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第24話

 ギルドの別室はギルドカウンター横の階段を登った2階にある。

 レントさんによると2階には別室の他に、一般には閲覧が制限されている書物やギルドカードの記載事項などの個人情報について書類として残している書庫であったり、ギルド職員の休憩室が配置されている。3階にはギルドマスターが詰めている一室があるそうだ。


 ちなみに別室を使用するのは主に以下の時だ。


 ①やらかした時

 ②多大な功績を上げた時

 ③他に漏らせない密談が必要な時


 そのため、別室行きとなるとそれだけで目立つことになるし、2階に上がる姿がギルド併設の酒場から丸見えなので、酒のつまみとして話題に出ることになる。

 酔った冒険者からすれば①か②の妄想をして話を盛ることが鉄板らしい。


 つまり、俺とサーシャの痴情話を1階でしたのは、別室に行くことで他の冒険者に余計な詮索をさせないための「敢えて」の行動であったと説明された。



「と言われても納得できないんですが・・・」

「まあそう怒るなよ。密談は行うこと自体を出来る限り秘密にしなきゃならん。それに、サーシャとの仲も解決できただろう? そう!これは一石二鳥ってやつだな!ははは!」



 こ、このおっさんは・・・



「とりあえず一発お殴りさせて頂いてよろしいでしょうか?」

「まあまあクロノさん。私もその事には気付いていましたし、もういいじゃないですか。・・・話自体もとても興味深かったですし。」

「いやそれが理由でしょ!・・・あ、すいません。」



 天使の無言の圧に顔を逸らしてしまう。

 はあー。ここはもうスルーしたほうが良さそうだ。


 現在、別室に置いてあるテーブルを挟んで俺とサーシャが横に並んで座り、対面にレントさんが座っている。

 座っている真新しいソファーの心地がとても良い。日本なら〇トリで売ってそうな一般的なレベルだと思われるが、こっちの世界では庶民が持つことが出来ないレベルだそうだ。

 おかげでお尻が間違いなく固くなっている。



「それで?話を進めてくれないか?」

「ああ。・・・お前たちが来るまでの間、ギルドではある報告が相次いだ。」

「これですよね?」



 サーシャがバッグから光を失った魔石を取り出す。

 光が無いとその辺に転がっている石にしか見えない。

 レントさんはそれを一瞥すると、軽く頷いた。



「そうだ。リザードマンから抜き取ったばかりの魔石から光が失われ、ただの石ころになってしまった。そういう報告だ。」



 クロノは魔石を抜き取った際に淡く紫色に光り輝いていたことを思い出す。

 そこでふと、疑問が湧く。



「あのー。そもそも魔石は光が失われることは無いんでしょうか?時間が経過したら魔力が拡散していく的な。」



「ああ。その認識で正解だ。魔石は魔族から取り出した時点から魔力の拡散が始まり、最終的にただの石ころになる。魔石は魔族の魔力を溜めておく器官のようなものであり、人間で言うと心臓に当たる部分だ。」

「魔力が無いと魔族は生きられません。だから魔族を戦う時は魔石を狙うのも作戦の一つです。どんな強い魔物でもそこだけは弱点となります。ただ、魔石を壊した分、売却が出来ないので報酬が減るというデメリットもありますが・・・」


 サーシャが補足して説明してくれた。

 なるほど。

 魔石は魔族の体内で魔力を保管する箱のようなもので、その魔石を失うと死ぬってことだな。



「ということは遅かれ早かれ魔石は石になるってことですね。」

「ああ。だがギルドは買い取った魔石を倉庫に大量に保管している。殆どはそれを町の防衛のための結界の維持に使用していてな。古い物から順に使用しているとは言え、それなりの期間を保管している。つまり、長時間は魔石の保存ができるはずなんだが・・・。」

「つまり今回の問題は魔石の魔力拡散のスピードが速すぎるのが不自然ってことですね。」



 レントさんが唸るように頷き、サーシャは満足そうに頷いていた。



「それじゃ、魔石を理解したようだから話を戻すぞ。そもそもリザードマンは最近になって何故か急に数が増え出したようでな。ギルドもクエスト数を大幅に増やした。」



 レントは書類の束をテーブルに乱雑に置いた。



「で、俺はその報告書の中にある共通点を見つけた。」



 置いた報告書の束の中から付箋の付いた紙を取り出す。



「これだ。」



≪いつもより苦戦した≫

≪戦術的な思考を持っていた≫

≪Eランクパーティが敗北した≫


「魔石の魔力が拡散するリザードマンの中に、とんでもなく強い個体が複数確認されている。まだ傾向は確認されていないが、D...幅を持つとCランクの強さらしい。」



 サーシャは戦った時の事を思い出しながら答える。



「・・・確かに、ギルドで働いていた時のランクイメージよりは強かった気がしますね。クロノさんは初戦闘でしたし、分かりませんよね。」

「うん。分からない。倒すのに必死だったし・・・。でも、苦戦した記憶は無いんだけどなあ。Cランク相当の強い個体だったら、さすがに逃げてるよね。ということは、Dランク弱ぐらいの個体ってこと?」

「そうかもしれませんね。でもクロノさんならきっと勝てますよ!」

「そんな簡単に言われてもなあ〜」




 そんな会話を聞いたレントがニヤリと笑った。



「フッ。俺もサーシャと同意見だ。お前たちは経験が浅いからEランクだが、実力はもっと上だ。賭けてもいい。・・・そこで本題だ。」

「本題?」


「クロノ、お前強くなりたいんだろ?だったら丁度いい練習台の魔物が出没してるってことだ。ま、さすがに死なないように気をつけるのは前提として…お前たち2人でリザードマンを調査して貰えないか?」



 初クエストの次の依頼は、ギルドからの特殊クエストだった。

 

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