コント「先行き」
配役・・・A=先生 B=生徒
A「高木、聞いたぞ。お前の店、全然客入ってないんだって?」
B「そうなんですよ先生。もう3日目なのに、お客さん一人も来なくて」
A「一人も?先生長い事文化祭やってるけど、3日目で客ゼロなんて前代未聞だぞ」
B「いやぁそれほどでも」
A「褒めてないよ。どういうことだ?『カニ喫茶』って看板出してマスコットにカニのぬいぐるみまで用意したのに」
B「はい、雰囲気作りにはこだわりました」
A「そこまでして何がダメなんだ?ちょっとやってみなさい」
B「分かりました・・・お待たせしました。コーヒーと、セットのタラバガニです」
A「えっカニ?」
B「カニ喫茶ですから」
A「店の名前とマスコットだけかと思った。まさか本物のカニ出すとは」
B「どうですか?」
A「うーん。カニとコーヒーが見事に合わないな。これ別々に頼んじゃダメなのか?」
B「それは絶対ダメです」
A「こだわりが強い。しかし、殻むきながら飲むの難しいな」
B「むいたカニを使ったメニューもあります」
A「じゃあそっちに変えてもらおうか」
B「分かりました・・・お待たせしました、カニプリンです」
A「なぜスイーツにした?」
B「お味はどうですか?」
A「見た目茶碗蒸しだから、味の裏切りがすごい。これでいくら?」
B「5千円です」
A「5千円!?」
B「赤字覚悟でやってますので」
A「安くて驚いたんじゃないぞ。文化祭でカニ出して5千円とって、客が来るわけないだろ」
B「でも先生、客が来なくていい事もあるんですよ」
A「何だ?」
B「食中毒が出ません!」
A「よくそれを誇れたな」
B「食中毒が出たら、店終わりますもんね」
A「お前の店はまだ始まってもいないけどな。売り上げもゼロだろ?」
B「はい、ゼロのまま横ばいです。カニだけに」
A「ヘラヘラするな!」
B「冗談ですよぉ。そんなに怒らないでください」
A「いや、先生怒ってるわけじゃないんだ。お前が心配なんだよ。この前の進路希望でお前なんて書いた?」
B「はい、ベンチャー企業の社長です!」
A「先行き不安だよ!この絶望的な経営センスでやれると思うか?」
B「やってみなければ分かりません!」
A「そんな澄んだ目で見るな。やめておけ、もっとお前に向いている仕事があるはずだから」
B「例えばどんな仕事ですか?」
A「うーん。パッと出てこないけど。先生も真剣に考えてやるから」
B「先生!僕はバカで運動音痴でモテない、どうしようもない奴です」
A「そんな事ない!と、否定できないのが残念だ」
B「でも、新しい事業を考えてる時だけは楽しいんです。これで生きていきたいんです」
A「言いたいことは分かるが、それじゃ親御さんも納得しないだろ」
B「確かに父さんは、N・リムーバーの工場を継げって言ってますけど」
A「N・リムーバー?」
B「納豆パックに入ってるフィルムから、納豆をきれいに取り除く機械です」
A「何だそりゃ!?」
B「父さんが発明した機械です」
A「誰が買うんだそれ?」
B「全然売れません。でも父さんは“特許を取らなくてもパクられない”って自慢してます」
A「似たもの親子だ。お前、このままだと将来そうなるんだぞ。それでいいのか?失礼な言い方だけど」
B「たとえ儲からなくても、やりたいんです!これ見てください」
A「何だこれは?」
B「僕のアイディアをまとめたノートです」
A「すごいビッシリ書いてあるな」
B「起業してそこに書いてあることをやりたいんです」
A「うーん・・・お前がそこまで本気だとは思わなかった。分かった、そこまで言うなら好きにしなさい」
B「ありがとうございます!」
A「しかしずいぶん書き込んだな。この赤丸で囲った『逆通販』ってのは?」
B「それおススメです。ここに商品のラインナップも書いてます」
A「なになに?低圧洗浄機、高枝切れないバサミ、猛反発マクラ。何これ!?」
B「通販って便利じゃないですか?あえて逆に、不便な通販を考えたんです」
A「やっぱり別の仕事探しなさい!」