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黒白の魔法剣士  作者: 傘羅栄華
プリンスブラッド編
64/114

戦いの意味

 教員としても六人目の王族が誰なのかは知っておきたい。

 とはいってもそれを知る教員の一人は決して口を開かないだろう。

 そしてそれ以外に探す方法などない。

 果たしてそれはそこにいた。

 青白い電気が床、天井、壁。そのすべてに張り巡らされてある。

 それらは皆、ロイド=バークの意志によって操られている。

 そして何かを感知した時直接ロイドの頭に届く。

「こっちか」

 電気の一つが振動を感知した場所へと向かう。

 そこでは

「くそっ」

 見たことのない男が窓のふちに足をかけていた。

 そしてそこから勢いよく外に飛び出す。

「逃がすか!」

 それを追って窓を通る少年が一人。探していた少年、天音雄我だ。

「ここは三階。いやまあ大丈夫か」

 天音雄我は黒と白の魔法剣士。つまり重力を操作できる。ならば問題はない。そもそも運動にも戦闘にも勉学にもたけている総合科だ。

 そしてロイドが窓から下を覗いてみると。


 男が四人。

 正確には二対一で戦っており、それを遠くから見ている少年が一人。

 一人で戦っているのは最初に飛び降りた男。

 顔、そして戦闘スタイル。個人を特定できる記号。そのすべてに記憶に無い。連絡にあった校舎に入り込んだ傭兵だろう。

 ランクは不明。だがそもそも知名度が薄い時点で傭兵としてはそこまで高くはない。

 そして二人。先ほど男を追って窓から飛び降りた、少年天音雄我。少年と一緒に戦っているのは七色英雄の一人。バーリガン。

「二対一とは卑怯。そもそもなんで傭兵のあんたがここに・・・」

「知るか。だが俺の目的のために引くわけにはいかないんだ」

「俺もまあ一切勝ち試合がないというのは傭兵としてね。雇われた理由?教えられねぇな」

 剣と槍が一人の男を襲う。一対一でもおそらく勝てない。

 戦力が単純な足し算ではないとしても、そこら辺の傭兵程度ではどうにもならない。

 剣と槍の猛攻の果てについに槍が傭兵の腕を貫いた。

「・・・先を越されたか」

 貫かれた傭兵には戦闘意志はもうない。それを知り、雄我はひとまず戦闘姿勢を崩す。

 だが警戒は緩めず、奇跡と不可能も青い薔薇の首飾りの形ではなく、日本刀と魔法剣の形で少年の手に握られている。

「さぁて、依頼人を吐いてもらおうか」

 バーリガンが乱暴に傭兵の胸元をつかむ。

「ぎゅが・・・」

「ああ・・・知っている傭兵には守秘義務ってのがある。だが俺にはそんなこと関係のないことだ。はけ。あるいはここで殺す」

 その剣幕に押されたのか、傭兵が語りだした。

「し、知らない前金でたんまり。用件はこの学校の王子五人を襲うこと。そして依頼主に対して詮索しないこと。それしか知らない」

「・・・」

 少年は少し離れた位置でその話を聞いている。

 ロイドもまた、窓から降りようとしたが

 がしりと肩をつかまれた。

 気配すら読めなかった。

「誰!・・・学校長?」

 後ろに立って肩をつかんでいたのは学校長だった。

「なにを?」

「もう少し清聴しておりましょう」

「でも」

「・・・大丈夫分かっていますよ」

 何に対しての大丈夫なのか。

 何をだれが分かっているのか。

 ロイドにはそれが分からなかったが、強い力で肩をつかまれている。

「・・・」

 バーリガンによる暴力的な尋問は続く。それは佳境に入った。もはや傭兵には隠す意思はないらしい。とはいってもそもそも知らないことはわからない。

 そして傭兵はしゃべり終えた。

「もうこれ以上走らないんだ。後は警察にでもなんでも突き出せ」

「・・・まあ殺害許可も出ていない。それどころか興味もない」

 バーリガンが傭兵を放り投げる。興味をなくしたようだ。

 だというのに少年は動かない。

 まるで何かを待っているように。

 だというのに少年は動かない。

 まるで何かを確かめるように。


 戦士二人は当然気付いている。

 気付いたうえで静観している。

 そして流れる沈黙。


「・・・どうなっているんですかこれ」

 三階でその異変に気付いたロイドが学校長へ聞く。

 だが

「・・・・・・」

「学校長?」

「・・・ここからですよ。本番は」


 そこからも少しの間沈黙が流れたがバーリガンがたまらず声を出した。

 黙って去っていくのならばそのまま黙認していた。

 金を払うのならばもう少し見せていた。

 だが食い入るように見られては反応もする。

「誰だ。そこにいるのは」

 それを待ち望んでいた少年がいる。

 少年が校舎の影から姿を現した。

 自分は無関係だとばかりに手を挙げて。

「僕?ただの・・・」

「ファーラスト神聖王国の王子。だな」

 口をはさんだのは雄我だった。

「っ」

「この学校にいる六人目の王子。考えるまでもなく単純な話だ。別の王族へ喧嘩を売る。その行為に鮮明な前科がある。確信ではなく疑念の時点でそれぞれの国の王子が不和となる。大国同士の仲たがいさせる。それはかつて大戦を起こしたバーラスト帝国の十八番。だが残念ながら王族にとって狙われるのは日常茶飯事、外交をまるで理解していない。君も君の父親も。子供は複数人の傭兵を雇いもみ消そうとし、親はそのことを知って一人の傭兵を雇ってごまかそうとする」

「・・・」

「親子で共闘しておけばもう少し目的に近づけたというのに。まあいいや当然ながらこれは罪だ。」

 そういって雄我が剣を振り下ろすと。

 いつの間にか回り込んでいた槍に止められた。

 その槍の持ち主は当然バーリガン。雄我も少し力を籠めるが槍は動きすらしない。

「俺の依頼はそもそも息子を守るようにだ。相手は問わない。たとえ別の王族であろうともな」

「やはりこうなるか」

「そうか?むしろ望んでいたように見えた」

「ああその通りだよ」

 お互い距離を開ける。

 条件をフラットにするために。

(足のけがは問題ない。気配もない。ならば)

 剣と槍が衝突する。

 ガギン。

 金属同士がぶつかる音がする。

 それはもちろん剣と槍だ。

 雄我は日本刀《奇跡》をバーリガンは槍《長強》

 そして何度目かの激突。

 ゴギン。

 その衝撃で二人の体が離れる。

 まだ小手調べ。

 だというのに近くで見ている少年。トレヴァー=ファーラストは動くことができない。

 たとえ総合科とは言えここまでの殺し合いとなるとトレヴァーが認識できるものではない。

 現に腰を抜かして歩けないでいる。

 ただ眺めるだけしかできなかった。


 そしてどれだけの時間がたっただろう。

「何が能力はあるな。だが使わない。いや使える場面でもないのか。」

 二人の戦闘スタイルは似ている。

 対術を基本とし、属性魔法を混ぜる。

 切り札的に適正魔法を使うバーリガンと戦闘には役に立たない雄我とでは違うが。

 そして最も違うもの。それは武器そのもの。

 それは剣と槍の違いというのにも。そこにある能力。

「さすがに早い。実はただの槍には反応しないんだ」

 その時に

「黒砲珠」

 黒い魔力の珠が雄我を襲った。

「ふん」

 雄我が日本刀を振るい、魔力は切れた。

「そういえば逃げてはいなかったな」

 発射された方を見ればそこにいたのはトレヴァー=ファーラスト。

「無粋な真似を・・・」

「別に構わない。二対一でも。俺はは戦闘意欲をなくしはしない」

「・・・さすがにそれは戦力に少なくない影響がある。勝ったとは言えないほどに。それに逃げられたら元も子も」

「それも含めてだ。問題ない。勝者っていうのは強いことは第一条件。そこからさらに不利であることを勝機とする。それが真の勝者だ」

「ふん。いうねぇクソガキ」

 そして二人の動きに激しさが増した。

「・・・狙いがつけられない」

 トレヴァーもまた総合科。

 護身術は習っている。武器を手にしたこともある。人を傷つけたこともある。

 だがそれでもここまで来ると別。


 衝撃によって二人が離れる。そこで二人の思考が合致した。

 魔法解禁へと

重力制場(グラビティフィールド)

「土の乱立(デザートパーティ)

 相手の強みを消し、自分の強みをより高く。

 第三者にはうかがう隙間すらない。

 自分たちだけのフィールドへ。

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