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漢数字一になり逃げながら繰り広げられる口論。リーダーが「今はそれどころじゃないだろ!!」と皆(主にボクとツジ)に一喝。
口論が止み、ツジと二人顔を見合わせてからリーダーの方を向けば深々とリーダーが溜息を吐く。
それからボクとツジを交互に見て、「いいか、お前等」と。
え、いや何ら良くないが?ん??
小首を傾げるボクに構う事なく、リーダーは話を続ける。
何でもこの危機を覆すには皆の団結が必須何だとか。まぁ要約すると、『形だけでも良いから争ってる暇あんならさっさと力合わせろ』って事だ。
「えぇ……こいつと力合わせる何て無理何だけど」
と、此処でツジから非難の声。それには激しく同意する他ない。
「そーだそーだ!!」とツジに便乗。決して此奴を許した訳じゃないが、ここはツジに便乗してた方が良いとボクの中の天使が言っている。
天使の意のままに不良の三下みたくいちゃもん吐けてれば「シャラ─────ップッッ!!!!」って怒声。
あ、今のでドラゴンが一際デカい火ィ噴いた。
ついでにいちゃもんが止まる。
「いーかお前等っ!!お前等はなぁ、これをクリア出来なかったら退っ学何だよ!!そうなんない様にわざわざ協力してんだからつべこべ言ってんじゃねぇっ!!」
「「っ~~~~!!!!」」
リーダーの発言に、ボク等に課された条件を思い出し二人同時に息を呑む。
そうだった。これをクリアしないとボク等は退学だっ……!!
もし万が一、これを、クリア出来なかったら……──。
ボクとツジは退学。校内一の美少女がいなくなった事によって起きる暴動。学園は荒れ狂い、後にそれは外にまで広がって、挙げ句の果にはクーデターを起こし世界各国首脳を人質に取り──一面血の池に──。
最悪の場面が脳裏に浮かぶ。
サーッと血の気が引いて、唇が震え始めた。
そんなのは駄目だ。そんな事はあってはならないんだ。たった一人の為に、そんな暴動が起こる何て許されない事何だ。
ギュッと掌に爪をめり込ませ拳を作る。
地面に落としていた視線を上げ、隣に並ぶ悪友の目を見たら。
「──協力しよう。ツジ」
「はぁ?」
「協力して、この世界もボク等の世界も──……ハッピーエンドで締め括るんだ」
彼の目を見て手を差し出す。彼はボクと差し出された手を数回見比べたら深々と息を吐いて。
「…………仕方ねぇなぁ……」
「……!!」
ん、と差し出された手。驚いてツジの面を見れば彼は気恥ずかしそうにボリボリ後頭部を掻いていて。
『早くしろよ』
そう言いたげに視線を投げられ半ば慌てて彼の手を取る。
「……助かる」
「……貸し一だからな」
そう言って気恥ずかしそうにそっぽ向くツジにツンデレかとツッコミたくなる。
それを堪えて今一度彼の手を握り直し──後ろを向く。
「かかってこいよドラゴンちゃん。メタメタにしてやるからよぉ」
──異世界。
それは、ボク達とは次元が違う不思議な世界。
あるのにない、ないのにある、そんな矛盾した所。
ボクが通っている南儚高校の第二校舎。中には結末まで辿り着けない未完結物語もあり、──その中に入り込み己が己で結末まで導く。
『異世界について学び』、『異世界をどんどん更新し』、『結末まで導く』。そういった能力を育む所──セリーナ学院。
──……そして今回ボク等に課された課題は、『退学を回避したいなら難易度マックスの異世界を完結させろ』だ。