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黒白の魔法剣士  作者: 傘羅栄華
ライフ編
71/114

兄弟

 痛いところを突いてくる。世紀の大発見。本当にその可能性が高いのならば今回の探査メンバーはおかしい。

 七色英雄に匹敵すると言われるダムスはまだいい。戦闘力、人格共に文句を言う人の方が少ない。怪物や動物そして自然の知識はさすがにその道のプロには遠く及ばないがそれでも研究隊の統率をすることもある。今までもそしてこれからも。能力も実績もあるのだ。

 当然のことだが動物の研究者が呼ばれる。だがハロルドはまだ二十七歳。四年生の大学を出て、さらに四年生の研究職特設大学を出て、実際に経験を積んで一年ほど。呼ばれるにしても彼の父、そしてそのレベルの研究者が複数人で来るべき出来事。

 命に対する苦情対策としてイルミナル国でも最も多い宗教、ファーラー教から人が来ることもありえなくもない。だがそれこそもっと上がいる。

 そして少年二人。当然ながら国家を挙げての一大プロジェクト、学校のテストに代わりなど苦情しか来ない。そう言い切れる。

 だからこそ今回の件は。その程度ということだ。

 国にせよ学会にせよ学校にせよ。

 もしかしたら一億分の一にも満たない確率で何かが起こるかもしれない。だからこそダムス。そして研究者を呼ぶ必要がある。だがそこまで金をかける必要もない。だから大学の中でも高い成績だったがまだ新人のハロルド=ヴィーヌ。そしてファーラー教の上層部の中でも若手のモーリス。そしてこの二人が戦闘に巻き込まれる可能性を考慮して、クルクス高校の制度である筆記免除戦闘任務を利用して二人を護衛につけた。

 そうそれだけのことだ。

 たまたまその生徒の中にファーラー教に多大なる影響を与える政治家の息子と歴代でも黄金世代に次いで優秀とまで言われる生徒会のメンバーがいて、動物の専門家として動物学の父とまで呼ばれるほどの高名な研修者の息子が呼ばれた。そして最近は誰も入っていなかったため森そのものに大きな出来事が起こってないかダムスが軽く見てくるように頼まれた。

 たったそれだけのことなのだ。

 ただ一つ、ここに入れていないことがある。

 それはこの森が嘆きの森と呼ばれること。

 木でできた家は都会そして田舎から消えた。あるとすれば山の中だけだ。

 それは当然、魔法なんてものがある。赤の魔法の属性持ちなどこの世界にいくらでもいる。

 火事など簡単に起こる。

 だからこそ卒業した人類にとっての嘆き。

それほどまでにここは不可思議な場所だ。そしてその場所に幼いころからあこがれ続けた人がいたこと。

 この未踏の地は理由なく入ることを許されなかった。

 二千年ほど前、魔法がこの世界に発現してからずっと。

「僕はどうしても来たかった。昔からの夢だった。一度入れるのならばその後牢に入ってもかまわない」

「・・・それで苦労するのはお前だけじゃない私も父さんもだ。忘れたのか父の言葉を」

「忘れるわけがないだろう。『自分たちは研究者。そして観測する者。そこに住む彼らの営みを邪魔することなど許されない。自分たちのせいで環境が変わるなど許されない。誰かに迷惑をかけるなどあってはならない』」

「だったら・・・」

 ハロルドが何かを言いかけた時だった。

「もういいでしょうその辺で」

 口をはさんだのはダムスだった。

「ダムスさん?」

「僕自身覚えがあります。・・・憧れにどうしても手を伸ばしたい。そのためならば触れた自分の手が焼け焦げてもかまわない。そう思ったこともあります。だからハリルドさんの言い分もよくわかるんですよ」

「でも・・・」

「どっちにせよ、もはやどうもしようがありません。もともとの目的を果たしてこの六人で帰りましょう。話はそれからです」

「・・・」

「兄さん?」

「もともとここから一人で帰れとは言うつもりはないよ。怪物の知識についてなら私はお前にかなわない。というより始めに依頼を受けたときにお前の名前を出しておけばよかったんだ。そうすれば私だけではなくお前も初めからこの調査に加われたかもしれない。それをしなかったのは、単純に私の心の狭さに他ならない」

「・・・」

「父親を超えたい。二人そろって。そう約束したのにな」


 あっちは仲直りしたらしい。

 少年二人はもちろんモーリスも少し安心したようだ。

 動物と怪物。どちらか危険かと言われれば両方同じ。

 身体能力や野生の感に優れる動物。ぱっと見ではわからない武器を持っていることの多い怪物。

 それどころか素人には動物と怪物の区別さえつかない。

 少なくとも先ほどの戦闘では相手が隠密性に優れたバロットタイガーであることはハリルドの助言なしで気付くのはもっと先になっていただろう。

 そしてそれが命取りになる。

 それが大自然の厳しさ。少年二人だけではない。慣れているダムスと研究者二人以外の三人はそれを身をもって思い知った。

「ところで二人に問題だ」

「え」

 ダムスが突然そんなことを言いだした。

 カインは思い出した。そういえばこの人の課題にはこういうものがついてくることを。初めて見た本物の自然に圧倒されて忘れていた。

「そういえばそういうものも」

 サイラスもあまり余裕の表情はしていない。それも当然。サイラスもまたカインに近いタイプ。電子ペンを持ったことがない日はあるがダンベルを持ったことのない日は存在しない。

「第一問 世界三大魔法発明とは一体何か。説明も併せて」

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