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黒白の魔法剣士  作者: 傘羅栄華
ソードブレイク編
102/114

眠り

「・・・」

「まあ、信じないならそれでいいですよ。もう一振りの刀はあなたに会うのかもしれない。それでも雇われた際に違和感を感じたというのなら手を引いた方がいい。命あっての物種。体を壊した傭兵は失格。損切を恐れてはならない。どれも傭兵の鉄則です」

「・・・・・・」

「それでもかかってくるというなら相手になりましょう。一つ言っておきますが高重力での戦闘は頭で認識するより体での負担が重いものですよ」

「・・・・・・いや、やめておこう」

 バイルが剣をしまう。だがその衝撃で剣が崩れ去った。

「今日は限界のようだ。だがただでとはいかない。見れば君たちは意外に身なりがいい。おそらくそれなりに金を持っているな。名前は」

「天音雄我」

「カイン=ルーグ」

「覚えておこう。我が名はバイル=ベント。金次第で何でもやる。頑丈な剣一振りでも仕事をこなす。傭兵ランクはJ。覚えておいてくれたまえ」

 バイルは去った。


 その背中が見えなくなったころ

「ふぅー。何とかなったのか」

「ああ、車が走った方とは逆の方だ。大丈夫だろうよ」

「なら戻るか・・・いやそれより誰が雇ったんだ」

「・・・わからん。バイルは刀剣清廉に興味を持っていて、誰の依頼でもうける。ブルラメール家と敵対する家だと思うが・・・数が多すぎる。景欄も蛇腑もただの剣士が振るう刀じゃない。だから剣士というよりも商人。あるいは貴族だろうな。足のつかない売買ルートを持つ巨大な組織」

「雄我でもわからないのか・・・そうだ。保険金目当てなんてどうだ。ブルラメール家」

「それはない。ただの宝石とかならともかく刀剣清廉は数に限りがある。それも景欄。あの刀以上にブルラメール家が欲しがるものなんて俺には思いつかない」

 重力操作と翼で飛んでいるうちに車が見えてきた。

「見えてきた。なにもなさそうだな」

「ああ」



「剣霊バイルが乗っていた?」

「はい。とはいっても運んでいるのが景欄であることは知らなかったらしいですけど。それでも二振りの刀剣清廉がこの車に乗っていることは知っていた」

「・・・それで今は」

「撤退しました。もともと傷があったようですし、襲ってはこないでしょう」

「・・・問題は二振りあることを知られているところかな」

「ですね。隠しきれているとは思ってませんでしたが」

「俺の身元ぐらいは出回っているとみるべきかな。とはいっても天涯孤独。守るべきはこの刀ぐらいだけど」

 リプタスが笑う。

「どこから漏れたか。心当たりの方は?」

 パンジーが聞く。だがリプタスにも心当たりがない。

「わからない。としか言えない。予想・・・というか可能性だけど。景欄の受け渡しを知った誰かが傭兵ギルドに俺がいるのを知ってあたりをつけたってところじゃないかな。顔はそれなりに知られている。これでもかつて最強と呼ばれた隊に所属していたからね」

「最強・・・それはまさか」

「ああ、死神隊。大戦において全勝無敗」

「・・・」

「うぉおおおお。じゃあニェルン山の怪物退治とか」

「落ち着けカイン。話が進まない。リプタスさんも」

「ああ、すまない・・・顔が知られている話だったか。傭兵ギルドにイルミナル王家親衛隊の人間がいれば怪しいと感じる人が居てもおかしくはない。その情報を買う人がいても。普通のことだ。むしろ情報屋なんて職業はこの世にある。そしてリプタスの名を聞けばこいつが真っ先に出てもおかしくはない」

 そういってリプタスはチラリと自分の得物を見る。親の顔より見た相棒を。

「とはいえ、さっさと傭兵ギルドを出たのがうまくいっている。情報屋にしても自分から売りにはいかない。安くなるからな。そのぶん。情報が出回るのは遅くなる。まずは初撃。その際にも車を止めなかったことを考えればあと三十分は大丈夫でしょうか」

「だろうね。そしてその時にはこいつの対策を講じている」

「・・・今はオレと雄我は休むべきか」

「そういうことだ。『深き世界への誘い』」

 雄我が魔法をかける。適正魔法である夢想睡の一つだ。

 眠りや夢を操作する。直接戦闘には使えない。だが戦いはそれだけではない。

 休むことも戦士の条件。

「・・・何だこれ。急激に眠く」

「少し魔力を消耗しすぎた。その回復。短期間で最大の回復効果を得る。二十分後に強制的に目覚める」

「そうかじゃあお休み」

「俺も」

 二人は眠りに落ちた。


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