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彼女と刑事の除霊事件簿 ガスト王国編  作者: ゆずさくら


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麗子の推理

 ハリーファの家に着くと麗子達は第一夫人の部屋に行き、戻っているか確認した。

 戻っていないことがわかると、そのまま廊下で待っていた。

 麗子と橋口、有栖、そしてロボットのアイーシャもいた。

 麗子達がしばらく待っていると、第一夫人のアイーシャがやってきた。

 第一夫人はアバヤを羽織っていて、手もその中に引っ込めていた。本当に肌は目の周りしか見えない。

『何? 貴方達、何か用なの』

「夫人の身体検査をさせていただきたいんです」

 夫人は麗子達の言葉がわかるから、通訳がいらない。

『もう呪いを掛けていたのはファルハーナだとわかったんでしょ。必要ないわ』

「皇太子のところに行きましたが、呪いは解けていませんでした」

『そう…… それと私の身体検査と何か関係があるの?』

 麗子は言った。

「アイーシャ、あなた()スワイリフと関係を持っていたのではないですか?」

『はぁ? 何突然、そんな無礼なことを言いにきたの』

 麗子はロボットのアイーシャのアバヤを、ヒジャブもニカブも取ってしまう。

 そして麗子が自身の手の指を、ぎゅっと握ると、アイーシャの中の式神に何かを伝えた。

 ロボットのアイーシャが麗子達の言葉で言う。

「スワイリフが私に向かって“俺が一番好きなのはファルハーナだ“と言ったんです。私とは“迫られたから仕方なく“とも言いました。それがどういう意味かわかりますか? あなたと勘違いして、ロボットである私に言ったその意味を」

 本物のアイーシャは、ロボットの向ける視線から目を逸らした。

『そう…… あなた達は知っているというのね、私とスワイリフとの関係を』

「今知ったんだケド」

「かんなちゃん、こういう時は黙ってなさいな」

 麗子はただ黙って、じっとアイーシャを見つめている。

 アイーシャが耐えきれずに言う。

『だったら何?』

「だから、身体検査をさせてください」

『私はそんな身体検査、断固拒否するわ!』

 アイーシャは強引に部屋に戻ろうとする。

 橋口や有栖、ロボットのアイーシャは、第一夫人の勢いに負け、避けてしまう。

 麗子だけが扉の前に残った。

『あなたも退きなさいよ!』

 アバヤの中に引っ込めていて手を出して、麗子の頬を叩いた。

 廊下に響く大きな音と、その痛みに驚いて、麗子は膝をついてしまう。

 その隙に第一夫人は鍵を開け、部屋に入り、鍵を締めてしまった。

「麗子、大丈夫なんだケド」

「そんな大袈裟な」

「普通は床に膝をついたりしないから。ほら、見せて」

 有栖が麗子の顔を見ると、血がついている。

「血?」

 有栖が指で麗子の頬を拭おうとすると、その手を掴んで、麗子が言う。

「待って、私の肌からは血が出てないと思うから…… きっと、ここについている血は、第一夫人の血じゃないかしら?」

 確かシャイタンを使って呪いをかける時は、香木に呪い主の血を混ぜるはずだ。麗子は咄嗟にそのことを思い出していた。夫人は、指を切って血を出したばかりなのではないか。

「それに、さっきアバヤを捲ったとき何か、香の匂いがした」

 第四夫人が亡くなってから、短い間に誰かを呪ったことも考えられる。

「この血を調べて、シャイタンの成分が出たらアイーシャが呪っていたことにならない?」

「証拠としては弱すぎるし、なんの呪いを誰に掛けているかもわからない。それに動機もはっきりしない。あまりに突飛すぎるんだケド」

 有栖が、小さな小さな醤油差しのような容器を取り出すと、麗子の頬の血を吸い込んだ。

「証拠になるかは不明だし、この少量で調べられるか、なんてことも置いといて、一応頼んでみよう」

 膝をついたままの麗子をそのままにして、有栖は王国の警察に話をつけに行ってしまう。

「すごい行動力だね」

「麗子。麗子が第一夫人を怪しいと思う根拠を教えて欲しいんだケド」

 麗子は自分の考えの整理にもなると思い、少し考えてから話し始めた。

「最初に、今回皇太子に掛けられた呪いのポイントを考えてほしいの。皇太子の座を狙っている弟のジャファルや、皇太子の妻と不倫をしているスワイリフなら、皇太子を殺すような呪いをかけるはず。わざわざ施設に閉じ込めるという遠回りなことはしないはずよね。そうじゃないと自分達の利益が確定しないから」

「まあ、そうだけど、殺すほど強い呪いを掛けた時、自分の支払う代償が大きいからかもしれないケド」

 麗子は少し考えた。

「この曖昧な呪いが、男性の権力争いや、恋人の奪い合いと性質が違う気がするの。だから、呪い主は女性じゃないか、と思った」

「とりあえずその流れで説明して欲しいんだケド」

「女性だとして、施設に閉じ込めることでメリットがある人がいる」

 橋口は言った。

「不倫していた第一夫人と第四夫人。そしてどっちも騙しているスワイリフにはメリットがあるんだケド」

「スワイリフからすれば、皇太子のすぐそばで不倫なんて、デメリットしかなかったと思うから外すわね。残るは第四夫人と第一夫人の二人。第四夫人はさっき見た通り呪いを掛けていたことが明らか」

「さっき皇太子の呪いが解けているか確認しに行ったら解けてないのはどう言うことなんだケド」

 麗子は立ち上がった。

「第四夫人の死を目撃した者が、掛けられていた呪いが解けることを知ったのよ」

「……」

「目撃した者は、第四夫人の所にあった香木(シャイタン)を持ち去った」

 橋口は何かを思い出したように言う。

「侍女達が『警察が調べるために持って行った』みたいに言ってた気がするんだケド」

「走り書きや、毒の入ったグラスや、毒の瓶については言っていたけど、香木については言ってなかった。第一発見者が第一夫人なのだから、警察が調べる前に香木を持ち去ることもできたはず」

 橋口は首を捻る。

「香木が第四夫人の部屋にずっとあったら、私たちが部屋に入った時にバレる危険があるから、第四夫人が自ら香木を捨ててしまったかもしれないんだケド」

「うーん。一度呪いで自分の思う通りになったのに、それを調べにきた者がきたからと言うことで捨てるかしら。逆に、呪いが解かれた時の対策ため、手元に残さないかしら」

 橋口は腕を組んだ。

「こじつけのような気がするんだケド」

「まあ、こじつけっぽくなるのは、どっちも同じ気がするわ。香木が第四夫人の所にあって、それを第一夫人が持っていく。そして香を使って呪いを継続した、そう考えれば現状の辻褄は合うの」

理由(どうき)は何なんだケド」

 橋口は納得がいかない、と言う口調だ。

「不倫状態の継続」

「私が第四夫人の立場なら皇太子を殺して、スワイリフの夫人になり、永遠の愛の方が欲しいはずなんだケド」

「どうかしら、スワイリフは頑張っても国王にはなれない。今の幸せと愛欲を同時に満たす方法がこれだったとしたら」

 橋口は吐き出すように言った。

「打算的過ぎるんだケド」

「香木を売った人間を殺しに行ったのは…… やっぱり第四夫人なのかな」

「自分が命を断ったのと同じ毒で殺したと言うわけなんだケド」

 いや、自殺だとすると奇妙だ。第四夫人が香木を売った男を殺したのなら…… 第四夫人も他殺された?

「……」

「どうしたんだケド」

「そうだよね。それ…… 本当かな」




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