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黒白の魔法剣士  作者: 傘羅栄華
ソードブレイク編
88/114

落下

「それが功を奏したと」

「成長かな」


(力か)

 当然ながらカイン=ルーグではこの人に勝てない。それは肌で感じている。すべてにおいて上回られている。

 実力も経験もはるかに上だ。だがそれでもそこまで離されていないものもある。

 それは筋力。すなわち力。

 魔力は消費する。だが相手の蛇腑は何度でも伸びる。そしてどこまでも遠くへと。

 蛇腹剣を相手にしたことなどない。そのために作戦など不可能。

 カインにも勝機。あるいは方法はある。背中に。いやその後方。あるかもしれないその可能性。

 翼

「・・・」

 先ほどと同じようにカインは動かない。普段とはまるで違う戦い方。

「・・・来ないのか。ならば」

 シュル

 今度は振りかぶらずに刀身が伸びる。

「やっぱりできるか」

「・・・でもさすがに速度が遅い」

「いや・・・」

 当然二度続けてまっすぐに来ない。今度はしなる。斬るでも刺すでも突くでもなく。

 叩く。

 いうならば鞭のように。点ではなく線での攻撃。

 カインの狙いを知ってか知らずか。力で来る。

 運命のように。

「っ」

 狙いはつけにくい。だがその分広く一撃も重い。

 前か後か右か左。重い一撃だ受け止める自信はない。どこにさけるべきか。

 四方向だけではなく。一度だけならまだある。

 ばれてはいない。ばれるはずがない。

 ならば使える最後の手段。

 空へと。

「二翼一対!!」

「な」

 一瞬にしてその場から消える。

 リプタスが目で追うとそこは空。

「飛べるのか・・・だが」

 剣、槍、銃、拳。魔法。近距離にせよ遠距離にせよ結局のところ陸の上であることに違いはない。

 だがカインは違う。さらに別種。イレギュラー。

 XでもYでもなくZ

 それが翼対。人類の未踏と言われた場所。


「やっぱりこれか・・・一番の武器は拳でなく翼。赤よりも意表をつけるのは間違いない。初対面の相手なら」

「空は狙われるんじぁ」

「そこまで簡単ではないさ。飛んだ経験なんて黒以外はほとんどないからな」


 ヒントはある。それをヒントだと認識しているのならば。

(リプタスには見えない場所を感知する魔法が別にある。だが今ここでは使ってこない。離れた相手に当てる。だがそれは物の多い地上だからこそはかりやすい。雲と青しかない空を裸眼なら見誤る可能性はある)

「ちぃ。はぁ」

 はたして点か線か

 狙いやすい点か当てやすい線。

 蛇腑は意思に従い伸びる。

 運でないか運か。

 思考は一瞬。いや一瞬すらなかった。

 答えは


「一度だけだ」

「え」

「一度だけならおそらく外す。だが二度目はおそらくない」

「一度目が当たる確率は・・・」

「零ではないな。だが八十もない。おそらく七十弱、蛇腑の癖あるいは完全に使いこなせていないならもっと下がる。あるいはそこを・・・」


 翼を狙い剣の先がカインへと向かう。

 目測なら当たっている。だが

「・・・思ったより。いや動かれたら」

 空を飛ぶカインもただの的ではなく人だ。自分の意志で動く。いや自分の意志じゃなくても動いている。常に少しずつ。

 そして

 剣先がカインの上を行く。

「く」


「賭けに勝った」

「でもここからどうすれば」

「おそらく」


 リプタスには選択がある。

 戻すか。このまま横に振るうか。

 だがそれが間違いだ。そもそも先ほどの時点で選択肢はまだあった。

 攻撃しないという。

「はぁ」

 反対にカインが狙いをつけやすい。先ほど雄我がやったように、自分が火をのせたように糸がついている。


『それが無理なら最後に少し出してみるか、結局勢いは死ぬがその上に相手がいるのならば問題はない。重力も加わればそれなりの破壊力を生む。ただ地面すれすれを飛べるなら拳でもいいがおそらく足の方が便利だ』


 時間はない。決めるのは今


「ふぅ。は!」

 その時だった。翼があるがゆえに空を飛べていたカインに翼が消えた。

 伸びている剣をたどればリプタスにたどり着く。

 ならばこその自由落下。

「くっ」

 カインの狙いが分かったリプタスが剣を戻す。

 制御はできない。手から軽く火を出すなど今の自分にはできなかった。

 ならば翼を使うのは最初と最後。

「熱血ボンバー翔」

 翼亡き者が落ちてくる。

 間に合わない。

 リプタスが燃えてた拳を覚悟した時、その拳はリプタスを温めて去っていった。

「二翼一対」

 地面に衝突するそのギリギリで翼が間に合った。

 勢いは消えた。今なら

「ふ」

 何とか足が地面についた。

「はぁはぁ」

 決着はついた。ならば充てる必要はない。

「俺の負けか・・・」

合格


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