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黒白の魔法剣士  作者: 傘羅栄華
ケレブレムアニマ編
13/114

到着

「とりあえず誰かと合流すべきか・・・でも誰と・・・」

思案する。見えている範囲では学校中で人が発狂している。そもそもどれほど詠唱に時間をかけても、たった一人で学校の敷地内全体に魔法をかけるのは不可能。発動者は複数いる。しかし場所が分からないうえに人数も不明。連絡を取ろうにも通信魔法は得意ではないうえにMISIAはつながらない。人に会ってもその人が操られていない保証などどこにもない

自分と同じく絶対に操られていない人物。

雄我の頭の中に二人の人物を思い浮かべる。

「あの二人ならば、戦力的にも問題はないが、二人ともこの時間何処にいるんだ・・・」

学校から五キロ離れた地点にその集団はいた。

「隊長、学校の敷地全体に脳髄連合野(ブレインズメール)を発動し終えました」

「こっちも協力者から連絡があった。やはり何名かには効果がなかったらしい」

「やはりそうですか。三年かけて研究して二十人で発動した大魔法でも効果がないとなると」

「それでも・・・これで終わる。私たちは完成するために。今日が革命の日だ」

「ええ」

隊の士気は高かった。いやこの能力をかわれて彼は隊長となった。

「この状況は予想していた。別動隊を」

「了解」

五時十七分。学校から二キロの地点でその事件は起こった。

「何だお前たちは。そこをどいてくれ私たちは急いでいるんだ」

医者をのせた複数の救急車が道路の真ん中で立ち往生していた。

「あなた方に学校についてほしくない人たちがいるんだ。私たちはそんな人たちに雇われたのさ」

「そんな・・・」

「そうですか・・・」

通信魔法を終えた学校長の表情にヘクターは不安になって聞いた。

「学校長、どうかしたんですか?」

「救急車が足止めされてるようです」

「足止め・・・本当なんですか」

「校長室に国から専用の回線で連絡が来ましたからまず間違いではないでしょう」

「そんな・・・」

そんな時、校長室のドアがノックされた。

「あなたは天音麗華さん!どうしてここに?」

「学校長。これはどういうことです」

「確認している限りでは十七時を知らせる鐘を合図に学校の敷地内全体に魔法が発動。生徒、教師問わず、発狂、睡眠、混乱いずれかの状態になっています」

「そう・・・ですか」

「天音さんは大丈夫なんですか?」

医者の質問に天音麗華は当然のように言った。

「天音家の人間に精神操作の類は効きません。理屈は不明ですが。お二人は大丈夫なんですか?」

「校長室には強固な耐性が敷かれています、ヘクター教諭はもともと精神操作のエキスパートですから」

「なるほど、なら二人は問題なさそうですね」

「ここに来るまでに誰か効果がなさそうな人には出会いませんでしたか?」

「だれにも」

「そういえば麗華さんには弟がいるとお聞きしたんですが、その方も精神操作の類は効かないのでは」

「それが授業終わった後、学校から外に出たのは見たんですがそこからどこにいるのかは・・・」

「まだ外にいる可能性があるということですか・・・それはまた」

「それならどうにか連絡を取ればこの魔法の発動者を倒せるのでは」

「これほどの魔法ですから発動者は複数人いるでしょう。問題は連絡を取る方法です。ジャマ―があるようでMISIAは通常の回線は使えません。通信魔法は・・・」

「あまりそっちのほうの魔法は得意ではないですから・・・」

「困りましたね」

三人が話し合っているその時だった。北東から天を衝く光が走った。

「何ですかあれは?」

「事前に聞いていたサインです」

「サイン?」

「到着したようです」

クルクス高校裏門では一人の男が立っていた。あまり手入れされていないであろうことが分かるぼさぼさの髪の毛。動きやすさ重視で選ばれたジャージ。かろうじて医者であるとわかる白衣と大きなカバン。

男こそが医療を極めるために医療界と医師免許を捨てた男。ケネス=リング

その男の逸話は数多い。

いわく。百二十時間ぶっ通しで手術を行った。

いわく。闇医者の身でありながら国が指定した十人の名医に選ばれた。

そんな男が何年かぶりにクルクス高校の敷地内に入る。ほかの医者とは足並みをそろえなかったがゆえにただ一人傭兵による妨害を受けなかった。

「ここか。手荒い歓迎だな」

敷地内に入るなり生徒が襲ってくる。

「どいつもこいつも生気を失った目してやがるな。まあいい来いよこれも診断だ」

襲ってくる連中をかわしながら目についた一人を光が縛り付ける。

「光網」

縛った生徒のすべてを診断する。触診、視診、聴診、己の体、機械、ありとあらゆる方法で原因を探っていく。

無論、その間にも襲って来る者はいる。

「医者の邪魔をするな」

光が複数人の生徒を吹き飛ばす。彼は命を救う医者であったがゆえに医療を大切に扱わない人は嫌いだった。だからこそ医療界を抜けたそれでなければあの人は追えない。超えるなんて不可能だ。だからこそ近づきたかった。

「あなたがケネスですね」

「あなたは?」

「私はこの学校専属の医者のヘクターと申します。校長室の案内をするように言われ」

「では向かいましょう」

ケネスが検査を終え、少し時間がたって校長室のドアをノックもせず乗り込んだ奴がいた。

「早いのね」

「いや今のは・・・」

校長室に乗り込んできたのはケネスでもヘクターでもなかった。

「はぁはぁ、どうなってるんですかこれ・・・」

カイン=ルーグ。

「カイン君。無事だったんですか」

「それが食堂で夕食を悩んでいたら突然周囲の人がおかしくなって」

「原因は・・・もう少しすればわかるでしょう。おそらくカイン君の手も借りることになるでしょうからそれまで休んでいてください」

「はい・・・あれ今ここにいるのは二人ですか?」

「二人が後から来るわ。学校内に無事な人が残って入るでしょうけど」

「あなたは確か・・・天音先輩」

「ええ。あと弟に合わなかった?」

「いえ、今日は行くところがあるらしくて。教室で別れてからそれっきりです」

「そう」

「お二人に話があります」

三人が話し終えた後二人が校長室にたどり着いた。

カインが操られているかを確認したヘクターがきりだした。

「結論から言えば精神操作系の魔法の多重掛け、おそらく何十人という人数でかけられているがゆえにこれだけの範囲になっている。発動者を三分の一ほど削れば自然に瓦解する。ただ確実に傭兵を雇って守護させているでしょうねぇ」

「まさか傭兵を操って・・・」

「いやそれはないわね」

「ええ何人か倒しても別の人が発動できるように準備しているでしょうから傭兵を操るほどの人材の余裕はないでしょう」

「俺もそうだと踏んでいる。そしておそらく連中の狙いは脳髄経路(ケレブレムアニマ)

「ケレブレムアニマ?」

「何ですかそれ」

「人間の脳というものは、今現在もブラックボックス。古今東西、表裏問わず様々な医者あるいは研究者によって研究されてきた。しかし今なお解明されていない。世界最高峰といわれる俺でも不明なことだらけ。もちろん長い歴史の中で知り尽くした人などいない。ただ一人を除いて」

「それはいったい」

「私の師匠。医学の歴史を一万年進めたといわれる伝説の医者」

「その人になら脳のすべてが分かったというんですか」

「確証はない。だがあの人ならそこにまでたどり着いていたかもしれない。そしてあの人が仕事の合間にノートに何かを書き留めていたのは事実だ。中身は見たことないが。医者の世界では人体のすべてが分かるなんて言われている。信じない人もいるがね」

「なんでそれを連中は欲しがるんですか?」

「おそらくそれは精神操作魔法の弱点の克服。脳が解明されていないのだから脳に作用する精神操作の魔法は完璧にはなりえない。実際にこれほど大規模な魔法だというのに君たちのように効かないことがある。それが不満なのだろう」

「となると奴らの次の手段は」

「ノートを探すために、生徒と教師を人質に学校長の権力を使わせ、探させる」

「脅迫ですか」

「今残った人たちには相手の精神操作が効かないみたいですし、それは相手も承知でしょう。つまり各個撃破するための人物が別に雇われている可能性があります。しかしこの学校全体にかけられた魔法は一人で発動されたものではない。となれば」

「問題は頭数ですね。連中の人数も場所も分かってませんし、相手が接触してくるのを待ちますか?」

「それは悪手です。この学校の異常は隠しておくべきです。となればできる限り早急に事件解決が望ましい」

「医者としても健康状態も心配。できる限り早急のほうがいい」

「しかしどうすれば・・・」

「敷地内に無事な人がどれほどのこっているかですね、十人ほど残っているなら相手を叩くほうに」

「それなら」

「どうかしましたかカイン君」

「魔法は学校の敷地内にしか発動してないんですよね」

「それは俺が保証する。精神操作を複合させた魔法がドーム状にかけられている」

「友人が五時半まで外に買い物に行ってくるって言ってたんですが、そいつなら千里眼が使えますから連絡を取れさえすれば外からでも中の様子が分かる」

「問題はどうやって連絡を取るかですね。学校の前で異常を察知して千里眼を使用してもらえればいいんですが」

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