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彼女と刑事の除霊事件簿 ガスト王国編  作者: ゆずさくら


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現場検証

 警察が麗子達の部屋にナーディアを呼びに来た。

 警察が呼びかけると、ナーディアが目を覚ましたので、麗子達も話をして、ナーディアと一緒にアイーシャの部屋の検証に入れさせてもらった。

 香木はきっと売人の棚にあったように小さい木箱に入れられている、と考え、麗子や有栖、橋口はそれっぽいものを探していた。ナーディアは警察とピッタリついて行動していたので、麗子達は安心していた。

「あった?」

 麗子が聞くと、有栖も橋口も首を横に振る。

「何も」

「それっぽいものすら無いんだケド」

 麗子は目を伏せて考えた。そもそも夫人達の部屋は広すぎて探すのが大変なのだ。せめて、ナーディアに香がどんなものかを教えてもらっておくべきだった。

 警察の男が、麗子達の方に歩いてくる。

「あれ?」

「有栖刑事、どうしたんだケド」

「ナーディアがいないわよ」

 麗子はそれを聞いて目を開ける。

「!」

 アバビルの力を借りて、王国の言葉を話す。

『刑事さん、ナーディアはどこに行ったんですか?』

『用を足すと言って』

「やられた!」

 麗子はすぐに部屋のバスルームへ行き、ドアを叩く。

『ナーディア? ナーディアはいますか?』

 返事は何も返ってこない。

 麗子は開けようとすると、鍵が掛かっている。

『刑事さん! ナーディアから返事がありません』

 刑事はゆっくりと歩いてきて、腕時計を確認する。

『確かに、もう十五分以上トイレしているな』

『証拠を隠滅されてる可能性が』

 刑事は鑑識に目配せすると、鑑識と思われる男は頷いた。

『いや、ここは一番先に確認しているから、その点は大丈夫だ』

『だけど、ナーディアが』

『慌てるな。開けない、とは言っていない』

 女性の警察官がくると、扉に特殊な金具を差し込んで開けてしまう。

 そのまま女性警官が入ると、大声を上げる。

『中でナーディアが倒れてます! すぐに救急車を』

 麗子は、扉の隙間から血だらけの床を見て、手で目を覆った。

 担架が運ばれてきて、ナーディアが載せられて出ていく。

 恐らく証拠を隠滅した後に、薬を呑んで自殺したというところだろうか。

 麗子達三人は刑事に申し出て、建物の防犯カメラの映像を確認することにした。

 ナーディアについていた刑事が、一緒に防犯カメラ映像を確認することになった。

 バスルームに消えるまで、ナーディアは何かに触れるような仕草を見せなかった。

「おかしい。絶対にジャファルから香木の回収を言いつけられているはずなのに」

 麗子は最初の時間に巻き戻す。

 映像を見ていると何かに気づいたらしく、橋口が言った。

「ナーディアはずっと手を握り込んでるんだケド」

「かんなちゃんが言う通り、これは不自然だし、怪しいわね」

 もう一度、初めから見直す。

 一体いつから、手を握り込んでいたのだろう。

「!」

 麗子は慌てて映像を止める。

「今、何か触った。部屋に入った直後」

 映像を戻していくと、一瞬、入り口付近に置いてある壺のあたりで体をひねるような動作をしていた。

 カメラ側からは何かを取った感じには見えないが、その前は手を開いていて、後は手を握り込んでいる。

 小さなものを取って、手の中に隠したのだ。

『これだけだと何を取ったかまではわからんな』

 警察としては証拠不十分かもしれない。だが、私たちにとっては重要な事実だ。

『ちょうど監視カメラの死角に香木を隠していたんだわ』

『香木を呑んだぐらいじゃ血を吐くことはないな。ファルハーナ夫人の部屋から出てきた毒薬なら別だが』


 麗子は香木をどうやって焚くかを想像する。

 香炉に入れて、火をつけるのだとしたら、手で触るだろうか。毒薬と同じように何か道具を使ったのではないだろうか。

『香炉で香を炊く時はどうするんでしょうか?』

 刑事が少し間を置いてから言った。

『炭に火をつける。香をその上に落として焚くんだ』

『香は粉のようなものなんですか?』

『そうだ、知らずに言っていたのか?』

 麗子は懸命に映像を探す。

「あれ、このあたりは手を開いている」

 そう言って、また別のカメラ映像などを手繰り、画面の端にナーディアが映っている映像を見つける。

「これだ、握っていた物を呑んだのね」

 香は粉のようなもの…… もしかして、ファルハーナが飲んだ毒と粒子の色などが、同じようなものだったとしたら?

『刑事さん、ナーディアが運ばれた病院に行きましょう』

『何を急に』

『香を飲み込んで隠す際に、一緒に混ざっていた毒を呑んでしまったのかも』


 麗子達が刑事と一緒に病院に着いた時、ナーディアは息を引き取った。

「間に合わなかった…… 何もかも」

 俯くと、麗子の瞳から自然と涙が落ちた。

「麗子、ちゃんと死因を確認しておかないと、皇太子に報告できないんだケド」

「麗子ちゃんしか王国の言葉を話せないんだから。しっかりね」

 二人から抱き締められ、麗子は顔を上げた。

 そしてナーディアを観た医師に死因を聞いた。

『服毒死だ。血液検査の結果が出てすぐ、解毒薬使ったが、もう間に合わなかった。毒はファルハーナ様と同じ毒だよ』

 麗子は訊ねる。

『毒は香炭の上で炊いたらどうなりますか? 例えばその匂いを嗅いだりしたら』

『燃えてしまえば、毒にはならないな。成分が変質するし』

『そうですか』

 燃える時に毒にはならないなら、かなり以前から混ぜていたのかもしれない。

 混ぜた時点では、香を呑むとは誰も思わないだろう。いや、それを想像できるとしたら…… やはりジャファルしかいない。香と毒を混ぜるとしたら、実際は、いろいろ経路を使って侍女に命じたに違いない。そして、それはナーディアに知らせていなかった。ナーディアは香木を見つけ、証拠隠滅のつもりで呑んでしまったに違いない。

 香木の売人を殺したのがナーディアだとしたら、その罪を思って自殺したと言うことにしたいのだろう。

 どこまで卑劣なやつなんだ…… 麗子はそう思った。しかし、結局、全て推測でしかない。

 この程度のことで、この王国が、大切な国王の候補である王族を裁くとは思えない。

『ありがとうございました』

 麗子は医師に礼を言い、刑事に向かって言った。

『皇太子の呪いは解けているはずです。軍の施設にいる皇太子に連絡を取っていただけませんか』


 シュルークがジープで迎えにくると、病院からハリーファの家に戻った。

 車を降りる時、麗子はシュルークに訊いた。

『言い忘れてました。ハリーファ様の呪いは解けたようで、お家に帰っていらっしゃいますよ』

 麗子はすぐにでも皇太子(ハリーファ)に説明しようと思った。

 建物の中を歩くと、警備の者を見つけて言う。

『どうした、レイコ』

『ハリーファ様に説明をしたいのですが』

 無線機を使って警備室を経由して連絡を取ってもらう。

 しばらくやりとりがあった後、麗子の前にいる警備の者に返答が返ってきた。

『ハリーファ様から、説明は明日にしてほしいそうだ。余りにも色々なことがありすぎたとおっしゃっている』

『……』

 説明しないでいると、橋口が麗子をつついた。

「なんだって言ってるんだケド」

「色々あったから説明は後にしてほしいって」

 ため息をついてから、有栖が言った。

「まあ、そういう気持ちも分かるわ」

 麗子達の言葉は分からないだろうが、警備の者が何かを察したように言う。

『お前達もゆっくり休め』

『はい』

 麗子はそう言うと、与えられた部屋に向かった。

 アバヤを脱ぎ、アバヤやヒジャブを外すと、三人は部屋の中央で横になった。

 部屋のクッションを抱きしめて、ゴロリと回転すると、麗子は言った。

「ジャファルはナーディアに香木の売人を殺させる前後の段階で、香に毒を混ぜていたのね」

「けど、それをナーディアは知らないわけなんだケド」

「ナーディア以外の協力者がこの建物にいたんでしょうね。侍女とか」

 有栖の言葉に、麗子は考えた。怪しいとしたら、ファルハーナの侍女になる。麗子は思い出した。

「ハイファーだ」

「誰?」

「ファルハーナの侍女だよ」

 麗子は、体を起こして言う。

「アーヤ、ハイファーのプロフィールを調べて……」

 ロボットが充電しているはずの位置を見て、言葉を失った。

「あのロボットなら今朝からずっと行方不明なんだケド」

「ちょっと警備室に場所がわかるか聞いてみる」




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