第23話
「やっと帰ってきたか。クロノ。サーシャ。リザードマン狩りに行った奴らはお前たち以外全員報告に来たから心配していたぞ。」
ギルドに向かった俺達は仕事が出来るくらいには回復したレントに迎えられた。
そして俺に肩を組むと小声で耳打ちしてくる。
「つーか、サーシャはどうしたんだ?機嫌が良くないようだが。」
「・・・意外と目ざといですね。レントさん。」
実はあの後、ミランに部屋を確認したところベッドが2つある部屋は既に埋まっていることが分かった。
そこで
「やはり今のダブルベッドで一緒に泊まろう」
と言える甲斐性は俺には無かったらしく
「残念だけど、とりあえず空くまでは別々の部屋でもいいかな?」
と口走っていた。
その時のサーシャの顔の膨れようは・・・うん。間違いなく怒ってたな。
いや、今もあの時の半分くらい膨れている気がする。
「いやまあ、かくかくしかじかでして。」
「それは・・・お前、俺以外のギルド職員に言うなよ?女性にも、男性にもだ。」
こんなこと言えるかあああ
おっさん新人がそんな甲斐性無しとか思われたくねえええ
「言えるはずないでしょう!!??」
組んだ肩を勢いよく外しながら抗議した。
「ははは! まあ俺は口が堅い。信じろよ」
まあレントさんなら大丈夫だろう。
俺の経験上は大丈夫な気がする。
「はあ。それはともかく魔石についてですが」
「・・・まあそうくるよな。お前たちが来るまでに集まった情報はとりあえず整理できてる。別室で話そうか。」
俺はサーシャの方を向きながら話す。
相変わらず膨れている・・・気がする。
「助かります。サーシャもかなり気にしてるみたいですし。」
「よし。おーいサーシャ、そんなに怒るなよ。」
サーシャは表情を変えずに膨れている。
「・・・クロノには一発で決めようとするな。こいつにはじっくり時間を掛けて甘い罠を仕掛けて誘い込むのが有効だ。間違いない。」
って割と大きな声でなにを言ってんだこのおっさんは。
その声量の効果範囲内にギルドの職員だけじゃなくて他の冒険者の皆さんもいらっしゃるんですけど!
「レントさん・・・。仕方ないですね。今回ばかりは参考にします。」
急に明るくなったサーシャが言った。
え、参考にするの??それって正直おいしいんじゃねえか?
で、でもこの視線は怖いんですが!
「あいつ・・・遂にギルドの華を・・・」
「あの胸を好き放題か。裏山死刑だな。」
ほら、他の人も見てるし聞いてますし死刑確定ですよおおお
・・・ほぼ未遂なのに
「おい、おっさん!サーシャに何を吹き込んでんだ!」
「いやあ、ついな。つい。」
「クロノさんは黙っていてください。」
前言撤回。俺の経験は信用ならない。
レントさんはダメなおっさんだ。
そしてサーシャさんが怖い・・・。天使が堕天しかけてませんか?
「と、とにかく! 別室に移動してくれよ・・・」
2人の話が終わるまでの間、ギルドに別の意味で不穏な空気が流れたのだった。




