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黒白の魔法剣士  作者: 傘羅栄華
ライフ編
66/114

戦闘試験

 怪物を嫌悪する神々、それでも最も神に近いとされる怪物はいた。その怪物種は










「どうでした?」

 金曜日の朝。

 三年二組の副担任である数学教師ファイ=リーベットが校長室から戻ってきたロイドに話しかけた。

「確認は取れました。もう危険はなく、普段通りの授業に戻るように」

 その話を聞いて周囲の教師も安堵する。

「・・・となると、あの件は予定通りに」

「ええ、引率教員はダムス先生に生徒はカイン=ルーグ君とサイラス=アイヤ君で」

「・・・ダムス先生ですか。それはまた」

「・・・何か考えがあるのでしょう」



 キーンコーンカーンコーン

 今日も授業が無事に終わった。それも昨日は警戒態勢にあったこともあり皆浮かれ気分であった。

 だがそこに例外もまた存在した。

「どうした?」

 いつもならこういう時に真っ先にはしゃぎだす友人に元気がないことを不思議に思い雄我がカインに声をかけた。

 声をかけられたカインも反応が鈍い。

「・・・雄我か。いやぁちょっと今日はこれからで」

「何を言っているんだ」

「朝ロレッタ先生に言われたんだけど、今日任務にでなけりゃいけないらしくて」

「任務?・・・ああ戦闘科はほとんどの筆記テストが免除される代わりに外にでなけりゃいけないんだよな」

 クルクス高校という学校はよくある学校とは違い文武両道を掲げていない。

 結局のところスポーツ選手に因数分解など不要だ。

 結局のところ医者にバスケットボールの技能など不要だ。

 必要になったところでそこにはそこのプロがいる。いざという時は知恵を借りればいい。学校でテストのために詰め込んだ知識など無駄になるだけだ。

 この学校に入学する方法は複数ある。とはいってもすべてテストではあるが。筆記だけではない。

 戦闘、スポーツ、芸術、頭脳、そして総合。

 スポーツ。例えば野球やサッカーでは部活。そして大会がある。

 芸術。例えば歌唱や絵画では部活や賞がある。

 勉学。それは単純に二か月に一度ほどの頻度で行う筆記テストがある。

 そして戦闘で入学した者には一般的な五教科である自国語、数学、理科、社会、魔法筆記、そして補助授業である保険、体育、技術、家庭、音楽といった机を並べて一斉に行うテストが免除され、一般教養などを問われる試験だけになるシステムだ。

 その変わりが任務。とはいっても危険などほとんどない。だが戦闘力の必要がある。

 だがそうなればなおさら問題はない。だがカインには元気と呼べるものがひとかけらもなかった。

 その理由は

「そうなんだよな・・・」

「別にいいだろ。一年の一学期の一週間目から授業についていけてない奴が進学するにはそれしかない。わかっていたことだ」

「それはそうなんだ。というかそれはわかっていた。オレ自身が思っていたよりオレが強くなかったことも含めてそこはまあどうでもいいんだ」

「じゃあカインは何処が不満だっていうのさ。それに合格すれば授業は聞き流しても構わないんだろうに。まさか一般常識に自信がないとか」

 アンドリューが割って入ってきた。そして失礼なことを言ってきた。

 いつもなら否定するところだが、カインの反応はそれでも鈍い。

「不満。不満。うーん。実は先生が引率してくれるらしいんだが。その先生がダムス先生なんだ」

「ダムス先生?」

 雄我にとっては聞きなれない名前だ。入学式の時の教員紹介、そして各授業。

「・・・知らないのかい雄我・・・ああそうか」

 待ってましたとばかりにアンドリューが軽く笑う。

「有名な人なのか?」

「いくつかの王族や貴族たちに護身術の稽古をしている人だ。本職はここの学校の教師だけどほとんど学校にいない。今も三年二組の担任にして生徒会の担当教員なんだけど実際には副担任であるリーベット先生が生徒会の担当についている。とはいってもイルミナルとパーチェだけでも忙しいから仕方がないけど」

「・・・ふーん。でその人のどこが不満なんだよ」

「厳しいことで有名なんだ。それも複数の教員免許を持っているから任務中にもいくつか出題されるらしいよ」

 アンドリューの説明にカインが青い顔をさらに青くさせる。

 どうやら嫌なことを思い出したらしい。

「・・・それはまずいな。それにイルミナルで仕事ってことは」

「お互い旧知の仲。いやまあ、大丈夫だよ。それにこたえられなくてもそこまで影響はないらしいから」

 引っ掛かる単語があった。

「・・・そこまでということは」

「前例は・・・ある」

 アンドリューの説明にカインの青い顔に少し緑が混じる。

「どうすれば」

「任務をしっかりすれば問題はないはずだよ。それにサイラス=アイヤの方も」

「そっちにもか」

 雄我の記憶では生徒会の一人。だがそれ以外に名前を聞かない。

「変人にして超人ぞろいの生徒会の中でも変人度合いはかなりのものだ」

「・・・任務内容は?」

「・・・・・・・・・嘆きの森の調査」

「あの神話につながっているとかいう」

 嘆きの森とはクルクス高校から北東に三十キロほど行った先にある森だ。奥には神が住んでいると言われている。そのためかあるいはそれ以外の理由か一般人では立ち入ることを禁止されている。

「それはうらやましいね。絶滅危惧種や希少怪物の巣窟。一度は行ってみたいんだけど。入れないし帰ってくる自信もない。でもダムス先生がいれば危険はない。戦闘は起こるだろうけどそれはない方がまずい」

「まあ、筆記テスト大幅免除のためだ頑張れ」

「うっう」

「そうそう。ダムス先生は七色英雄にも匹敵すると言われる人。だから安心して」

 ドアを開けて担任がきた。どうやら呼びに来たらしい。

「・・・ということはロレッタ先生は戦ったことが?」

「戦ったことはない。とはいっても《英勇者》。ダムス先生の異名。聞いたことあるでしょ」

「十年前のクルクス高校校長信任戦ですよね」

「ええ、史上最年少でこの学校の校長になれると思われていた。まあ今の学校長に負けたけど・・・」

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