エピローグ
皇太子である、ハリーファの死は王国の話題になった。
葬式が終わるとジャファルはテレビに向かって会見することになった。
簡単な会場で、王国のメディアや同じ宗教で国交のある国のメディアがいくつか集まっていた。
会場に入り、ジャファルがマイクの前に進んだ時、反対からも同じように進んでくる人影があった。
司会か何か、仕切る者だろうと思っていると、その人影はジャファルの目の前まできてしまった。
ジャファルの横に立った人影は、アバヤを、ヒジャブをとり、素顔を晒した。
『アイーシャ?』
会場はどよめいた。女性がカメラの前で肌を晒したからだ。
慌てて女性を会見場から出そうとして、警備員が集まってくる。
その最中、その女性はジャファルの頬を叩いた。
『これがファルハーナの分!』
通り過ぎた手の甲を素早く戻し、叩いた。ジャファルは避けることもできない。
『アイーシャの分。そしてナーディアの分』
また手の平の方で、叩きにかかる。ジャファルは腕全体で止めようとするが、全く止まらない。
ジャファルは、簡単に払い飛ばされてしまった。
面白がって中継を続けるメディア。
倒れたジャファルの胸ぐらを掴んで持ち上げる。
『誰か止めろ!』
『最後はレイコたちの分』
捨てるかのようにジャファルの体を床に落とした。
ジャファルは尻をついたまま、這うように後ろに下がった。
『捕まえろ、早く!』
大勢の警備が寄ってたかって女性を抑え込み騒動は治った。
だが、ジャファルの会見は無しになった。
TVや新聞などのオールドメディアはこの騒動を報道しなかったが、ネットメディアで流れていたライブ映像が出回ってしまった。
女性が表立って現れない王国で、公衆の面前で女性に平手打ちをされた。
ジャファルにとって、この上ない侮辱だった。
アイーシャの姿をしていたが、それはロボットだったと話を流したが、ロボットだとしても絵面の面白さに違いはなく、しばらくこの騒ぎを鎮めることは出来なかった。
大勢の警備員がアイーシャを捕まえた時、ロボットから式神が落ちた。
その式神は、遠い国の麗子の元に帰って行った。
式神の報告を受けると、麗子は笑った。
それをきっかけにして、アバビルが正式に麗子の曼荼羅に収まった。
「これからも、よろしくね」
自宅の鏡に向かってそう言った。
麗子には、鏡に映る鳥の姿が見えていた。
おしまい




