第22話
「探知??」
サーシャは怪訝な顔つきでクロノを見つめる。
「聞いたことは無さそう・・・か。ギルド職員でも知らないことがあるんだな。」
検問を無事抜けた俺とサーシャは≪銀の輝き亭≫の俺の部屋で話し合っていた。
パーティとして初めて受けたクエストで疲れた上、ギルドが先の魔石の件で人だかりができていたため、とりあえず戻ってきたのだ。
「何だか悔しいですが、その通りです。魔力円という魔法なら知っているのですが。」
「まあ、それのスキルバージョンって認識でいいよ。」
とりあえず、魔力の無い俺でも魔力円と同じようなことが出来るということと説明。
サーシャは勉強してきた知識をフル活用しているようだが、答えは出なかったのか、息を吐くと納得したような顔つきになった。
・・・まあクロノさんだし。と小声で言われはしたが。
「と、という訳であのリザードマンの魔石の魔力反応が消えていくのは分かっていたよ。まあ、それが普通じゃないとは知らなかったけどさ。」
「冒険者になって日が浅いですからね。これから色々教えていきますから安心してください。」
サーシャの素敵な笑顔をしっかりと確認したところで、気になっていたことを言う。
「なあ・・・気になっていたんだけど、そこの大きな荷物はサーシャのか?」
ベッドに座っているサーシャの横に指を差す。
そこには大きな荷物があった。たぶん3つくらい。
クエストに出発する前は無かったはず。
「そうですよ?家から送ってもらったんです。」
「ああー、そうなんだ。・・・ってそれって」
「え?ここにクロノさんと一緒に泊まるためですよ?」
「なっ!!」
この部屋唯一の椅子に座っていた俺は、転げ落ちそうになるのを必死にこらえた。
「ちょ、ちょっと待ってくれ!この部屋にふふふ2人で!?」
俺はサーシャが座っているベッドをチラ見しながら動揺する。
「はい!まあ部屋は狭いですけど・・・2人で泊まってダメって訳じゃないみたいですし、それにベッドはダブルですから問題ありません。」
まあベッドがダブルなのは色々と重要・・・じゃなくて!
ってか問題ありませんって何が!!?
何が問題ないの!!!?何じゃなくてナニか!!!
などと無駄に高いテンションで思ったのも束の間、気づいたらすぐ目の前にサーシャが立っていた。
か、顔が近い!!!
「・・・パーティを組んだらこんなの普通ですよ、クロノさん。」
そう言うと、サーシャはそのまま更に顔を近づけてくる。
いや、明らかに顔が真っ赤じゃないかあああああああ
嘘が見え見えすぎるんですけど!!!!
し、しかも前かがみになっているせいで谷間がめちゃ強調されているんですがががが
「クロノさん。私・・・」
部屋の音を2人の鼓動で支配した その時
バンっ!!
部屋の扉が勢いよく開いた。
「クロノさん!!今日夜ご飯どう・・・あ、ごごめんなさい!!」
バンっ!!
部屋の扉が勢いよく閉まった。
看板娘のミランだった。
その一瞬の出来事に、俺とサーシャは一ミリも動けなかった。
そして俺は照れ隠しをしながら立ち上がって言う
「ご、ごほん!・・・サーシャ、正直なところ一緒に住むのは構わない・・・ってか、楽しそうだけど」
「ベッドはミランに言って2つにしてもらおうか。」
ヒヨった25歳がそこにいた。 ってか俺だった。
それを聞いたサーシャはちょっと残念そうな表情を浮かべたが、すぐに笑顔になって言った
「そ、そうですね。ちょっと残念ですけど、でもそういうことにも紳士的なんですね。ますます一緒に住みたくなりました。」
ひとまず一緒のベッドは回避したと安堵した俺だったが
次の瞬間
俺の唇にとても柔らかいものが触れた。
「・・・今日はこれで我慢します。い、一応言っておきますと、私のファーストキスですから!!」
俺は突然の出来事に何も出来ないでいると、恥ずかしくなったのかサーシャは早口で続ける
「と、とりあえず私ミランさんにベッドが2つある部屋が無いか聞いてきますね!!」
バンっ!!
本日3度目の 扉開閉(強) だった。
「・・・やっぱりベッドは1つでよかったかもしれないな。」
柔らかなあの感触を思い出しながら後悔する俺だけが、部屋に残ったのだった。




