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黒白の魔法剣士  作者: 傘羅栄華
ソードブレイク編
107/114

「そんな馬鹿な」

 カインが怪しむ。それほどまでにあり得ない。そして何度も頭で想い口にも出した。そんな馬鹿な。という言葉。それほどまでに信じられない。目の前で起こっている光景を。

「精神は肉体を超えるとでも・・・」

 パンジーでさえ興味より恐怖が大きい。

 だがアイリーンは変わらずに。雄我だけを見つめている。背中などがら空きだ。

 だというのに恐怖でもって場を支配している。

「キヒ」

「が」

 日本刀とフランベルジュ。雄我とアイリーンの鍔迫り合いはまたしてもアイリーンが勝利した。

 体勢を崩した上に刀を弾き飛ばされた雄我にフランベルジュが迫る。

 このまま斬られる。貫かれる。だがそうはならない。

 なにせまだもう一振り刀がある。

 とはいえ一つ問題がある。アイリーンの持つフランベルジュには能力がある。触れたものを破壊する。

 奇跡ならば超えられる。だが不可能の方は

「キヒヒ。ヒ」

「これほどまで魔力を消費させられるとはね・・・だがこっちにもちゃんとある」

 止めている。魔法剣不可能が相手を殺す能力を持つ剣を。

「・・・雄我」

「・・・大丈夫だ。こっちにも別の能力がある。絶対の無効化。奴のフランベルジュ。その能力は発動しない・・・ただそれよりも問題が一つ。これで無効化できないってことはその剣術の腕前、実力か・・・」

 魔力さえこめればどうとでもなるのが魔法剣。

 魔力をこめる。黒い魔を。

「ぐがが」

「キヒヒ」

 アイリーンが何を考えているのか誰のもわからない。

 だが今は

「お、押している」

「・・・でもこれはかなりの消耗」

 パンジーの思った通りだ。現在雄我は魔力をつぎ込むことでアイリーンのフランベルジュを抑えている。もっと正確に言えば力を剣士としての腕の差をごまかしている。

 だが

 二人が離れた。

「やった・・・」

「今だ二人とも・・・」

「ああ。ためていた分を吐き出す」

「これで終わりにする・・・」

 魔力の充填は完了している。後は二人ともぶっ放すだけだ。

「爆熱・・・ボンバーーーーーーーーーーー」

「水読・膨濁流」

 雄我から離れたアイリーンをカインが炎を纏った拳で遠くまで殴り飛ばしパンジーの出した青の魔法で追撃をかけた。

「今度こそ?」

 カインが雄我に声をかける。

 だが雄我はもはや軽く笑って。

「いや。この程度で終わるぐらいなら今までの討伐戦で倒されているはずさ。パンジー」

「わかってる。さっきの連絡でしょう。無事に送り届けた。撤退していい」

 先ほどの受信音の元を読みあげる。

「なら逃げるぞ」

 奇跡と不可能がもともとの青い薔薇へと戻っていった。

「・・・いいのかアイリーンをそのままにしておいて」

 カインとしてはできるのならば捕らえない。たとえ倒せないにしてもこのまま連続殺人鬼をそのままにしておきたくはない。

 それは雄我も同じ。

「構うな。一度戦闘に入った後は数か月は出てこない。そして剣士以外には興味がない。言っただろ。俺たちじゃあどうにもならない。七色英雄が複数人で戦って負けた。そういう相手だ」

「強すぎだろ・・・仕方がない・・・のか」

「仕方のないこと。撤退しましょう。いつ目覚めるかわからない」

 だが。戦いは終わっていなかった。

「キヒヒッヒ」

「え、」

「な」

 気付けば雄我の目の前にアイリーンはいた。

「重力制御か」

 そして剣が振るわれる。武器を収めた雄我に

「が」

 ギリギリで躱せた。だが

「重力制御」

 雄我を重力が引っ張る。だが相手も黒の属性を持つ。どこへ逃げても安全とは言えない。

「水読・縛」

 水がアイリーンを縛る。

「・・・なんでだ。剣をしまえば興味を失うはず」

「・・・まずい。千切られる」

(どうする・・・もう一撃当てないと逃げられない。だが魔力が)

 尽きている。少なくとも魔力のごり押しで対抗するには足りない。

(隠したままで何とかなる相手だとは思ってなかったが)

 白がある。通常の人間ならたった一つの属性を雄我は生まれながらに二つ持つ。

「光の曲波」

 光が曲がる。それにより雄我の姿がアイリーンの視界から消える。

「ぐぐぐぐぐ、強い」

「キ゚ヒィヒ、ヒ」

 ブチリ。

 水の縄は破られた。だがすでにそこに目当ての剣士はいない。

 存在はしている。だが見える状態ではない。

「キヒ」

 アイリーンが周囲を見渡す。当然そこには先ほどまで戦ったカインもパンジーもいる。だがそのぎらついた瞳には見えていないかのように。

「グギギギギギ」

 今までとは違う音がアイリーンの口から奏でられた。

 その変化の理由はわからない。消えている雄我にも消えていないカインにも。

 だがただ一人パンジーだけは察する。

「・・・執着その理由は。剣だけじゃない・・・剣士であること・・・」

「ぐぐぐぐぐぐぎgさgんぁんkぁlkが」

「な、なんだ。ぐえ」

「・・・これは重力の増加。それもこのあたりすべて・・・」

 周囲に重力が発生する。二倍、四倍、八倍、十六倍。そして三十二倍。

「っがlkgじゃklklなk」

「がががががががが」

 カインが痛みを漏らす。内臓が破裂しそうな圧。

「これは・・・まずい」

 パンジーも痛みを漏らす。

 二人ともとっくに立っていられない。進化の過程をさかのぼるように手どころか体全体が地面に張り付いて動かない。

 だがその世界でアイリーンだけは立っている。フランベルジュを地面に置いたまま。

 すなわちアイリーン自身にも重力はかかっている。だというのになおも叫び続ける。

「がlskdんがっぁんklんヴぁlんvzxz、mなm、んl」

 何を言っているのか誰にも理解できない。

 いや

(理解してくれる人を失った。この感情は悲しみ。だとしたら癒すのは不可能・・・)

(どうすればいい・・・雄我・・・どうする気だ。たとえ見えなくてもこの高重力の中にいる・・・声を出さなければ魔法は発動できない。でも移動なら・・・)

 二人とも諦めていない。

 だがその程度で状況は変わらない。

 絶望的だ。

 だがそれでもあきらめないからこそ。

 執着

「零に踊れ。無重力世界(アンチグラビティ)

 雄我が詠唱する。

 そしてそこは無重力となった。

 宇宙のように。

 すべての体に自由が戻る。だがそれでも体は動かない。

 それでも戦う手段はある。

 カインには翼がパンジーには魔法が。

「二翼一対」

「水手」

 無重力の際に鳥は飛べるのか。答えは飛べるが降りることができないだ。

「うわっと」

 実験したことはある。

 カインが空へと飛び立ち。降りるときは炎を噴射する。

 剣を置いたアイリーンに。

 無重力ならば黒の適正を持つのならば経験している。当然雄我もアイリーンも。

 アイリーンが状況を察知し地面を蹴って目の前の雄我を避けようとするが体が動かない

「キ」

 水の触手が捕らえている。その体を

 剣を手にする時間はない。地面に置いたアイリーンにも一度戻し音を出さないようにそこから取り出していない雄我にも。

 そして同時に迫る。二人の拳

「黒鎧・拳」

「熱血ボンバー」

「キキギギギ」


「はぁはぁ」

「はぁ」

「ふぅ・・・相手は」

「いない。いったいどこへ」

「撤退したんだろう。これで数か月は出てこない。ただ最後が拳だったからな」

 三人が倒れこむ。魔力も体力も残ってなどいない。

「今連絡した。バイルさん。救急車呼んでる。近くに待機していて五分後につくだって」

「そうか・・・ならここで寝てても大丈夫だな」

「・・・二日連続外でか・・・土の上にコンクリの上とは。いや今日はまだ日は沈んでないか」

「何でもいい。とにかくもう動けない」

 三人はその後目覚めたのは三時間後だった。

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