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第20話

『グガアアアアア!!』

「フッ!」

『グギッ』


 飛び出してきたリザードマンの鋭利な爪による刺突攻撃を横に跳んで避ける。

 そして避けると同時に真っ青な鱗の生えた足の側面を斬り付ける。

 斬られた足に気を取られたリザードマンは、動きが一瞬止まる。



「はあああ!!」

『ウ・・ガッ!?』



 そしてその一瞬の隙を付いて俺の黒刃がリザードマンの喉を突き刺した。

 剣を素早く引き抜き、同時に付いた血を勢いよく振り払って周囲に散らす。

 ズブりとした感覚はやはり慣れない。

 目の前に倒れ伏す敵の血が混ざって、更にどす黒くなった黒剣を眺めながら思う。



「クロノさん!右から来ます!左は私が!やああ!」

『グギャッ!』



 サーシャの白弓から放たれた銀に煌めく矢が、俺の左側の林から飛び出してきたリザードマンの脳天を貫いた。そして、その身体は飛び出した勢いは止めることが出来ずに俺の真横まで転がる。流血が俺の靴の周りをじわりと包んでいく。



「やった!狙い通りね!」



 サーシャの歓喜の声を背後に感じつつ、俺は右の林から向かってくる反応の主を待ち構える。



『グウガアア!!』



 林の奥から怒号が聞こえたと同時に、探知(エリアサークル)で把握している魔力の動きから、敵が何かを投げるような動きをしているのが見えた。



「クッ!」



 俺は飛んできた物体を何とか避けながら、それを視認する。


(槍か!)


 鋭利な石を括り付けられた荒い木作りの槍が俺の顔を掠めていった。頬についた傷から血がゆっくりと滴り落ちる。

 

『グガア!』



 そして避けた俺に向かって2匹のリザードマンが突っ込んで来た。 

(同時に2匹か。でもさっきと同じで行けるはずだ。まずは避ける!)


 片方は剣のような短い刃物を所持しており、槍を投げたもう片方は丸腰のようだった。

 丸腰でも鋭い爪はもちろん健在だ。油断してはいけない。



『グゴォ!!』

「フッ!」



 刃物を持ったリザードマンの斬り払うような攻撃をしゃがんで避ける。

 避けた先の俺に向かってギラギラと鈍く光る爪が真っ直ぐに飛んでくる。どうやら回避する位置を読まれたようだ。サーシャは敵との間に居る俺に当たってしまうことを恐れて矢も攻撃魔法も放つことが出来ないでいた。こうなることなら位置取りの練習をしておけばよかったと後悔する。


(やばい!このままでは避けられない!?)

 


「クロノさん!今がスキルの使いどころです!!」

 


 焦ってスキルを失念していた俺に、背後から声による援護射撃が届いた。


(そうかスキルか!加速Ⅱ(アクセル)!)


 掛かる負荷を最小限に調節しながら加速スキルを発動する。

 時を止めたように見える程ゆっくりとした時間の中、俺は2匹のリザードマンの胴体に向かって剣を振りきった。

 

『グブゥオ!?』

『ガアアア!?』



 自分の鋭爪による攻撃が届いたと思い込んでいたリザードマンに驚愕と困惑が浮かんでいく。

 ほぼ同時に斬られた2匹のリザードマンは、何が起きたのか把握できずにその命を散らすのだった。



「クロノさん。お疲れ様です。治癒魔法をどうぞ。」

「ああ、ありがとう。サーシャもお疲れ様。最初の弓の援護は助かったよ。ちょっと考え事をしてしまって。」



 緑色の淡く優しい光が俺の身体を包み込む。負荷を掛けたことが無かったかのように回復していく。



「ダメですよ。戦闘中に考え事なんて。・・・でもこれで無事クエスト達成ですね。」

「ああ。リザードマン3匹以上の討伐だったよな。でも正直まだ戦えるよ?」

「目的を達成したんですから、無理は禁物です。そもそもパーティを組んでまだ日が浅いんですからね?今日のところは帰りましょう。」

「分かった。サーシャに従うよ。」



 あの後サーシャとのパーティ申請は無事受理された。

 そして治療を終えた俺はサーシャと一緒にマチルダの装備屋へと行き、武器と防具を新調していた。行ったときには既に武器も防具も準備されており、そこではマチルダの自信満々な笑みがどっしりと俺を待ち構えていた。


 黒い刀身を持つ剣≪ダークリパルサー≫と、艶消しの黒で出来た防具一式だった。また黒曜石を使ってくれたらしい。

マチルダに聞いたところ、俺の武器はこれからも『黒色』でしか作る気が無いそうだった。


 そしてサーシャの武器と防具も作っていた。実は俺が寝ている間にサーシャがお願いしていたらしい。

俺は本当に外堀が埋められていたのだという事実にちょっと驚いたのだが、ここで言うのは藪蛇と思って何も言わなかった。


ちなみに武器は白色で出来た弓≪ホワイラルアロー≫だった。白い弓身にはアルカナ周辺の森で冬に活動する『スノーベアー』の毛皮が所々にあしらわれており、見た目の可憐さとは裏腹に強靭なのだとか。そしてもちろん防具も白い色をしていた。

マチルダには白と黒で相性ピッタリだななどとと揶揄されてしまっていたが、実は俺も満更でもないと思っているのは秘密だ。


ちなみに、サーシャには装備をタダでくれていたが、俺には高額な代金を掲示された。おかげで借金をする羽目になってしまった。

まあ金利は取らないそうだから、頑張って返済するしかない。


 そしてパーティの連携の練習及びサーシャのブランク解消のため、装備を新調した後はギルドに戻りランクE相当のクエストであるリザードマン討伐を受注した。

このクエストはアルカナ王国の周辺に生息するリザードマンの数が増えてきているとの情報から、最近依頼され始めたものだ。

 リザードマンはゴブリンやオークよりは強く動きも早いため、駆け出し冒険者には荷が重いと言える相手だ。

ちなみにサーシャのランクでは単独では受けられないが、Eランクの俺のパーティメンバーとしてなら受けることができたのだった。



「ええっと。倒した魔物から素材と魔石を剥ぎ取るんだっけ?」

「そうですよ。それらをギルドに持って行って、換金してもらうんです。今回のクエストはリザードマンの討伐でしたから、素材と魔石は冒険者の自由にしてよいということになりますね。なので、クエスト報酬と換金した金額が収入になります。」



 確か、討伐と採取クエストがあるんだっけ。でも、リザードマンの採取クエストもあったような気がする。採取は素材を持ってくることが条件だけど、全部の素材じゃない。討伐なら報酬と合わせて全部貰えるから、お得じゃないかと思う。



「そうなんだ。だったら受けるクエストは全部討伐にした方がよくない?儲かるよね?」

「確かにそうですが、何かあった時の難易度が変わってくるんです。」

「難易度?」

「はい。採取ですと倒した魔物の素材をギルドまで確実に持ち帰る必要があります。道中で()()()()()()です。」

 


 なるほど。倒したはいいけど、帰る途中に他の魔物に襲われたり、悪いことを考える冒険者や盗賊なんかが居る可能性もある。重たい荷物を運ぶ必要がある採取に比べると、討伐なら最悪『討伐部位証明』となる一部の素材を持ち帰ればいいのだ。無事に帰還するためのリスクをどう取るかが重要ということか。



「ですので、一応採取の方が報酬は高く設定されています。さすがに全素材を持ち帰って売る方がお得なのは間違いないですが・・・。」

「その分危険も大きいって訳だね。よく分かったよ。」


 納得した俺はサーシャに手伝って貰いながら解体を進めていく。ぶっちゃけるとこういう細かい作業は苦手なので、殆どお任せだった。

 元ギルド職員の知識は流石なもので、サーシャはテキパキと慣れた手つきで行なっている。血(まみ)れになっても顔色一つ変えずに剥ぎ取っている彼女を尊敬しつつ、俺は周囲の警戒に力を入れる。特に魔物の反応は無い。いや、あるにはあるが、かなり遠い。こちらの存在に気付くことはないだろう。



「よいしょっと。」



 サーシャは安心しきっているのか、横たわるリザードマンの解体に集中しているようだ。

 解体用の小型ナイフに力を入れる度にサーシャの頭が揺れ、被っている帽子が落ちそうで落ちない。

 ・・・そういえば、何でいつも帽子を被っているのだろうか。俺だったら正直邪魔だと思うけどなあ。




「クロノさん。そんなに見つめられると困ってしまいます・・・。」

「ご、ごめん。ちょっと気になってさ。」

「どうかしましたか?あ、もしかして手順間違ってますかね?」

「いやいや、そうじゃないよ。そんなに帽子が好きなのかなあって思ってさ。」

「あ、ああ。帽子ですか。付けてないと何だか落ち着かないんですよね~。」

「もはやトレードマークだよね。しかも似合ってる。」



 そこから気分を良くしたサーシャの帽子自慢が始まった。一か月分はストックがあるとかベッドの周りに帽子を置いて順番に使っているとか、聞いてもいないのに変な趣味を披露してくれた。

 俺は気を悪されないようにうんうんと頷く。こういう時は否定しない方がいい。俺もオタクだったから分かるし、それが一番だと思う。

(でも・・・)

 気のせいかもしれないが、帽子の話になった時に何となくいつもの反応じゃなかったような。

 まあちょっと気になるけど、あまり女性に質問すると嫌われてしまうかもしれないし、パーティ結成1日で解散に・・・とは流石にそこまでは無いだろうけど。



「・・・クロノさん、本当は帽子に興味ないですね?」

「へ?い、いやそんなことないよ。」

「あ!それって興味ない人の反応です!!」



 そして再び帽子の良さを説明されてうんざりし始めたころ、俺はリザードマンの解体が終わったのを見計らってアルカナに戻ることを提案する。血の臭いもあるし、ここに留まるのは危険であると言ったら納得してくれた。まあ後でじっくり聞いてもらいますからねと念を押されたのだが。

 リザードマンの比較的軽い素材や魔石をサーシャのバッグに詰め、俺は重量のある骨などの素材をリュックに詰めた。




「よし、帰ろうか。」

「はい!凱旋ですよ~!」

「いやランクEのクエスト程度で凱旋は恥ずかしいでしょ!?」




 こうして俺とサーシャはアルカナ王国への帰路に付いた。


【クロノ】ランク:E 

武器

・黒剣≪ダークリパルサー≫

保有スキル

・経験値

・探知

・不屈

・加速Ⅱ


【サーシャ】ランク:F

武器

・白弓≪ホワイラルアロー≫

保有スキル

???


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