とお知り合いになれるなんて」


白石は月里のもとへ行くと、勝手に握手をしブンブンと振り回す。


「感動だよー。俺、会長の大ファンなんだ!!!」


白石よ感動するのは勝手だが、君の彼女さんほっぺが風船のように膨らんでいるよ。


「もういいよ!遼!早く帰ろ!」


「ちょ、引っ張んなよ舞桜」


彼女に引っ張られ白石は行ってしまった。


………


「嵐のようだったわ」


それは白石のことだろうか、彼女のことだろうか。


それとも両方なのか。


「それにしても何か腑に落ちないね」


月里の言うとおりであった。


「あれは"逆ストーカー"ではなかったわ。ちゃんとしたストーカーだったわ」


発言はとてもふざけているように聞こえるが、そのとおりだ。


「あれはどう見ても白石の彼女のストーカーだよな」


「そうよね。私はてっきり白石くんが被害を受けてるのかと思った」


同感だ。白石がイケメン過ぎて妬まれて、意地悪をするやつがいる。そういう話だと思ったんだが…


「私たち?騙された?」


「騙されたのか?」


騙されたにしては、こっちに損があるわけでもない。あっちに得があるわけでもないだろう。


なんだか、モヤモヤとした空気だけが残ってしまった。


「でも、これで解決なのよね」


「そうだね。解決だね」


「呆気ないからモヤモヤするのかしら」


「きっとそうに違いないね」


思ってないことを言った。月里もきっとそうだろう。でも、この場を収めるために、出題されてすらいないクイズに決着をつけたかった。

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