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第四夫人、ハルファーナの訪問

 麗子が目を覚ました時には、日付が変わっていた。

 ベッドには橋口と有栖が運んでくれたのだろう。部屋は暗く、隣で橋口が寝息と立てていた。

「……」

 枕元にあったスマフォを開くと、メッセージがあった。

『明日は第二夫人の身体検査なんだケド』

 何故メッセージアプリを使っても『ケド』を入れるのか納得がいかなかったが、それが橋口らしかった。

 第二夫人は夫人の地元であるザフラに行っていて、そこで時間が取れるのだということだった。

 それと、今日は第四夫人が皇太子のところへ訪問する日らしい。

 麗子は気になることがあって、アーヤを経由してシュルークにメッセージを入れた。

 それが終わると麗子は再び横になり、寝てしまった。


 朝になり三人が起きて朝食を取っていると、シュルークから連絡があった。

 アーヤが翻訳して読み上げる。

『皇太子のいる施設に行く許可を得ました』

 アーヤが言った言葉を聞いて橋口が首を傾げる。

「昨日メッセージで入れてた通り、今日は第二夫人のリーンさんの地元に行く予定なんだケド」

「ちょっと気になることがあってシュルークにお願いしたの」

「このところずっとスワイリフに会ってるんだケド」

 有栖が言う。

「もしかして、そのスワイリフっていい男なの?」

「有栖も昨日会ってるんだけど」

「えっ? あの殺気だった人?」

 橋口は手を払うように振って否定する。

「それは多分、皇太子の弟、ジャファルのことなんだケド」

「だとすると、軍服着てた男だ。確かに色男ではあるわね。私の趣味じゃないけど」

「今日はスワイリフには会わないと思うわ。ちょっと調べたいことがあるだけだから」

 橋口は言う。

「じゃあ、皇太子に会うんだケド」

「そっちも会わない」

「調べたいことって何なんだケド」

 麗子は笑顔をみせるだけで答えなかった。

 有栖は天井に視線を移したりして、何かを察したようだった。

「……なんか訳があるのね」

「鋭いですね」

「刑事を舐めんなよ」

「後で話します」

 麗子達は食事を終えると、部屋の端の通路に集まった。

「この部屋の盗撮と盗聴について、有栖刑事にも言っておかないと。かんな、話してないでしょ」

「忘れてたんだケド」

 有栖は言った。

「で? 第四夫人と皇太子が会うのを何故わざわざ見に行くようなことをするわけ」

「第一夫人の面会…… というか施設にいる時間が長いんですよ。それと比較すると第二、第三夫人が施設にいる時間が短い。第四夫人の面会時間も見れば第一夫人だけ施設にいる時間が長いということがわかるわけです」

「第一っていうくらいだから一番偉いんじゃないの? それなら面会時間が長くても良いわけでしょ」

 橋口が威張るように胸を張って言う。

「この国では夫人達は『均等に』愛すことになっているんだケド」

「へぇ」

 麗子はどちらかというと施設に何かあるのだと思っていた。施設というよりはスワイリフに、だ。あの監視カメラの映像はやはり不自然だった。あの動画編集の不自然さは、軍事機密というだけではない気がする。

 有栖が首を傾げて言う。

「けど、第一夫人が怪しいというのは何故なの? さっきの言い方だと『施設にいた時間』という言い方にしているけど」

「そこはまだ……」

 するとシュルークがやってきて、話し合いは終わった。


 ジープで軍の施設に着くと車の中で身を潜めた。

 待っていると程なく土煙を上げながら走る一台の車がやってきた。

『第四夫人の車ですね』

 麗子も少し頭を上げて車を確認した。

「ハイファーが運転を?」

 アーヤが通訳して、シュルークが少し考えて答える。

『多分。あの()も免許はとったはず』

 車から出てくる侍女を見て、シュルークはもう一度言った。

『そうね。あの連中ならハイファーしか運転するようなことはないから、ハイファーのはず』

 麗子は夫人達が軍の施設に入っていく時間を覚えた。

 有栖が言う。

「夫人達は皇太子と風呂場で会って何するの?」

「そりゃ、日をあけてしか話が出来ないんだから、日常の積もる話があるでしょうね」

「麗子は暗にエッチなことをしていると言っているんだケド」

 麗子は額に手を当てて、うんざりと言う顔をみせる。

「かんな、またその話に持って行くの?」

「まぁ、まぁ。そうね。夫婦が会うのに理由はないわよね。それが時間ぴったりに区切られているってのも問題だとは思うけど」

 そうやって車の中で待機していると、第二夫人や第三夫人が施設にいた時間が経過した。

「あっ、出てきたんだケド」

 橋口が、軍の施設から出てくる侍女達を見つけた。

 有栖が時間を確認する。

「時間は…… 確かに言っていた時間とピッタリ同じね」

「待って、夫人がいない」

 麗子の予想だと、第一夫人だけが特別長く施設に滞留し、何か皇太子の呪いに関わることを行のだと考えた。

 スワイリフは知ってか、知らずにか、夫人に協力している、そう思っていた。

 だが、第四夫人も同じように時間がかかるなら、その推測は外れてしまう。

「シュルーク、ちょっとお願いがあるんだけど」

 麗子は侍女の第四夫人の侍女にどうして夫人が出てこないのか理由を聞いてほしいと言った。

『ここにいることにはなってないから、スマフォで聞いてもいい?』

 麗子は頷く。

 シュルークは自らのスマフォを操作して、侍女のハイファーにメッセージを送る。

『今何してるの? 夫人はどこ?』

『施設の中だよ。私たちは車で待機』

 シュルークは状況を説明するとハイファーとのメッセージのやり取りを続けている。

「どうしよう。第一夫人と同じようなパターンになった」

 有栖が言う。

「これは関係なかったってことね。別の線を考えましょう」

「まあ、時間だけは測ってみておいた方がいいんだケド」

 シュルークが言う。

『ハイファーの情報だと、皇太子と会った後、施設に用があるとかなんとか言って、夫人はどこかに行ったそうね。侍女達は居場所がないから車で待機することにしたみたい』

 有栖はシュルークが言った第四夫人の侍女からの情報を聞いて言った。

「ここは軍の施設なんでしょ? 夫人が『用がある』って言うのは、おかしい気もするけど」

「一応、王国の軍にも、女性はいるみたいね」

「よく考えると、昨日、紛争地域を飛ぶのにあんなに苦労したんだから、軍事施設に夫人が居続けられたら迷惑なはずなんだケド」

 橋口の言うことはもっともだったが、残念ながらここは演習場だ。今、まさに紛争地域で先頭が行われているなら、今、ここで訓練している場合じゃないだろう。

 車の中で時間が経過していく。

 すると、シュルークのスマフォに情報が入る。

『夫人が出てきたみたい』

 麗子は時間を確認する。

 第一夫人の時より少し長い感じだが、同じような時間が経過している。

「!」

 頭の中に鳥のイメージが入ってくる。

 ジェット機を操縦出来た時と同じだ。アバビルが麗子に働きかけている。

 麗子は何か考えているように黙って一点を見つめた。

 そして思い出したように言った。

「アーヤ。今からは第一夫人のアイーシャのふりをして」

 夫人達から見えない方の扉を開けて、麗子とロボットが車から降りる。

「(なんで出ていくの? 内緒に観察だけをするんじゃないの?)」

 有栖は小声でそう言う。橋口は首を横に振り、小さい声で答える。

「(私にも分からないんだケド)」

 有栖は車から、麗子とロボット、第四夫人の位置関係を見ていた。

 第四夫人が麗子達に気づいたように歩き方が遅くなった。

 施設に近い側で、三人の影が一ヶ所に集まった。




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