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黒白の魔法剣士  作者: 傘羅栄華
ファイブアラウンド編
30/114

八話そして進行

十二時三十分

少女と青年の二人はクルクス高校の敷地を隔てる門の前にいた。

そこでルイフは気になっていたことを聞いた。

「そういえば大丈夫なのか?俺は関係者じゃないぞ」

 最悪強行突破も考えてはいたがそれでも正式に入れるならそれに越したことはない。

「授業中ならともかく休日だし家族って顔していれば大丈夫」

「そうか。なら後はあいつと戦ったっていう二人と会うだけだな」

「でもそれが誰かわからないのよね。誰かに聞こうにもそもそも誰の連絡先も知らない」

「ここでも友人がいないのか」

 あきれたように言う。予想はしていたが。

「仕方がないじゃない。同類を探すのに忙しくて」

「で見つかったのか」

「少なくともクラスにはいない」

 その時恐れていたことが起こった。

「あらパンジーさんと・・・・お兄さん?」

 女性の二人組の片方に話しかけられた。

 こういう時パンジーよりもルイフのほうが慣れていた。

「どうも。こいつの兄のルイフと言います。ちょっと妹がちゃんと自炊できているか気になって、様子を見に来たんですよ」

「ああそう。でも男性は女子寮には入れませんよ」

「顔を見に来たという方が本音ですから大丈夫ですよ」

 挨拶しながら小声で伝える。

「ちょうどいい。このまま昨日のことについて聞いてしまえ」

 こうしている間にも警察は友人を追っている。

「昨日襲った傭兵の中に昔近所に住んでいた人の息子さんがいたかもしれないんですが知りませんか」

 嘘は言っていない。

「うーん。何人か傭兵がいたらしいけど。ほかにも手掛かりのようなのは何かない?」

「確か電気を操作していたらしいんですけど」

 口をはさんだのは教師と生徒の会話を黙って聞いていたもう片方の女性だった。

「それはもしかしたら。いや絶対にロイドのことでしょうね」

「一体その人は今何処に」

「今はビーストハートっていうジムに」

「ありがとうございます」

 二人は走り出していった。

ロイド=バーク

 さすがのパンジーも教師の名前は知っていた。だがその人の詳しい情報までは知らなかった。

 目的地に向かいながら検索エンジンに打ち込む。そうすれば大量に出てくる伝説や武勇伝の数々。大戦で戦果を挙げた英雄であるらしいが二人はあまり知らない。なにせ大戦よりももっと大きな戦いを経験している。

 タクシーが捕まらなかったため走ることになった。二人ともジムの場所を知っていれば電車やバスで近くまで行けるが、場所を聞くということを思い出したのは学校を出てから十分ほど後のことだった。おかげで調べながら走ることになった。

「着いた。はぁはぁ」

「だがさすがに。ふぅ」

 二人して息を整える。あまり時間的な余裕はないがそれでもこのままでは満足な会話もできない。

 そこで数名がジムの入っていたビルから出てきた。

「どうだ?」

 ウェスターがロイドの顔を直接見たことのあるバンジーに出てきた人と実際の顔の照合を頼んだ。

「この中にはいない」

 一度全員を見てからもう一度確認する。ロイドが何時からジムに入り、普段どれほど中にいるのかは知らないが。それでも昼食をとっていないならそろそろ出てくるころだろう。ここで見逃せば次に出会うことはできなくなる。必然的に普段より少し慎重になる。

「そうか。ならまだ中にいるか」


 二人が受付でジムの見学を申請し中に入るとちょうどロイドが出てくるところだった。危なかった。学校のあのタイミングで二人の女性に出会わなければ確実に出会えなかった。

「ええっと君は確かロレッタ先生のクラスの」

「パンジーです。確認したいことが」

「何?授業のこと?」

 ロイドが不思議そうな顔で見てくる。まだ授業は始まったばかり。スポーツや戦闘で入った生徒ですら授業についていけている。いや彼の娘ならばわからないが、それでもパンジーは見るからに運動能力で入ったわけではなさそうだ。それぐらいロイドにはわかる。

「いいえ昨日戦った傭兵のことです」

「ああ。赤の魔法銃使いと重力制御使いの少年のこと?」

「その少年のことです。どんな人でしたか?」

「言い方は悪いけど性格は暗そうな子だったね、まあああいうのも・・・。傭兵にしては若すぎる。おそらく高校生ぐらいだ。だが恐ろしいぐらい戦いは洗練されている。明らかに場数を踏んだプロ。魔法銃使いの方が弱かったよ。引き際もわきまえていたし」

 二人は確信した。かつての親友であり、同志であると。

「その人どこに逃げたか知りませんか?」

「方角としてはウィート区方面だったと思うけど。その子がどうかしたの?」

 この際事情を話すことにした。できる限り隠しておくべきだが、ここで情報を出した方が効率的。

「実家の近くに住んでいた知り合いの子かもしれない。でも知る限りそんなことをするような奴じゃないんです」

「そうかじゃあ操られているのかも。月曜日に緊急の全校集会があってそこで発表されるんだけど、学校の専属医者だったヘクター先生が事件の黒幕でね。あの人は確か精神操作が適正だったはずだから。というよりその人が証言すれば無罪になるはず」

「そうなんですが、操られていた証拠がないと。そもそも今もまだ操られている可能性もありますから」

「そうかなら僕もその少年の調査しよう」

「ありがたい申し出ですがこの件は俺たちが解決しないと」

 今まで沈黙していたウェスタ―が口をはさむ。

「わかった。なら学校に調査を一時停止するように進言してみるよ」

「ありがとうございます」

「頑張ってね」

 笑顔を見せてロイドは去っていった。


「さて、これからどうする?」

「とりあえず逃げた方向に向かいましょう」

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