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第61話:剣術と魔法のコラボその2

「マジでケガ人だらけやないけ。どーなってんだ?」


 ほんとにマジで何でだろう?

 死屍累々だとまでは言わないけど、多かれ少なかれ全員がケガしてるんじゃないの?

 剣術クラブの部長さんが言う。


「これくらいはケガの内に入らんのだ」

「セリフが武人だね。面倒だから皆いっぺんに癒しかけるぞー。集まってー。リカバー!」

「すげえ、治った!」

「ありがたやありがたや!」

「ハッハッハッ、感謝するがよい!」


 クインシー殿下が不満そう。


「聖女様、ボク達が回復魔法かけるんじゃなかったんですか?」

「そのつもりだったけど、あまりにもケガ人多かったから面倒になっちゃった。何か古傷で困ってる人いる?」


 あ、何人か挙手している。


「以前骨折した腕が痛むことがあるんだ」

「んー、左腕の肘より先だね? オーケー、これ皆で治そう」

「もう一度折ってくっつけ直すのか?」

「え?」


 ダドリーに難癖付けられた時、確かにそう言ってた。

 脅しだろうとは思ったけど、本気が入ってたような気もする。


「やだなー、あれは冗談だぞ? 曲がってくっついちゃってる時はそうせざるを得ないこともあるけど」


 そういう治療法自体は冗談じゃなくて本当にあるんだ?

 怖いなあ。


「イメージして。傷と違って中の骨に直接ヒール当ててね」

「こういうケースこそ、聖属性持ちのパルフェさんがヒールすべきなんじゃないか?」


 ネッサ嬢の言う通りだ。

 オレ達は聖属性持ちじゃないから、どうしても回復効果が薄くなってしまう。


「まーそうなんだけど、実は持ち属性や魔力量よりもイメージの方が魔法の効果には大きく関係するんだ。それを知ってもらいたい」

「「「「「「「「えっ?」」」」」」」」


 そうなの?

 魔法は持ち属性や魔力量で制限がかかるから、あんまり一般的にならないんじゃなかったのか?

 常識に反する発言に皆が驚いてる。


「で、でも魔道理論の教科書には……」

「教科書に本当のことばかり書いてあると思わない方がいいぞ? 例えば聖教会の癒し手のお姉さんの中には、あたしとほとんど効果変わんないくらいのヒールの使い手もいる。魔力はあたしと段違いなのにだよ?」

「そうなんですか? どうして?」


 これは大いに疑問だ。

 聖女パルフェの魔法の練度やイメージ力が、聖教会の癒し手に劣ってるはずがない。

 ならば魔力が大きい分だけ、聖女パルフェのヒールの効果の方が高いはずだが?


「いやー今癒し手のお姉さん達は、自分のヒールに自信と誇りを持ってるじゃん? ケガも古傷も絶対にヒールで治るって。だからじゃないかな。ハイヒールの方が魔力密度が高いから治りがいいんだよなーなんて考えてるあたしより、よっぽど洗練されたイメージのヒールを使ってる」


 謙遜してるけど、癒し手達にヒールのコツを教えたのは聖女パルフェというのは、聖教会では常識だ。


「確かに習得のしやすさや初期の効果は、持ち魔法属性に大きく依存するよ。でも結局練度はイメージなんだ。皆のヒールだって、あまり効果高くないんだよななんて考えてちゃダメ。絶対に治る、治すって自信と気合いを持って使ってね」

「「「「「はい!」」」」」


 ためになるなあ。

 オレのヒールはもっともっと育つのか。

 ヒールは覚えたくて覚えた魔法じゃないけど、役に立つことは間違いないのだ。

 魔法って使うほど魔力も増えるんだっけ?

 欲も出るなあ。


 一人の剣術クラブの部員が言う。


「待ってくれ! じゃあ私にもトリスタンみたいな身体強化魔法が使えるのか? 私は火属性持ちではないんだが」

「そりゃ可能だよ。とゆーかトリスタン君が今使ってる身体強化魔法なんて、練度なんかあったもんじゃない覚えたてだぞ? あれ以上の身体強化魔法は誰でも使えるようになる」

「あれ以上の? えっ、誰でも?」

「トリスタンの身体強化魔法だって、全く敵う気がしねえんだが」

「いや、俺はさっきパルフェ嬢に苦もなく捻られた」

「ええ? そんなバカな!」

「さっきは異種格闘技戦だったから、今度は身体強化魔法だけで相手しようか?」

「ああ、手合わせ願おう」


 これは面白い勝負だ。

 素のパワーや剣術はもちろんトリスタンに軍配が上がるだろうから、身体強化魔法の練度の違いで勝負が決まる。

 練度の高い身体強化魔法ってどんなものなのか見てみたいって気もするし。


「模擬剣はこっちにあるぜ。聖女ちゃんはどれ使う?」

「いらない。あたしは金棒使いなんだ。剣は得意じゃないし」

「おい、トリスタン。舐められてるぞ!」

「やっちまえ!」


 違う、舐めてるわけじゃない。

 多分聖女パルフェが模擬剣を持つと、トリスタンをケガさせそうで危ないからだ。


「模擬剣折っちゃっても悪いし」

「えっ?」


 予想外。

 模擬剣が折れる?

 聖女パルフェはどれほどの負荷が模擬剣にかかると見てるんだろう?

 見逃せない勝負だ。


「まいる!」

「いつでもどーぞー」


 トリスタンの先制攻撃!

 さっきより速い踏み込み、トリスタンも本気だ!

 袈裟斬りが入ったと思いきや残像?

 本体はどこに?


「こっちだぞー」


 トリスタンの後ろだ。

 聖女パルフェの動きが見えない。


「くっ!」


 トリスタン苦し紛れの横薙ぎ!

 しかし鋭い!

 聖女パルフェは?


「な、何だこれ?」

「分身?」


 素早く動き止まるというのを繰り返しているのだろうか?

 聖女パルフェが四人に見える。


「聖女ちゃんすげえ!」

「トリスタン! どれでも当たるはずだぞ!」

「はい残念」


 トリスタンの懐に入って見事な背負い投げ!


「ざっとこんなもんです」

「ま、まいった」


 投げも手加減してるんだろう。

 パワーがどれほど強化されてるのはわからないけれど、分身って何?

 動きが違い過ぎる。


「トリスタン君、大丈夫だったかな?」

「あ、ああ。やはり完敗だ」

「身体強化魔法はあたしも得意だからなー。覚えたばかりの人には負けないぞ? さて、皆さん集まって」


 身体強化魔法の講釈か。

 わくわく。


「あたしとトリスタン君の身体強化魔法ではどこが違うか説明するよー。トリスタン君の使ってる身体強化魔法ってどんなやつ?」


 トリスタンがカバンからノートを取り出す。


「これだ」

「二倍か。そんなもんだろうな」

「筋力を二倍に増強しているということですね?」

「そうそう。わかんなくてもいいから皆見て。ここんとこの記述が強化倍率を現わしてまーす」


 あ、制御の回路の中の数字か。

 少しわかる。

 聖女パルフェがサラサラと書きつけている。


「で、あたしの使ってる身体強化魔法はこう」

「ん? 制御が可変?」

「あ、倍率が魔力に比例するのか」

「なるほど、それであの滑らかで素早い動きを実現してるんだな」


 先輩方はさすがに魔道理論の講義も進んでいるから、理解している人もいるな。


「参考のために教えただけです。皆さんはあたしの身体強化魔法を使ってはいけません」

「「「「「「「「どうして?」」」」」」」」

「制御を全部イメージに頼ってるんだぞ? 余計な回路を入れてない分起動が早いし効率もいいっていうメリットはあるけど、安全のための配慮を何もしてない。ちょっとミスると手足や首がちぎれ飛びます。魔力の制御に絶対の自信がない限り使っちゃダメ」


 怖っ!

 そんな危ない魔法が得意って。

 やっぱり聖女パルフェはどこかネジが外れてる。


「トリスタン君は倍率を上げた身体強化魔法に徐々に身体を慣らすといいよ。魔法を書き換えたら、必ず詳しい人に見てもらってね」

「わかった」

「オレ達はどうしたら?」

「身体強化魔法の発動のコツが知りたいならトリスタン君に教わって。他の例えば自分の持ち属性に合わせた魔法を覚えたいってことだったら、魔法クラブまで来てね。歓迎するぞー」

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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!
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