表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
彼女と刑事の除霊事件簿 ガスト王国編  作者: ゆずさくら


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

33/44

塔への侵入1

 前方に、水晶のクラスターのように同じ形のビルが三つ、くっ付いたように立っているビルが見えてきた。

 シュルークが言う。

『あの三つのビルが繋がっている建物が、ブルジュ・ジャファルよ』

 麗子が橋口と有栖に説明する。

 ブルジュ・ジャファルは入り口が高くなっていて、駐車場も高い位置に広がっている。

 下道からは、カーブを描いた|通路を上っていく必要がある。

「麗子、スロープのあそこ何だケド」

 麗子はスロープを上り切ったところに、モヤのようなものが見えた。

 モヤが球場に、道を包み込んで覆っている。

「何あれ?」

「強い霊力が溢れている、としか思えないんだケド」

 有栖が言う。

「あのモヤ自体は結界ではないけど、あの辺り、強い霊がいるわね」

 通訳しなかった為、シュルークにはその会話の内容は分からない。

 運転することで必死だ。

『とにかく上り切る!』

 シュルークに見えないものを通訳して、説明している時間はない。

『突っ込め!』

 橋口は車が減速しないことに気づく。

「麗子、突っ込んでいくんだケド」

「私が突っ込めって言った」

 有栖は何も言わず頭を下げて、衝撃に耐える格好をした。そして橋口の頭に手を回し、同じ格好をさせた。

 衝突直前、麗子が叫ぶ。

『行けぇ!』

 直後、車は壁にぶつかったような衝撃を受けて、止まった。

 シュルークからすれば、何もなかったはずなのにぶつかった。その上、衝突直後はトンネルに入ってしまったように辺りが暗い。

 不意にエアバッグに頭を突っ込んでしまった事、昼間だったはずなのに周囲が暗くなっている事、その二つでシュルークは恐怖(パニック)している。

 この場中心にいる強い霊が放つ霊力(オーラ)が壁のよう働きをして、突っ込んだ車を止めてしまったのだ。

 シュルークの肩に手を触れると、麗子は言った。

『ありがとう、シュルーク。あなたは車の中(ここ)で待ってて』

 麗子が車を降りると、橋口、有栖も続けて降りた。

「例の幽鬼(ジン)がいるってことだね」

「幽鬼だとして、何で私たちを妨害しようとするんだケド」

 有栖が言った。

「それは、契約者が何か事を成そうとしているから、それを邪魔させないためなんじゃない?」

 麗子は、アバヤとヒジャブ、ニカブを脱ぎ、車に放り込んだ。

「麗子がそうなら、私も本気出すんだケド」

 橋口も、有栖も、アバヤやヒジャブを脱ぎ、自分本来の姿になった。

 麗子と橋口は制服、有栖は『不思議の国のアリス』の格好ということだ。

 三人は車の前に出て、それぞれの服を改めて確認する。

 有栖は麗子の制服を見て言う。

「それがこの王国で仕立ててもらった制服なの?」

「めちゃくちゃ金かけて貰ったらしいんだケド」

 橋口はニヤッとしながら有栖をみる。

「普通よね」

「素材と縫製が良いのよ。着心地が違うんだから」

「そんなことはいいから、さあ、いくんだケド」

 橋口は鞭を手にした。

 麗子は橋口に続いた。

「あの球状のモヤの中にしちゃ、広いね」

 有栖が言う。

「常識で考えちゃダメよ。私たちが小さくなっているのかもしれない。とにかく、敵を倒して元に戻す」

 麗子は振り返らずに、ただ頷いた。

「!」

 橋口が見上げた。麗子も気がついた。

「何か落ちてくる」

 黒い影が七、八個、落ちてくるのが見える。黒い空から落ちてくる黒い影を避ける為、麗子達は逃げ惑う。

「先端が尖ってるんだケド」

 直前で避けた橋口の傍に、その黒い塊が突き刺さった。

「うわっ!」

 一つ、また一つ刺さっていく。

 もう降ってこない、と判断して有栖が言う。

「麗子ちゃん、かんなちゃん、無事?」

「大丈夫なんだケド」

 麗子達が警戒しながら黒い塊を見ていると、変化が現れた。

「なんか音が鳴ってる」

 路面に突き刺さった黒い塊から音が発生し、互いに共振を始めた。

 有栖が注意する。

「物体と物体の間に入らないようにしないと」

「何で?」

「わからない。直感よ。とにかく警戒して」

 なっている音が、速く、高くなっていく。

「こっちの一個、割れたんだケド」

 橋口の近くにあった黒い塊が割れた。

 ターバンを巻いた、男が現れる。その肌は青かった。以前出会った幽鬼(ジン)と同じだ。

「こいつ、円月刀持ってんだケド」

「それに幽鬼(ジン)と同じ肌の色よ」

 有栖も、その判断に賛同した。

「霊気バリバリの霊体。あの幽鬼(ジン)と同じよ」

 次々と黒い塊が割れる。割れると、中から男が現れる。

 ターバンを巻いていて、肌は青く、円月刀を持っている。

「あっ、この黒い塊から、同じやつが出てくる」

「この円月刀男、動き出したんだケド」

 炸裂音が鳴った。

 有栖が、銃を抜いたのだ。

 円月刀を持った男が胸を撃ち抜かれ倒れると、その先にいる橋口の驚いた顔が見えた。

「落ち着いて。一人ずつ倒せばいい」

 倒れた男は、円月刀を杖のように使って立ち上がる。

「倒せてないんだケド」

 立ち上がった男が、橋口を切りつけてきた。

「なめんな…… 何だケド」

 橋口は円月刀の男から逃げて距離を取ると、鞭を一閃した。

 鞭は円月刀を持っている腕を捉えた。

 橋口が鞭を操ると、腕が分断される。円月刀が路面に落ちて音を立てた。

 一緒に落ちた腕と円月刀がフワフワと宙を漂って、腕がつながってしまう。

「腕、つながっちゃったんだケド」

 黒い塊が落下してきた時に、三人はバラバラに避けていた。

 別の円月刀の男に追い込まれ、有栖も逃げてきて、橋口と肩を並べた。

 円月刀を持った男が、集まってきて二人を囲みつつあった。

「かんなちゃん、こいつら銀の銃弾も効かない。ヤバいわね」

「……麗子! 麗子はどこなんだケド」

 橋口と有栖は麗子を見失っていた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ