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碧天の行方  作者: 樹本 茂
11/11

11 そして

中佐のその後、を知る者はいない。

機体すら見つかる事は無かった。


生涯撃墜数128機、帝国海軍唯一の女性戦闘機搭乗員にしてエースの中のエース。あの可憐な容姿とは裏腹に徹底的に攻める戦闘スタイルの神子みこクレア中佐。


そして、中佐が消息を絶ってから、次の日。


昭和20年8月14日。日本の空は全航空機飛行禁止になった。



ずっとずっと後に聞いた話だが、

彼女は、海軍の記録からは抹消されていた。いなかったことにされていた。理由は分からないが……


多分、僕はこう思う。あの時、東京に原爆を落とそうとしたことをアメリカは無かった事にしたかったのだろう。その後の占領政策で日本を利用しようとした場合、そんな事は無かった方が都合がいいから。そして、そこに、関係した神子中佐の、原爆を搭載したB29を撃墜した中佐を、そもそも、存在しなかったことにしたのだろうと。


しかし、僕と中佐に関係した周りの者の心には残っている、あの可憐な姿が……今でもすぐに思い起こせるくらいに。


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