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黒白の魔法剣士  作者: 傘羅栄華
プリンスブラッド編
60/114

罠の中

 爆音があった。衝撃があった。

 だがそれ以外は何もわからない。そのままに放送があった。

 通常事業に戻るようにと

「・・・終わったようね。そもそも何があったのか知らないけど。それじゃ、もうすぐ五時間目の授業。遅れないでね」

 ありきたりな注意をして担任は去っていった。

「ええ。それはもちろん」

 こちらもありきたりな返事をスル。

「昼休憩終了まで十分か。何があったんだ」

「さあな。そもそもロレッタ先生でも詳しく知らないみたいだし」

「音からして誰かと誰かが戦いっていた。ただ具体的な内容まではわからない」

「おそらく誰か侵入者が来てそれを教師の誰かが撃退した。それならその場を動かない。そしてそれなりの時間に撃退できた理由になる」

「まあそうだろうな。問題は侵入者だが」

「生徒の中にも何が起こったか見た人はいるだろう」

「ここで話し合っててもな。それに手掛かりはある」

 雄我はにやりと笑った。



 キーンコーンカーンコーン

 六時間目の終了を終えるチャイムが鳴った。とはいえそれだけでは授業の終わりとはならない。

「それじゃ今日の授業はここまで」

 地理の担当であるロイド=バークが授業の終了を告げる。

 そこでようやくクラスが騒ぎ出した。

「終わったー」

「・・・本当なんだよな。それ」

 雄我と雪風が話している。確認内容は昼休憩の時間。校門前で起こっていたこと。

「ええ、自分で名乗っていたわ。バーリガンってね」

「最強の傭兵と言われた男か。依頼するには一億ルーガからとまで。そんな奴が学校に」

「一体どこからの依頼を受けたのか」

「限られてくるさ。王族、貴族、三発明、豪商」

「その顔は思い当るところはあるという顔ね。まあそれもだけど、私としてはそんな奴を倒した学校長の方が気になる。聞こえなかったけど最後に何かを言っていた。つまりつまみ出さなかった」

「何かあるんだろうな。まあそれもある程度予想はついている。悪いが手伝ってくれないか」

「・・・私があなたの頼みを断ったことあったかしら」

「・・・そうと決まれば」

 雄我が周囲を見渡す。皆談笑に興じている。ロイド=バークもアンドリューからの質問を受けている。

 それまでは予定通り。

 そして近くにいたカインに話しかける。

「なあ、今日は遊びにいかね?」

「おおっ。いいね、どこに行く」

「自然の奇麗な場所がいいな」

「ならシャーロットの滝かな。あそこの水がまたうまいんだ」

「ああ。じゃあ私も」

 アリシアが割って入ってきた。カインが横目で雪風を見る。雄我も横目でロイドを見た

 ここまでは予想通り。

「ありがとうございます」

「別に構わないよ。この辺は鉱石がよく取れるからね。その分地質の調査が進んではいるんだけどそれは鉱石関係であって人類史ではないんだ。まあこの辺も次の授業でやるから」

 アンドリューがロイドから離れる。

「それじゃあ荷物置いたら正門で集合ってことで」






「・・・こいつはまた」

「すごい。あたしがいたところでは見なかった」

 二人から素直な賞賛を受けてカインが胸を張る。

「だろう。ここはイルミナルの中でも有名な滝でね。オレも小学生の頃はよく通っていたんだ」

 水音が周囲声を聞こえにくくさせている。だがそれが苦にならないほどの空気の良さ。

 ゆえにその通知を音でなく、振動で感知した。

「メッセージか」

「なんて」

「釣れたみたい。たださすがに人が多いか」

「それなら大丈夫だ。ここは蟻の巣のように張り巡らされていてね。地図なしで他国民が入っていい場所じゃないんだ。かくゆうオレも何度も迷ってね。おかげで人の少ない場所もばっちり把握してある」

「ならそこに行くか」

「任せとけ」


 三人そろって奥へ進んでいく。途中カインによって挟まれる解説は日ごろの授業態度からは説明できないほどの博識さだ。

「ここは第八の滝。水音が最も多く強い。それでいて滝の裏に入れることが有名だな」

「ならここでだな」

「二人ともこれはすごいよ」

 アリシアはいつの間にか靴下を脱いで水の中に入っていた。

「大丈夫かあれ」

「問題ないよ」

「なら俺も入るか。正直なところ興味はあったんだ」

「え。まあわかるけどな」

 バシャリと水が跳ねる。

 つられてカインも水の中に飛び込む。とはいっても浅い場所だ。具体的には長めの靴下ぐらいにしか水はない。

 だがそれがかえって四月の中頃、授業終わりの体にはちょうど良かった。

 そしてそんな三人を物陰から見つめる男。

 気配などださない。音などださない。瞳すら出さない。

 だがそれでも三人をじっと見ていた。

 やがて水遊びにつかれてきたところで

 別の場所からローブを着た集団が出てきた。

 物陰に隠れていた男はそちらを見やる。

 だがその集団は遊び疲れた三人を襲う。

「な」

 反射的に隠れていた男、ロイド=バークは三人の前に立つ。

「パパ」

「ああやっぱり」

「え」

 雄我のつぶやきにロイドが反応したその時、ローブを着た集団は霧のように消え去っていた。

「なんで」

 さすがのロイドもわからない。目の前で何が起こっているのか。

「やっぱり釣れた」

「ここまでうまくいくとは。さすが雪風というべきか」

 雄我が名前を呼ぶと音もなく山から雪風が出てきた。

 その光景を見てロイドも悟ったらしい。

「・・・まさか俺が気付かなかったなんて」

 感心したように言った。

「隠れる。それも山にとなったらあいつに勝てる人はいませんから」

 珍しく断言した。これより上は存在しないと。

 だが誰よりも先に口を開いたのは娘だった。

「それよりなんでパパがここに」

「ああそれは、娘が気になって」

 もっともらしい理屈だ。いや実際には逆。もっともらしい理由があるためここに派遣された。

「昼に俺にはロレッタ先生の見張りがつきました。そこまではまあともかく、もう一人見張りがついたんですよ。その生徒の名がヴァージル=フレルメル。すなわちフレルメル帝国の現皇帝のたった一人の息子。つまり国は違えど王子二人に見張りがついた。そして雪風が昼に校庭で見た傭兵。バーリガン。七色英雄の一人にして最強の傭兵」

 ロイドは動かない。だがそれは雄我には関係のないことだ。そのまま自分の推理を続ける。

「つまり何らかの理由があり、王子たちが狙われることになった。それで俺をつけてきた。違いますか」

「・・・なるほどね。まさかそれだけのことで気付くとはね。ということはアンドリュー君の質問から謀られていたってことかい」

「ええ」

「・・・こいつはまた」

「話していただけますね。どっちにせよ俺はこれから調べます。対象の協力を得ている方がロイド先生も護衛もしやすいでしょう」

「・・・やれやれ聞いていた通りだな」

「えっ」

「わかった話そう」

 そういってロイドが語りだしたのは二日前の日曜日のこと

「クルクス高校には教師ならだれでも見れるサイトがあるんだ。そこには正式な部署が作った年間行事表とか誰か教師が作った要注意生徒とかモンスターペアレント対策とかあるんだ。その中で日曜日にあるページがハッキングされたんだ。とはいっても内容はわかっていない。見えた時間は数秒にも満たない。でも見られたんだ。その内容はこの学校にいる王子と呼ばれる生徒とその取扱いと予定について。それも今週末の予定についてだ。五人いる王子の誰かが狙われるということ。今週末までにね」

「なるほどで、ところでそのページは誰が作ったんですか」

「それが分からない。何人かの教師によって受け継がれてきた。当然名乗りでない。そして誰かによって消されているからその内容はもはや知りようがない。昼間に来た傭兵も学校長がそれぞれの王に襲撃の可能性があると報告したからどこかの国が呼んだんだ」

「なるほどね。ならあのバーリガンも動くわけだ。ただそれなら俺には必要ないでしょう」

「ああ、家にも確認を取った。そもそも君自身護衛の誰よりも強い。だから普段は誰もつかない」

「・・・」

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