結末
カインがたどり着いたときその場には多数の破壊の跡があった。
刀や白の魔法ではこうはならないそんな光景だった。
「はぁ」
「ぐっ」
雄我の刀がロベリアの炎の剣を切る
「やった」
カインは喜ぶ。それでも二人の表情に変化はない。
なぜなら何度も起こったことだから
炎の剣が再生される。もとより炎を集めただけの武器。形を維持することにも魔力を消費する代わりに形が維持できなくなっても魔力を使えばすぐに復活する。
剣技ならば雄我が圧倒している。それでも黒の魔力だけでなく白の魔力も心もとない。回復に回せるだけの魔力はない。ならば炎が体に当たるだけでも危険。これまでは
「カインがここに来たということは」
雄我が左手に魔法剣を持つ。
「やっぱりそれが僕への対処のカギだったわけか。ここで使用するということはいよいよやばいね、僕」
「はぁ」
魔法剣が白く光る。
光ったと同時間にはすでにロベリアの手にあった修復を繰り返しもはや剣と呼べるかどうかもわからない形になった炎の剣を薙ぎ払う。
「魔法剣と呼ばれるものはたいてい能力がある。まあ俺の場合は刀にもあるけどこの魔法剣の効果は・・・いや教える必要もないか」
「いいじゃないか、おしえてくれよ、冥土の土産にさ」
「あの世の王にでも聞くんだな」
刀がロベリアの頭と体を切り離した。
ゴトッ。塊が床に落ちる。それでもその顔は笑っていた。
戦闘から三十分後、一番早くその場にたどり着いたのはバーナードだった。
「君たちよくやった。後は私がやっておくから君たちは早く休みたまえ」
「ええ、そうさせてもらいます」
「え、いいのか?」
カインが雄我に問う
「ああ」
「くっくっく。これで俺は・・・」
二人が出ていったあとバーナードの手にあったのは一本の黒い髪の毛だった。
それは戦闘中に天音雄我から抜けたもの。人の身でありながら黒と白の魔法を同時に使用する。その遺伝子
そこで気づく。場所によってはそれなりの値段で売れるであろう髪の毛一本よりも、もっと即物的なもの。同時にこの男が生涯何よりも大事にしてきたもの。今まで激闘を繰り広げていた三人には決してなかった欲望。
雑誌の悪趣味な広告にしかない紙幣の束
「これはぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
歓喜。事件を解決した喜びでも自らの望みをかなえた喜びでもない醜悪な喜び。
「これがあれば一生・・・」
そこで金が動く。取引が成立したという比喩ではない。物理的な動き。
「ああ待って・・・」
お気に入りのおもちゃを取り上げられた子供のような声を出す。丸々太った大人が言っても気持ち悪い以外の感想が出てこない。
バーナードが追いかける。目の前のあり得ない現象も彼の頭にはそれを考える能力はない。
「実に愚か」
少女のつぶやきなど聞こえるはずもなかった。
夕日が差し込む学校の庭で報告を終えた功労者二人がいた。
「正直なところ。お前があいつを殺したことが正しいとは思えない。」
「だろうな。あいつが反省するような奴には見えないし、命には使いどころがあるというやつの意見には賛同だが。今日半日でカインという人間の人格はある程度理解した」
「でもだからこそ」
「だからこそ友人になってくれ。お前とならオレもさらに先に進めるような気がする」
「そうか」
二人が握手する。
こうして二人は友人となった