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黒白の魔法剣士  作者: 傘羅栄華
ソードブレイク編
101/114

「動きを止める。それができなくても」

 できることなら魔力を吐き出したくはない。体力と違い今日中には回復しないからだ。

 とはいえ許容量というものがある。効率の良い睡眠休息が取れる雄我だからこその戦略。

 今日起こるであろうどんな戦いにも悪影響を及ぼさないために。

 身体能力なら勝てない。勝てるとすれば数と剣の性能。そして魔法。

 なにせ天音雄我は魔法剣士なのだから。

「降りてくるか。・・・まあ当然」

「ただ降りてくるだけじゃない。ふぅーーーーーー」

超高重力反動乗場(パワーグラビティゾーン)

「・・・・・・ぬぅ」

 雄我が大地に降り立つ時、その場は高い重力に支配された。

反重力身(アンチグラビティボディ)

 魔法が空間だけではなく今度は雄我の体にもかけられる。高い重力の影響を受けずに戦える。

 そして空には通常通りの重力。

 有利な場となった。

「ふん。小賢しい。この程度で我が動きを止めようというのか」

 バイルが雄我へと距離を詰める。そして剣同士が衝突する。

「な。あの状況でそこまで動けるのか」

 魔法など使わない。ただの身体能力だけで。あるいはそれがバイルの才能だったのか。

 ガ、バ、ギィン

「ふん」

「ぐ」

 奇跡と大剣が何度も打ち合う。

 高重力によるバイルの動きの阻害。

 普段片手で扱っている刀を両手で使う。

 そこまで行ってなお、届かない。

「・・・ふん、この程度か。・・・・・・いやそんなわけがない。またしても空か、それとも魔法剣か」

「・・・残念だが違うな」

 白の魔法は見せたくない。ならばどうするか。

 雄我はまだ派手な動きは見せない。ただ剣で撃ち合うのみ

「・・・何を考えているのか知らんが・・・ここで倒しておくか」

 黒いもやのかかった世界で、バイルは笑う。決着をつけるために。

「残念ながら、あまり人をなめないほうがいい」

 その時、雄我の攻撃が激しくなる。

「死の間際の必死か。だが届かない」

 奇跡では能力を持たない大剣とは相性が悪い。だがだからと言って負けていい理由にはならない。

 それでも勝つのが英雄だ。

「出番だ」

 二つ目の剣が出現する。

 だがバイルは動じない。

「先ほどと同じ二刀流か。だがそれでは速さに勝ってもパワーでは届かない。二振りで止めているうちはいいが、どちらかが間に合わなかった時悲惨な結末となる」

「・・・どうかな。強さなんてわからないものだ」

「・・・同感だ。だから血でもってつけるんだよ。さらばだ少年。その年にしちゃ強かったが凄腕の傭兵を名乗るには分不相応だったな」

 まずいとカインが思った時だった。

黒重力罠(グラビティトラップ)

 バイルの動きが止まる。雄我がバイルを誘導した場所。そこは特別だ。黒いもやにより視界がはっきりとはしない。そして油断。

「・・・まさかこの程度で・・・黒の魔法での動きの停止。先ほどやってもどうにもならなかったというのに」

「人には人の事情がある。こっちがあまり消耗したくないように。あんたも傷を負っている。左腕。さっきから動いていない」

「え?」

 カインの位置では見えない。だからこそ隙が見えず攻撃できなかった。それ自体が雄我の狙い。

「右腕と右足を封じた。動かしていない左腕と踏ん張る際に使っていない左足。何があったかは知らないが。こっちも時間がないんだ」

「・・・気づかれてはいたか、これでも結構隠していたつもりだが、まあいいこの程度・・・ふんぬ」

「・・・やめときな。こっちは二対一だ。カイン。赤の魔法を流し込め」

「・・・いったい何を」

「遠距離ならば何でもいい。それだけでここまで届く」

「・・・ああ。火炎放雑」

 赤の魔力の調整。それはカインにとって苦手なことだ。だがここは重力の流れが雄我によって作られている。そしてその迷路の出口はすべてバイルのもとへと。

「ぐぬぬ・・・はぁ・・・この程度で何とかなるとでも」

「やっぱりこうなったか。どうする気だ」

 炎は消え去った。だがそれはカインにも予想ができたことだ。

「思ってないさ。ただあんたはここで脱落する。欲しかったのは時間」

「何?」

「刀剣清廉。確かに数少ない刀を剣士たちが奪い合う椅子取りゲームだが、それでも本当に実力も精神にも高い評価がされているのならば自然と手にするはずだ。それがないということはそういうことだ」

「何が言いたい」

「いくら何でも、ここから走って車に追いつけないだろ。誰かが迎えに来る必要がある。だがそんな奴来るかな」

「くるさ。刀剣清廉に認められる。その可能性がある奴がそう簡単に見つかるはずもない。実際の所有者に比べれば価値は落ちるだろうが、それでも我が剣の腕は傭兵の中でも・・・」

「・・・ようやく言ったな。その口ぶりじゃあ、雇い主は『刀剣清廉』はやると言ったのか」

「ああ、我が剣の腕を認め、見事奪取したなら・・・」

「残念ながら俺たちが運んでいるのは『景欄』だ。知らないわけじゃないだろう」

「何だと?『景欄』」

「まともな知識あるいは感覚ならあれを振るわせはしない。あんただってあれをもって傭兵を続ける気はないだろう」

「・・・・・・だが、売ればいい。あの刀ならば誰でも」

「それこそだ。誰かに渡したのならば依頼主の足がつく。それはない。数十年は倉庫で眠らせておかないと。首謀者が確定してしまう」


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