大剣
ガラガラガラ
天からの業火は車を大破させた。容赦なき一撃。刀に魅せられた男たち、その中に他者が入ることを拒むように。
銃使い達は倒れていった。
「がああああああああ」
「ぐおおおおおおおお」
車というより車だったものが散らばり燃える。
「・・・どうだ。これがオレの力だーーーー」
「・・・さすがの火力。赤は黒よりも威力ならば上と言われているが・・・頼もしいな。でもやりすぎ・・・いや」
車が動く。運転する人などいない。そもそも大破している。だというのに。
「・・・・・・何かいる。嘘だろ。完全に不意を突いた上にかなりの威力のはずなのに・・・」
「・・・やはりこの程度の連中か」
男の声がした。深く渋い。年老いた声。
シャン
「?な」
大破した車の一部がさらに斬られた。
真っ二つ。
「やっぱり剣士か。まあ刀剣清廉に認めさせようというんだ。この程度じゃあ終わらない」
「これだけの火力。本命か。やはり乗って正解だった。ついに収まるべきところに収まる。人はそれを至上とよぶ」
車から大男が出てきた。その手には大剣が握られている。
その大剣は景欄とも蛇腑とも異なっている。切り裂くではなく叩ききる。西洋剣のよう。
「でかいな。ただ刀剣清廉とはまるで違う剣。ただの雇われかもしれないけど」
「ってことはこいつを倒す必要が・・・」
「あるだろうな」
「何をごちゃごちゃと。相談か。この場で剣を渡すなら見逃してやってもいい」
「あいにく持ってない。もうすでに遠く離れていったよ。だから手を引け。この状況で出し抜かれるのもつまらないだろう」
「ふぅん、そうか。ならさっさと君たちを倒して進むとするよ」
大男が大剣を構える。
ただそれだけのことで。
「こいつかなりの」
「俺たちもあまり車から離れるわけにもいかない。追手は潰しておかないとな」
「なら決まりだな。こいつをここで倒す」
「名乗っておこう。我が名はバイル=レント。人呼んで剣霊のバイル。ああ、君たちの名乗り入らない。だって墓標なんて作られたくないだろう・・・いざ」
戦いが始まる。
バイルの狙いは。
「オレか・・・って。え」
バイルはカインの翼を切り裂いた。すなわち一息でカインのいる地点コンクリートから上空十メートルの地点までジャンプした。
普段ならもっと高く飛んでいた。油断したわけではない。ただその場の流れ。あるいは羽ばたくより先に斬られた。
「届くのか・・・まあおかしくもないか」
「ががががぐっ。確かにいつもより低いが。それより早い」
「剣霊。数多の剣を潰してきたからか。確か本人の強さに剣が追い付かないがゆえ一つの仕事につき一振りの剣を犠牲にする。そのため実力に反して雇う値段は安い。聞いたことはあったがここまでとは」
「そんな馬鹿な。大剣を振っただけで壊す?どれほどパワーがあるんだよ」
「そういうことだ。あれを奪ってしまえば貧乏暮らしとはおさらば。それに二振りもあればどうにでもなる」
「どうする・・・」
「・・・二振りあることを知っている。だが依頼主の名前も言わない。その剣銘も口を滑らさないか。さっきの連中も傭兵というより・・・」
「おしゃべりしている暇があるのか」
雄我が考えている間にも妨害するようにバイルは距離を詰めてきた。
「ぐ」
奇跡と不可能で迎え撃つ。
だが
「・・・この程度・・・遊戯にもならん。はぁ」
「が」
力負け。その結果は単純だ。奇跡と不可能。両方の剣が手から離れる。
そして素手になった雄我に手を抜くようなバイルじゃない。
回避動作に移る前に一閃。
避けられない。バイルがそう確信しているときには
ドガ
何かが背中を蹴った。
何かとはいってもできる人は限られている。この場にいるのは三人だけだ。
「な」
蹴った人物はすかさず
「重力制御」
距離を取る。高く空へと。
「はぁー危な・・・しかしあの程度の威力じゃ傷にもなってないな」
「雄我・・・無事なのか。躱せないように見えたが」
「・・・白魔法。光を屈折させて誤認させたんだ。相手は気づいてないようだが・・・そりより。お前翼は」
「飛びながら回復させている。だがこの場合だと時間がかかる上に飛びながらじゃ余計な魔力も・・・まさか逃げるのか」
「そんなわけないだろう。ゴリゴリのパワータイプだがあの剣を扱う速度からしても刀剣清廉には認められる可能性が高い。ならば倒しておくべきだ。だがこちらも手短に倒したい以上、敵の最大の弱点。剣の消耗が狙えない」
「じゃあ。空飛んで遠距離魔法か。相手は近接専門みたいだし」
「それもあるが・・・それもいつになるかわからない。躱される」
「じゃあどうどうするんだ」
「いくらでも方法はあるさ。まあ見てろ。相手の速度を落とす」
雄我が空から降りる。相手の力に対抗するためには地に足をつけて踏ん張る必要がある。