第25話
ギルドの別室で俺とサーシャはリザードマンの調査という特殊クエストを依頼された。
「リザードマンの調査・・・ですか。今の話から考えると、ちょっと厄介な依頼に思えるんですけど。」
「私もクロノさんもまだ冒険者になったばかりですし、そういう依頼は難しくないですか?それに、練習台って軽すぎですよー。」
依頼を受けるのは難しいと俺もサーシャも考えていた。
それに、もう少し固いクエストを受けて経験を積んでいきたいという気持ちもある。
「まあそうだな。厄介なのは間違いない。なんせ、ギルドでも初めての事案だしな。だが、俺も考えた上でお前たちに話をしているんだ。」
「というと?」
「まず・・・サーシャは分かると思うが、リザードマン自体はEランク。他の依頼からすれば比較的容易な部類の敵と言われているし、実際そこまで強くない。」
隣に座るサーシャがゆっくりと頷く。
「そうですね。同じEランクでも飛行能力を持つハーピィ等の方が難しいと思います。人間と同じような攻
撃をしてくるリザードマンの方が動きを読みやすいですから。」
なるほど。
たしかに人間と同じような背格好だし、動きも近しかった気がする。
「そうだ。それを冒険者の立場から考えると、そんな弱いリザードマンと戦ったとして、多少強い個体が居たところで気になるか?仮に勝てなくてもたかがリザードマン。そのうち高ランクの誰かが倒してくれると思って特に気にしないんじゃないか?」
「そうですね・・・。私が冒険者の立場で考えるなら、恐らく人任せになると思います。」
「まず違いないだろうな。その上、報酬は安いし魔石が売れないかもしれないという曰くつきだ。今や誰もクエストを受けようとしない。」
冒険者にも生活がある。
安定した収入を見込めるクエストを受けたいと思うのは当然だろうな。
「それに・・・他の魔族にも同じ現象が起きたらどうする?Aランクのドラゴンが更に強くなりましたでは話が違ってくる。加えて魔石の在庫が無くなれば結界が張れなくなって、街にまで被害が及ぶ。そうなればアルカナを揺るがす大事件に発展する。」
「ギルドとしては、くだんの魔石の原因を究明しなきゃならん。強いリザードマンの被害に遭った者もいる。原因をはっきりさせて、場合によっては今から軍を動かしてもらうことも考えている。ただ、いきなり軍は動かせないから、まずは知っている冒険者に依頼するしかないんだが・・・。下手にその辺の冒険者に調査を頼んだことで町の住民だったり、特に貴族に先に変な情報が洩れてしまうと混乱を招くかもしれない。」
レントさんが俺達に依頼しようとした理由が分かってきた俺だったが、先にサーシャが応える。
「まとめると、普通のリザードマンは軽く倒せる力を持っていて、信頼のおける人物が好ましいってことですね。それに合致するのが、色々と飛び抜けた実績のあるクロノさんと元ギルド職員が組んだ私たちのパーティ。ということですね。」
「飛び抜けたってのは・・・まあ言われても仕方ないのか?」
俺は自分のやってきたことを客観的に考えている間にも
レントさんが再びニヤリと笑う。
「ははは!正にその通りだ。もちろん、特殊クエストってことでそれなりに報酬を出させてもらうからそこは安心してくれ。・・・受けてくれるな?クロノ。」
「ここまで話されて受けない選択肢は無いでしょ・・・。了解したよ。」
「クロノさんが良いなら仕方ありませんね。まあ、私も原因が分からないのは不安ですし。」
満足した顔になったレントさんは早速特殊クエストの書面を持ってくると言い、意気揚揚と別室を出ていった。
部屋に2人きりになったところで、すりすりと近寄ってきたサーシャに話し掛けられる。
「クロノさん。何でこのクエストを受けようと思ったんですか?最初は乗り気じゃなかったはずですけど?」
急にいとも簡単に上目遣いを使用してくるのはズルくないですかああああ
でも可愛いは正義だ。
「ええっと。本当は他の種類のクエストを受けてどんどん経験を積みたかったんだけどね。断ったとしてもあのレントさんなら、他の優秀な冒険者にも当たって保険を掛けているだろうし・・・。」
ああ言われたけど、実のところ俺達の他にも適任はいるだろうと思う。
けど、
「冒険者でもない街の方には魔族の被害に遭って欲しくないって思ってさ。」
俺は魔族の被害という言葉の重さを知っている。
自分で何かできることがあるなら、やりたいんだ。
しんみりした空気を察したのか、サーシャは上目遣いを辞めて真面目な表情になる。
「クロノさん・・・。一緒にがんばりましょう。」
「うん。こちらこそよろしく。」
サーシャの笑顔でしんみりした気持ちを払しょくしたところで、レントさんが戻ってきた。
「待たせたな!準備が完了したから下にクエストを受理に行ってくれ。それから」
「調査に使えそうなアイテムをマチルダに依頼している。ギルドからの支給ってことで話を済ませてあるから、これから奴のところに行ってもらえるか?」
てことは最初から準備してやがったな。このおっさんは。
本当、食えない人だ。
話を終えた俺達は、密談の事が周囲に漏れないよう、先に俺とサーシャが出ていき、時間を置いてレントさんが別室を後にするのだった。




