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黒白の魔法剣士  作者: 傘羅栄華
ソードブレイク編
87/114

赤き証明

「君か・・・」

「よろしくお願いします」

 シャン

 ㇲッ

 リプタスが剣をカインが拳を構える。

 そのどちらも普通ではない。


「大丈夫なの?」

 パンジーが不思議そうな顔で雄我に聞く。

「カインの一番の強みは空を飛べることだ。細かな調整はできなくてもそれだけで脅威あるいは戦術となりえる。ただ蛇腹剣は伸びる。先ほどの戦闘を見る限りカインが飛べる場所まで平気で伸びるだろう。そしてその刺突の威力は容易く翼を貫通する」

「ならかなり不利」

「勝機は薄い。だが一つだけ方法がある」

「・・・一応聞くけどそれは」

「わかっているだろう。まああいつの中である程度組み立てはできているはずだ。今この瞬間にもね」



 雄我とパンジーが話している間カインとリプタスは動かない。

 どちらにせよ拳と剣は近接武器。リーチに差があるといってもそれは変わらない。ただ問題は遠距離。カインの体からは炎が出る。リプタスの剣『蛇腑』は伸びる。

 とはいってもだ。二人とも近距離の方が強いことには変わらない。

 蛇腑はあくまでも伸びる刀であって鞭でも手槍でもない。

 刀だ。所詮相手を切り殺すだけの武器。

 本来ならじっくりと相手の出方をうかがいたい。戦術を選べるのだ。相手が近距離が苦手なら近距離で遠距離が苦手なら遠距離で。

「・・・」

 とはいってもこれはただの戦闘じゃない。勝てばいいのではない相手の力を性質を見極める。そういう戦いだ。少なくともリプタスにとっては。

 あまり時間をかけてられない。都合がある。この世全ての生命と同じように。

 こういう場合、手軽に遠距離に飛ばせる魔法があれば便利なわけだがあいにくリプタスにはない。ただ刀身を伸ばすだけだ。

「はぁ」

 右手を振りかぶりカインに向かって振り下ろす。

 そして剣先は真っすぐにカインに伸びる。

 しびれを切らしたリプタスの攻撃それをカインは待っていた。

 雄我のように避けない。リプタスは先ほど消耗している。ならばカイン側が持久戦で来る。そう見越しての一瞬勝負。

 剣の一撃は重いというより早い。だがドラゴンはもっと早かった。

 一度だけなら。

 バシ

 リプタスとしては先ほど雄我を後方から攻撃した時と同じ。

 剣が動かない。

 いや、その理由はよくわかっている。適正魔法を使わなくても両の眼が捕らえている。

 刃ごとカインが炎を纏った拳でつかんでいる。

「掴んだ・・・」

「なるほど・・・だから自分から攻撃しなかったわけか」

 カインは自分の遠距離攻撃の命中には不安があった。だからこそ使いたくない。だがそもそも適正にせよ属性にせよ使わなければ知れ渡っていなければわからない。

 炎を纏った拳とはいえ痛みはある。当然だ。刃をつかんでいるのだから、だがそれをかまわず炎をのせる。

「しまった」

「当てられるかどうかわからないなら標となれ、炎焼伝」

 赤き炎が刀を伝いリプタスの元まで届く、刀を手から離さなければ自分が燃え、刀を手から離せば武器を失う。

 カインが出せる程度の炎では刀は焼けない。だが人なら別。

 リプタスは刀を離す。カインはそう思っていた。

 見ていたパンジーもだ。

 だが雄我は違った。

「ぐぐぐぐぐぐぐ」

 リプタスは剣を放さない。握ったまま焼かれている。

「な、」

「え」

 カインはここまでは考えていた。だがそこから先はない。

 剣を引っ張るべきか。だが相手までついてきてしまうかもしれない。

 火力を上げるか。だがそれで倒せなかったとして次の攻撃用の魔力がない。

 隙が出ている。それは罠ではないか。

 時間は一瞬。だがその間に複数の事象が起こりえる。

 考えてもわからない。おそらくだれも。

 だがこのまま静止することは違う。

 ならば

 その時だった。カインにある悪寒。

 何かが音を立てている。そして掌にある。痛みだけではないもう一つの感覚。

 何かが動いている。いやそれは一つ。

 そう。

 蛇腹剣の剣先から目をそらすべきではなかったのだ。

 躱せない。ならば最速で出せる魔法。

「熱血ボンバー」

 左手で刀をつかんでいる。それを離すわけにはいかない。そちらを自由にするわけにはいかない。だからこそ右手。いや右手の炎を大きくし、全身を覆う。

 赤きバリア。

 剣先がカインを狙う。狙いは背中。炎に焼かれているリプタスの今の状況では適正魔法を使わなければ見えないがそれでも蛇腑が走っている場所は感覚で分かる。

 止められたその近くを通り過ぎればいい。

 ブオオオオオオ

 間一髪炎が間に合った。それどころか躱そうとしていれば腕で対処しようとしていれば、一瞬でも迷えば。負けていた。

 蛇腑の先端が炎のバリアに接触した。

「っ」

 だがそれも一瞬。カインが炎のバリアに衝突した蛇腑を認識した時左手が少し緩んだ。

 そこを狙われる。

 刀が消えた。

 そしてカシャリと音がする。

 今日だけで何度も聞いた。蛇腑が元へ戻る音だ。

「はぁはぁはぁはぁ赤よりの復」

「はぁ回復」

 二人とも息を整える。そしてやけどを治す。


「すさまじいわね。始まって五分も立ってないというのに」

「・・・これが赤の魔法だ。水をかぶっても風邪ひくだけだが火をかぶれば人は怪我する」

「ところで二つ。相手は白?」

「いや、戦いなれているのならば通常装備だろう。傭兵が軍人かあるいはただの剣士か。本職がなんにせよその程度は備えている。それこそ大戦時は軍で最初に教わるのが回復魔法だ。衛生兵には限りがあるし、薬は時間がたっても増えないからな。属性は白の可能性は低い。隠している可能性もあるが。おそらく相手は適正と武器で戦うタイプ」

「それと刀剣清廉は触れないんじゃ・・・」

 一般人には触れられない。だからこそ刀剣清廉『景欄』を運ぶためにリプタス一人ではなく護衛が雇われることになった。だがカインはつかんでいる。

「短時間掴むだけならできなくもない。それでもかなりの痛みが走る上にそれなりに強者でなければ難しいがな。運ぶとなると俺でも無理だ」

「カインはそれを知ってて・・・いやそもそも刀剣清廉を知らないようだったけど」

「いや炎でつかむつもりがそれだけでは力負けすると感じてとっさに掴みに行ったんだろう」

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