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黒白の魔法剣士  作者: 傘羅栄華
ケレブレムアニマ編
19/114

黒幕

 四人がバスの中で、動けなければ戦う手段も持たない連中を制圧しているとき、ブレインズメールが切れたクルクス高校の寮の裏手で二人の老人が対峙していた。

「やはりあなたでしたか」

学校長が顔色や少々青いヘクターに問いかける。言い逃れしようか。とも思ったがどのみち調べられればわかることだと判断し白状する。

 学校長の予想は当たっていた。

 校内にいる人の中でジャマ―を早期に発見できる人物が一人だけであること。

 学内の侵入経路。

 教室や寮の配置。

 監視カメラの停止。

 それらすべての情報と工作がヘクターによってもたらされた。

「やはりということは前々から目をつけられていたということですか」

「倒れた人物の中にあなたは入っていませんでしたから。それにこの学校の地理を教えた人がいることはわかります。大抵のことは調べようと思えば調べられるとはいえ、精神操作系の魔法が発展するとなればあなたも得をするでしょう。それと気づきませんでしたか?あなたが校長室から寮に向かったとき麗華くんがあなたをつけていたんですよ」

「なるほど。だが私の目の前に立ったのはあなたらしくもない失策ですね。精神(ロザ)

ヘクターが驚き詠唱が途中で止まるのは仕方がない。なにせ詠唱し終える前に学校長は目と鼻の先にいたのだから。

ヘクターという人間が見た限り、学校長が戦闘している場面、つまりこの学校の校長を決める試験では魔法を使用していなかった。徒手空拳。それだけだった。つまり魔法を使用できない。ならば防御魔法も使えない。だがそんな予想は裏切られた。

声も音もなくその老人は動き、ヘクターが認識した際には拳を繰り出した。

「ぐ」

「・・・私が魔法を使用してこなかったのは、できないからではなく、する必要がなかったからですよ。あなた自身も含めてね」

そこからしばらくヘクターには声が出せなかった。

「詠唱し終えるまでに攻撃すればいい。精神操作魔法どころかすべての魔法共通の弱点。そもそも詳細は知らないとはいえ精神操作魔法を得意とする人物を倒そうとするのにわざわざ前に出ませんよ。戦闘を回避するために魔法を使用していたあなたにはわからないのかもしれませんが」

 魔法は詠唱しなければ発動できない。だからこそ戦闘では短い詠唱時間の魔法が使用される。当たり前のことだ。



「・・・・・・」

何とか声を出そうとするも声どころか音すら出ない。自分を見下ろす人物を見つめながら口を動かして、数分後、それでも胸を押さえながらどうにか声を絞り出す。

「あの本さえあれば。私たちは次のステージに進める。精神操作、その進歩のためには必要なんだ・・・」

「・・・あれはあなたのような人にわたっていいものではないのですよ」

「馬鹿な、中身を知っているというのか!」

「ええ。きちんと読んだことはありませんがね。あのノートを読んでいいのはこの世でただ一人。そしてそれは私ではない。もちろんあなたでも」

「教えてくれ。中には・・・中には何が書いてあるんだ」

「少なくともあなた方が想像するようなものではありませんよ。しいて言うならば愛・・・ですかね」

「愛。だって。そんな私だって・・・」

そういってヘクターはついに意識を手放した。その時ヘクターは昔のことを夢に見た。それが夢だったのか走馬灯だったのかそれとも無念だったのかそれは本人にもわからなかった。

目の前の女性がいる。その人は魔法はあまり得意ではなかった。それでも明るい人だった。そんなところに恋をして愛をしていた。

【どうして僕とは結婚してくれないのです?お互い愛しているはず】

【私はあなたを愛しています。でもそれはあなたの魔法で生み出された感情かも知れない。これからずっとそう思って生きていく自信がありません】

【そんな・・・】

 沈黙が支配する中、学校長が高校に語り掛ける。

「気絶しましたか。・・・そろそろ出てきたらどうです」

盗み聞きをしていたケネスが肩をすくめながら学校長の前に姿を現した

「これは驚いた」

「・・・一応聞いておきますがそれはどちらに?」

「聞くまでもない両方ですよ」

その表情は驚きに満ちていた。どれほどの重症が運び込まれても常に冷静だったこの男が。

「・・・学校長には戦闘力も必要だと知ってはいましたし、あなたの身のこなしを見て身体能力ある程度知ってはいましたがこれほどとは・・・どう見ても齢六十は超えている。それでも今見た身体能力は本物だ。魔法じゃない。もっとシンプル、鍛えたから強い。それだけだ。それだけでも十分驚きだ。いやそれよりも」

ケネスが学校長に詰め寄る。

「あの本の中身を知っているというのか。一体あの本は何処に。何が書いてあるというんだ」

「・・・そもそもなぜその本が公表されていないか考えなかったんですか?」

「・・・」

「あなた方の知るその人は医療の進歩を拒むような人だったんですか?技術や知識を自分だけで独占するような人だったんですか?」

「それは」

違う。いかに人間不信のケネスでもそれは、それだけは断言できる。

ケネスの頭の中に一人の顔が浮かぶ。出会ってから一日たりとも忘れたことなどない。あの人を超えるために腐敗はびこる医療会から身を引き、誇りだと思っていた医師免許を自らの手で砕いたのだから。

彼の記憶の中の師は、目標は、初恋はどんな時でも誰よりも…美しく

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